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2017年の国公立の大学特集
2016年の国公立の大学特集

弘前大学 食と新エネルギーで 地域に変革を創出する 大学内にあるリンゴ見本園での石川隆二教授 弘前大学 食と新エネルギーで 地域に変革を創出する

大学内にあるリンゴ見本園での石川隆二教授

大学内にあるリンゴ見本園での石川隆二教授

地域社会の持続的な発展をリードする × Hirosaki University

工学的な技術を農業分野に活用する

弘前大学では食、健康、再生可能エネルギーの分野で地域に貢献できるさまざまなプロジェクトを進めている。その研究に携わった学生が地域社会に出て、大学で学んだ知識や技術を直接還元する。そして、地域の持続的な発展をリードしていく――。これがプロジェクトの目標だ。

プロジェクトの総括リーダー、農学生命科学部の石川隆二教授がこう話す。

「学部・研究科の枠を超えて本学一丸となって取り組んでいます。2018年から重視しているのが『農工連携』。農学生命科学部だけでなく、理工学研究科などで研究されている工学技術を応用し、農業を効率化したいと考えています」

例えば、センサーで匂いを感知し、野菜や果実などの熟度を非破壊で判定できる計測技術を使えば、最も品質が高い状態で収穫することが可能になる。熟練農業者が経験に頼っていた品質管理や栽培方法に工学技術を活用することで、新たに農業に参入する若年層を支援できる。

農産物の付加価値を高めるための品種開発にも取り組む。青森県の特産品であるリンゴ。弘前大ではこれまで、果皮が黄色で果肉が白い「こうこう」、果肉が赤い「紅の夢」、緑色の果皮で大型の「弘大みさき」などの開発に成功してきた実績を持つ。

価値の高い農産物を海外に販売していく

開発中の温暖化耐性の米

開発中の温暖化耐性の米

ほかの農産物でも新品種を開発して付加価値を高め、日本国内、さらに海外にまで販路を広げる。そのため、国際流通関係の研究者もプロジェクトに参加している。石川教授が語る。

「効率的な生産方法を確立し、付加価値の高い食品を海外に売り込む。こうした一貫した流れをつくり上げたい。総合大学ならではの強みを生かした取り組みにより、新しい農業が発展する可能性が見えてきました」

ただ今後、農作物の生育環境が変化していくことへの対応も考えなくてはいけない。そのテーマの一つが地球温暖化だ。石川教授自身は稲の品種改良を主な研究テーマにしている。現在の冷涼な東北の環境に適した稲は、温暖化が進むと品質を保てなくなる可能性があるため、温暖化に耐性を持つ稲の品種開発が求められている。

ここでもさまざまな分野の研究者との連携がカギとなる。まず、温暖化が青森県ではどのように進むのかについて、理工学研究科の研究者による予測モデルの活用を進めている。さらに、人文社会科学部の考古学の観点からの研究データも利用する。過去に起こった気候変動に人々はどう対応したのか。当時はどのような品種の稲が栽培されていたのか。県内の遺跡から発掘される炭化米の遺伝子などを解析して得た情報を品種改良に役立てている。

一方、再生可能エネルギーの分野では、風力発電に最適な立地条件や周辺環境への影響について、地元の発電事業者に役立つ研究を続けている。

一年を通して強い風が吹く青森県は、風力発電の設備容量は38万5263キロワット(17年3月末現在)と日本一の実績を誇る。さらに津軽半島や下北半島では洋上風力、陸上風力の新規プロジェクトも数多い。18年4月、北日本エネルギー研究所と食料科学研究所を統合再編した地域戦略研究所が研究を担当している。風力など再生可能エネルギーを使って生み出された電気を、送電線を使って都市部に送るだけでなく、地元で利用するためのマーケットの創出も大きなテーマだ。

小型の風力発電を養殖業に活用する

地域戦略研究所の本田明弘所長が開発した手作りの小型風力発電装置。漁業者がふだん使う帆布をブレードに活用するなど、メンテナンスをしやすい構造にしたのが特長だ

地域戦略研究所の本田明弘所長が開発した手作りの小型風力発電装置。漁業者がふだん使う帆布をブレードに活用するなど、メンテナンスをしやすい構造にしたのが特長だ

地域戦略研究所の本田明弘所長がこう話す。

「再生可能エネルギーの普及には、農業や漁業分野で、気候により変動するエネルギーを利用する市場をつくりだす必要があります」

風力発電といえば、巨大な風車が回っているイメージが強いが、小型の風力発電を使えば、電気が来ていない漁港などでの電力需要をまかなうことができる。本田所長とともに、小型風力発電の水産業への応用を研究する桐原慎二教授が話す。

「漁港に電気が来ていないため、水産業の現場ではICT(情報通信技術)の活用がなかなか進んでいません。小規模な発電装置があれば、養殖事業で使う照明やセンサーなどの電気をまかなうことができます」

ある漁港では、弘前大が手作りした風車によるエネルギーを実際に養殖に活用する社会実装実験が行われている。

本田所長がこう強調する。

「風力エネルギーの用途は発電だけではありません。古来、穀物を粉砕したり、水をくみ揚げたりするのに使われてきました。青森県は自然エネルギーの宝庫です。地域の実情に応じたさまざまな応用の仕方を今後、考えていきたい」

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地域社会で世界的な視野持つリーダーを育てる

佐藤 敬 学長

佐藤 敬 学長

弘前大では重点分野として再生可能エネルギー、環境、被ばく医療、食の4テーマを掲げている。2018年4月、これらを研究する4研究所を2研究所に再編。研究資源を集中し、成果の地域還元を進めようとしている。

「風力発電の設備容量で青森県は日本一。本学では小型の風力発電を使って養殖事業の電力をまかなう社会実装実験を進めるなど、地元産業で活用する『エネルギーの地産地消』を推進していきます。自然エネルギーを使って養殖された水産物を日本国内だけでなく海外に輸出するためのマーケティング活動も自治体や企業と一体となって行っています」

こうした「地域と共に創造した成果を世界に発信する」のが弘前大のスローガンであり、地域活性化の中心的な存在になる大学をめざしている。

「いまは地域社会も世界とつながっています。卒業生が多く活躍している青森県庁や弘前市役所では、農産物や水産物を輸出する仕事があり、第一次産業の国際化を担っています。地域社会においても世界的な視野を持ったリーダーが求められる時代です」

弘前大の使命もそんな国際的な人材を育てることにあるという。

「弘前市は自然に恵まれ、文化と歴史のある街です。街並みもコンパクトで、地域の人たちとの距離がとても近い。多様な勉強をするのにとても適した学都が弘前市です」

いま、大学院を再編している。学問が進歩すればするほど高等教育の軸足を大学院に移行せざるを得ないためだ。

「大学院まで修めて高等教育といえる時代がもうすぐやって来ます。学士課程だけでなく大学院まで学問を続けたい。本学を志望する人にそう思ってもらえる大学をめざします。そのための修学支援に大学としても力を入れていきます。入学試験についても従来の学力に偏った選抜を変えていこうと考えています」

Student’s Voice

リンゴの枝切り技術を学べる
eラーニングのシステムを開発しています

大学院理工学研究科1年生 長谷川 将士 さん

大学院理工学研究科1年生
長谷川 将士 さん

青森県の特産品の一つであるリンゴの栽培では枝切り作業がとても重要で、秋に収穫するリンゴの品質を左右するといわれています。木の内側まで太陽の光が届くようにするため、つぼみの大きさや量を見ながら不要な枝を切り落とす必要があるのです。ただ、どの枝を落とせば、品質のいいリンゴを収穫できるのか。生産者が長年の経験で培ってきた知識や技術を次の世代を担う若い人たちに伝えていく必要があります。私は大学院で、パソコンやスマートフォンを使って枝切りの技術を学べるeラーニングのシステムを開発しています。

具体的なイメージとしては、カメラで撮影したリンゴの木の映像を立体画像にして、「どの枝を切ればいいのか」をAI(人工知能)が判断して教えてくれる。そのようなシステムを構築するのが目標です。生産者の高齢化が進むなか、IT(情報技術)を活用して、後継者の育成につなげることができれば地域貢献につながると考えています。将来は、大学で学んだシステム開発やプログラム開発を生かした仕事に就きたいですね。

弥生時代の水田跡から見つかる炭化米を調査することで
当時の稲作の様子がわかります

人文社会科学部文化創生課程 文化資源学コース3年生 福井 麻里 さん

人文社会科学部文化創生課程
文化資源学コース3年生
福井 麻里 さん

弘前市内の砂沢遺跡から弥生時代前期の水田跡が発見されています。弥生時代の水田跡としては最北に位置し、東日本のなかでも最古級といわれています。ここからは砂沢式土器、石器、炭化米などが出土しています。私が研究しているのは炭化米です。水田跡から土を研究室に持ち帰り、小さな炭化米の粒を見つけ出すのは難しく、とても地道な作業になりますが、この炭化米を研究することで当時の稲作の様子をある程度推測することができます。弥生人が稲を育てていた技術や知恵が見えてきます。どのような品種が栽培されていたのかを研究することで、当時の気象条件もわかります。

大学で地球温暖化に耐えることのできる稲の品種改良が進められていると聞いています。私たちの研究がそうした品種改良に役立てばいいですね。私が弘前大に進んだのは、文化についてしっかり学べる環境があり、総合大学として学部を超えた学びができると思ったからです。卒業後は公務員になって、ここで学んだ考古学を生かせる部署で働きたいと考えています。

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