朝日新聞
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2017年の国公立の大学特集
2016年の国公立の大学特集

長野県立大学 少人数教育が生む 双方向の活発な学び 大学を率いる金田一真澄学長 長野県立大学 少人数教育が生む 双方向の活発な学び

大学を率いる金田一真澄学長

大学を率いる金田一真澄学長

世界を動かす、熱量がある。 × The University of Nagano

1年次から16人の通年ゼミを体験

山本直樹准教授(右手前)の「発信力ゼミ」は心と体をたっぷり動かす。みんなで拍手して授業が終了

山本直樹准教授(右手前)の「発信力ゼミ」は心と体をたっぷり動かす。みんなで拍手して授業が終了

扉が重くて開かない。その状況を一人の学生がジェスチャーだけで表現する。すると、見ていた別の学生が状況を察し、目に見えない扉を引っ張ったり、叩いたりして手伝い始めた。

「自分が発信して伝わった喜びを感じてほしい。扉といっても、ドアもあれば引き戸もあるから、なかなか伝わらないこともある。相手を何とか理解しようとする姿勢も大事です」

と、山本直樹准教授は学生たちに語りかける。

これは、4月に開学した長野県立大学の1年生を対象とした「発信力ゼミ」の一コマだ。大学にはグローバルマネジメント学部と健康発達学部があり、週1回、全員が受講する。「自分から発信する力」を1年間かけて養い、論文の書き方、プレゼンテーションの方法など、大学での学習に必要なスキルも身につける。

学部、学科を横断して約250人の学生を15クラスに分けるので、自分と思考の異なる学生と出会う機会にもなる。授業の進め方は15人の担当教員に任されている。演劇が専門の山本准教授は、演劇的手法を使って発信力を磨く。半年後にはみんなで人形劇を上演する予定だ。

「多様な学生が集まって一つのものを作るだけでも意味がある。失敗してもいいので積極的に発信し、うまくいかなくてもやり抜いてほしい。その経験は社会でも役立つはずです」

海外留学に備え 英語教育に力を注ぐ

学生から意見を引き出す金賢仙准教授(左)

学生から意見を引き出す金賢仙准教授(左)

別の教室をのぞくと、法律を専門とする金賢仙准教授の「発信力ゼミ」が行われていた。こちらは学生が4人ずつのチームに分かれ、架空の株式会社設立のプランを練っている。出張理髪サービス、結婚式場などの事業計画を立て、資金調達のためのプレゼンテーションをする。

「株式会社の仕組みを学んだ上で、長野県内の上場企業について研究、発表します。聡明で遊び心のある学生が集まっているので楽しみです」(金准教授)

金田一真澄学長は発信力ゼミについてこう話す。

「少人数教育のよさを1年次から味わってほしくて始めました。一人ひとりに時間をかけて指導するには10数人が限度です。20人になると多すぎます。双方向での対話型の授業が、本学がめざす教育の原点です」

2年次からは専門分野のゼミがスタートする。専門は3年次からの大学が多いが、

「早くから専門分野の面白さに触れてもらいたい。人生100年時代の今、学びの楽しさを気づかせることは教育者の使命の一つ。楽しい、面白いと思えたら、人は生涯学び続けることができる。大学を卒業してからも持続的に学び、伸びていくことが大事なんです」

と話す。2年次に全員が海外研修に行くのも特徴的だ。

「海外研修は短期でもかなり充実したものを予定しています。長期のほうが、英語力がつくという意見もありますが、せっかく優秀な教員とカリキュラムが整っているので、やはり長野県立大学でじっくり学んでほしいと考えています」

当然、英語教育にも力を入れている。海外研修という具体的な目標を設定し、1年次には週4回の英語の授業を行う。英語専任の教員は9人体制を取っており、うち4人はネイティブスピーカーだ。2年次の終わりに全員がTOEIC600点以上を取ることをめざす。

寮で育つ協働力やコミュニケーション力

地元長野県産の木材をふんだんに使用したキャンパス

地元長野県産の木材をふんだんに使用したキャンパス

こうした新設大学らしいユニークな制度の中でも、開学前、賛否両論あったのが1年次全寮制だ。しかも個室ではなく2人部屋である。

寮生活が始まってから、金田一学長は寮を訪れ、新入生全員と面談した。すると学生からは異口同音に「寮は楽しいし、すごく刺激的だ」という感想が飛び出した。

「私たちは世界を舞台に活躍できるリーダーの輩出をめざしています。これからのリーダーは学力、語学力だけではなく、困っている人に声をかける温かさも大事。寮生活で人間力やコミュニケーション力を磨いてほしい。幅広い教養に加えて、核となる専門分野を持ち、グローバルな視野で考えられる若者を育てたいと思っています」

現在の入学試験は学力テストと面接が中心だが、今後はより個性的で伸びしろのある学生を受け入れていく方針だ。

Top Interview
大学ランキング 編集長が聞く

地域と世界。両方に触れ革新的な発想を伸ばす

安藤 国威 理事長

安藤 国威 理事長

初めての新入生を迎え、どんな手応えを感じているのか。

「予想以上に順調にスタートしました。心配していた1年次の全寮制も学生に大好評です。早速、友だち同士で助け合い、リーダーシップを発揮するなど、我々が想定しなかった、いい効果が生まれています」

外部から講師を招く「象山学」も、この大学ならではの授業だ。

「学生は活発に議論し、自分たちで積極的にクラスを引っ張っています。海外研修の提携校の一つ、アメリカ・ミズーリ大学の方が来たときは、英語で質問していました。とくに長野県の学生はおとなしい印象があったので、信じられない変化です。すばらしいですね。若者は場を与えればどんどん伸びていくことを強く実感しました」

学生は県内からが6割、県外からが4割。入学試験の倍率は全体で4・7倍だった。地域に貢献したいと話す学生も多い。

「地域貢献をするにしても、海外で多様性に触れることによって、イノベーティブな発想が生まれます。1年次に英語を詰め込んで2年次に海外研修に行き、自分のめざす方向を早く決めて努力する。世界に出れば視野が広がり、日本の特殊性もわかります」

地域貢献の要として、地域連携、産学官連携のためのソーシャル・イノベーション創出センターを設置した。

「地域から、予想を大幅に超える数のプログラムの要請が来ています。すでに地域の課題に対して学生が提案する場を設けるなど、地域の人と共に活動する場ができました。大学が触媒的な役割を果たせたらと考えています」

今後、大学のめざす方向は。

「世界で自信を持って活躍できる若者を育てたい。自分たちで正解を生み出すための考え方やチャレンジスピリットを教えるのが我々の役割です。いいスタートを切れたので、この勢いを維持していきたいですね」

Campus Topics

1 2年次に全員が海外研修
異文化に触れて視野を広げ、専門の学びに弾みをつける

提携先のアメリカ・ミズーリ大学コロンビア校

提携先のアメリカ・ミズーリ大学コロンビア校

2年次に全学生が2~4週間の海外研修に参加する。グローバルマネジメント学部はアメリカのミズーリ大学コロンビア校、イギリスのレスター大学、ニュージーランドのリンカーン大学とAra(クライストチャーチ工科大学)、スウェーデン市民大学、フィリピンのアテネオ大学に分かれて、英語研修を受け、企業訪問なども行う。

食健康学科はミズーリ大学コロンビア校とAra(クライストチャーチ工科大学)、こども学科はフィンランドの職業学校で、それぞれ管理栄養士の働き方や食文化、幼児教育制度などにおける日本との違いを学ぶ。 

研修の前後の学期には、その国の経済・経営の特徴や、栄養教育、幼児教育の現状を日本の場合と比較するなどの関連授業があり、事前事後の研修としてプレゼンテーションを実施する。

2 江戸時代末期の洋学研究者、
佐久間象山にちなんで命名された「象山(ぞうざん)学」で将来を考える

学生は「象山学」を自らの将来像や生き方を考え始めるきっかけとする

学生は「象山学」を自らの将来像や生き方を考え始めるきっかけとする

大学を象徴する授業の一つが「象山学」だ。困難な課題を乗り越えて社会に変革をもたらし、現在もなお挑戦を続けている社会人を講師に迎え、それぞれの取り組みやその背後にある想いなどについて語ってもらう。

今までに小布施町特別職主任研究員の大宮透さんや、元KDDI∞ラボ長(現・mediba代表取締役社長)の江幡智広さん、バリューブックス取締役の鳥居希さんなどが登壇した。

仕事を通じての「生き様」を聴くことができ、学生にとってはロールモデルに出会える貴重な機会でもある。自分はどのような生き方をしていくのか。社会に出て正解のない問題に直面したときどう解決していくのか。自分の将来を考える上で大きな刺激となっている。

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