注目が集まる新学部「創生学部」
10学部と六つの研究科を有し、日本海側最大規模の総合大学である新潟大学。約150年の歴史を持つ新潟大学に、37年ぶりに新学部「創生学部」が誕生した。
「自律と創生」という教育理念と、「真の強さを学ぶ。」という新しい大学像を掲げる新潟大学。日本海に面した立地を生かし、ロシア、中国、韓国などといった環東アジア地域の教育研究拠点としても存在感を示す。髙橋姿(すがた)学長はどのような人材育成を目指しているのだろうか。
「今までは各分野の学問を修めることを通して汎用(はんよう)的能力を身につけてきましたが、汎用的能力をつけるために学問を修めるという逆転の発想が、創生学部の新設につながっています。汎用的能力は社会に出てからも伸ばすべき力。社会での状況が変わっても、自分で考えて行動する能力は欠かせません。それを自分のものにすることが“真の強さを学ぶ”ことだと捉えています」
創生学部は学生一人ひとりが自身の目標を定め、自分に合った学びを創り出していくという、全く新しい学修スタイルの学部。文系理系の枠組みを超え、物事を多面的に見る力や、コミュニケーション能力を身につけることを視野に入れている。
「自分で考えて行動できる人材育成を目的とした創生学部の理念には、学部申請中から多くの賛同の声が集まっていました。それが今年度前期入試での5.1倍という高い倍率にも現れました。期待を重く受け止めつつ、学部の充実を図っていきたいと思います」
理系3学部を各1学科に「日本酒学」の創設も

新潟県酒造組合会長(左)、新潟県知事(中央)とともに「日本酒学」の創設を発表する髙橋学長
また、理、工、農の理系3学部を各1学科に改組し、専攻分野ごとの複数のプログラムを設置した。幅広い視野を持って基礎知識と専門分野をバランスよく修得することを目的としている。工学部では、工学分野間の連携を図った「工学系主専攻プログラム」に加え、工学の枠を超えた「文理融合型主専攻プログラム」も新設。理学部と農学部では、それぞれの教員が協働して授業や実習を行う分野横断型の「フィールド科学人材育成プログラム」を新設するなど、社会が求める多様なニーズに柔軟に対応できる新たな教育プログラムが動き出している。
「これも、文理の枠を超えて学ぶという創生学部に通じる考え方に基づいています。農業を例にとると、地質の知識も、農薬にまつわる化学の知識も、IT導入に伴う数学的な知識も求められるはずです。学部横断型にすることで幅広い土台を築き、その上に専門知識を積み重ねていこうというのが、1学科の狙いなのです」

グループごとに異なる課題について意見を出し合う
今年5月、新潟大学は「日本酒学」の創設にも乗り出した。日本酒そのものを学問の対象にするのは全国初の試みだ。
「県内に蔵元が約90もあるのは日本一で、新潟といえば日本酒。『本学がやらずにどこがやる!』という心意気があります」
新潟県、県酒造組合と日本酒学の研究・教育拠点をつくるために提携し、早ければ来年度から講義を始める予定だ。
高校生にも積極的にアプローチ

「汎用的能力こそ真の強さ」と語る髙橋学長
新潟大学では、高大接続改革が始まる以前から、高校生を対象とした公開講座や図書館主催のオープンライブラリーなどを積極的に開催してきた。
「今後、入試が思考力や判断力などに重きが置かれるものに変われば、入学時に学びの土台ができていることになり、その後の成長も早くなる。そういう点において期待しています」
その一方で、環東アジア地域における教育研究拠点の確立や国際交流にも力を入れている。
「今秋には環東アジア地域研究センター創設に向けたシンポジウムを開催します。学生に対しては留学支援を積極的に行います。汎用的能力をしっかり身につけ、あらゆるフィールドで活躍できる人材育成を目指していきます」