朝日新聞
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2017年の国公立の大学特集
2016年の国公立の大学特集

大阪市立大学 地域に根ざしながらも 世界をめざす研究 旧制大阪商科大学からの伝統が息づく杉本キャンパス 大阪市立大学 地域に根ざしながらも 世界をめざす研究

旧制大阪商科大学からの伝統が息づく杉本キャンパス

旧制大阪商科大学からの伝統が息づく杉本キャンパス

大阪から世界へ × Osaka City University

化石燃料に替わる理想的なエネルギー

2010年に大阪市立大学は、複合先端研究機構を開設した。その目的は、地球規模の課題解決に、研究科横断型のプロジェクトで取り組むことだ。

研究テーマの一つに、植物を介さず人工的に光合成を起こす人工光合成がある。これが実現すると、太陽光と水から酸素と水素を取り出せるようになる。発生させた水素と二酸化炭素を反応させ、エネルギー源となるメタノールなど有機化合物を合成すれば、人類はエネルギー問題を解決するための糸口を得ることができる。大気中の二酸化炭素を減らすこともできて、まさに一石二鳥。理想的なクリーンエネルギー社会実現に向けた技術開発である。

同機構の立ち上げ当初から、人工光合成の研究をリードしてきたのが神谷信夫教授だ。11年に岡山大学の沈建仁教授とともに発表した研究成果は、英「Nature」オンライン版に掲載され、米「Science」誌によるその年の世界10大成果の一つとして評価された。

人工光合成 実用化までの道のり

神谷信夫教授はノーベル化学賞候補にも名前が挙がる

神谷信夫教授はノーベル化学賞候補にも名前が挙がる

神谷教授らは、太陽光と水から酸素を作り出す際に触媒として働くタンパク質、PS2の結晶構造を解明した。

「PS2は酵素の一種で、タンパク質が20種類も集まった複雑な構造をしています。その構造を最先端のX線装置により解明しPS2の中にある反応の中心部とも呼ぶべき部分の原子構造を明らかにしたのです」

この中心部と同じ原子構造の物質を作り出せれば、これを使った人工光合成実現の可能性が出てくる。

「ただし、この中心部だけで触媒機能を果たしているのか、それともPS2全体が関与しているのかがいまのところ不明で、その解明が今後の課題です」

神谷教授の研究成果を受けて13年に人工光合成研究センターが設立された。センターでは20年をめどに、人工光合成を起こす装置の試作機開発が進められている。実験室レベルの試作機ができれば、次は産学連携による実証実験を経て量産へと進む。仮に人工光合成装置が、太陽光パネルのように普及すれば、エネルギーと資源の問題は解決に向けて大きく前進する。

「研究とは、それまで世界になかった新しい何かを創造することです。そのために求められるのが徹底したオリジナリティ。ゼロからの創造という意味で研究者と芸術家は似ていると思います。芸術が人の暮らしを豊かにするように、研究は世の中を豊かにするのです」

コミュニティの防災を考える

CERDでは学生のみならず、市民も参加できる防災教室や災害対応ワークショップを行っている

CERDでは学生のみならず、市民も参加できる防災教室や災害対応ワークショップを行っている

地球規模の問題解決に取り組む一方で、公立大学である大阪市大には、地域課題の解決や社会貢献への期待もかかる。地域に根ざした防災研究と防災教育を推進する組織として設立されたのが、都市防災教育研究センター(CERD)だ。

CERDは、東日本大震災後に始まった全学的な被害調査活動の受け皿として設立された。

「遡れば阪神淡路大震災の後、多くの教員が被災地での被害調査や避難所での対応、救急時の医療対応など、それぞれの専門を生かした活動を行いました。しかし、その際は研究者単位の活動にとどまりました。その反省を踏まえ、東日本大震災の後は全学で専門領域を超えて、コミュニティの防災計画づくりに取り組みました。先月発生した大阪府北部地震についても学生や教職員、企業に向けて通勤・通学や帰宅の状況についてアンケートを実施するほか、避難所開設に関わる調査などにも取り組む予定です」

所長を務める三田村宗樹理学部教授はこう語る。

災害調査や対応策の立案には理系、文系、医学系など幅広い知恵の結集が必要だ。CERDは文理融合プロジェクトで教員同士が学部の垣根を超えて顔の見えるつながりを持つ、大阪市大ならではの組織といえる。

CERDではコミュニティ防災についての講義が行われ、毎年全学で約200人の学生が地域住民とともに受講。参加学生の1割程度が防災士の資格を取得する。CERDは地域の防災リーダーの育成機関としても重要な役割を担っているのだ。

Top Interview
大学ランキング編集長が聞く

世界で活躍できる創造力ある学生を育てたい

荒川 哲男 学長(左端)

荒川 哲男 学長(左端)

五代友厚らにより1880年に創設された大阪商業講習所がルーツ。テクノロジーを駆使した最先端研究でも輝きを放つ。

社会のニーズを汲んだ実学教育に定評があり、「大阪経済の発展に寄与し、同時に世界でも活躍できる若者を送り出してきました」と荒川哲男学長は語る。

「AI(人工知能)の時代ですから、処理能力が求められる仕事は機械に任せて、課題に柔軟に取り組める創造力のある学生の育成に注力しています」

荒川学長は現代を「〝正解のない答え〟を探求しなければならない時代」と表現する。求められるのは、枠にはまらない多様な考え方。そうしたメッセージを込め、入試では、高校時代の学業以外の取り組みを評価する経済学部のユニーク入試なども導入している。

英語力を強化するカリキュラムや留学のための経済的支援など、グローバル化の対応にも力を入れる。だが、英語は「習得がゴールではない」と話す。

「伝えないことには始まりません。医学部の教授時代、回診の際の学生とのやりとりを英語だけにしたり、現在はブログを英文で書いたり、私自身とにかく使ってなんぼという姿勢を実践しています」

大阪府立大学との統合が実現すれば、学生数約1万6千人もの日本最大の公立大が誕生する。新大学の学生として入学できるのは22年度以降になる見込みだ。

「規模よりもシナジー効果による質の向上をめざします。すでに共同研究もスタートし、キャンパスの都心拠点化も現実味を帯びてきました」

コック帽をかぶり学生に自らの手料理を振る舞うなど、大学の〝顔〟として学生や教職員から親しまれる荒川学長。現場力のあるトップが、日本の大学マップを塗り替えようとしている。

OB’s Voice

テクノロジーの力で人類を健康に
1000年後の教科書に名前が載るインパクトのある仕事をしたい

シグナルトーク ドットテック代表取締役(1999年大学院工学研究科情報工学専攻修了)栢(かや)孝文 さん

シグナルトーク ドットテック代表取締役
(1999年大学院工学研究科情報工学専攻修了)
(かや) 孝文 さん

ゲームクリエイターになりたい。その一心で、大阪市大に入学しました。当時の大学ではめずらしく、大阪市大ではコンピューターの専門的な勉強ができたからです。学部と修士の6年間で、現実世界をゲーム上で再現するためのコンピューターシミュレーションを叩き込まれました。卒業後は大手ゲーム会社を経て独立。数々のオンラインゲームを開発し、なかでも麻雀ゲーム「Maru-Jan」は会員数100万人以上のヒット作になりました。

今年、ヘルスケア事業に進出するべく、新会社を設立しました。世の中には、真偽がわからないさまざまな健康情報が氾濫しています。では、どの情報が正しくて、自分に合っているのか。AIを用いてビッグデータを解析すれば、その判断が可能になります。大阪市大をはじめ多くの研究機関とも連携して、食事や生活習慣と健康の関係性を明らかにし、利用者一人ひとりの体質に合った健康法を提示するサービスを作りたい。人類の幸福に貢献し、1000年後の教科書に載りたいと本気で考えています。

Campus Topics

1 大学オリジナル体操
「市大ストレッチ」を都市健康・スポーツ研究センターが開発

同センターの横山久代准教授が学生と教職員の健康増進のために考案。肩や背中がほぐれ、疲労回復に効果があるという。

同センターの横山久代准教授が学生と教職員の健康増進のために考案。肩や背中がほぐれ、疲労回復に効果があるという。

2 生活科学部食品栄養科学科の学生が考案した
カレーと学長考案のシチューが商品化

カレーは管理栄養士を志す学生たちが開発。シチューは荒川学長自慢のレシピを再現した逸品だ(Top Interview写真は発売前お披露目会の様子)。いずれも学内で販売中。

カレーは管理栄養士を志す学生たちが開発。シチューは荒川学長自慢のレシピを再現した逸品だ(Top Interview写真は発売前お披露目会の様子)。いずれも学内で販売中。

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