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代々木ゼミナール 代々木ゼミナール

子どもたちの多くは教科書が正しく読めていない──。そんな衝撃的な著書が話題の新井紀子・国立情報学研究所教授と代々木ゼミナールの髙宮敏郎副理事長が、読解力の重要性や学力との相関について語り合った。

教科書が読めない今の子どもたち

SAPIX YOZEMI GROUP共同代表
学校法人高宮学園 代々木ゼミナール 副理事長
教育学博士

髙宮 敏郎 さん
たかみや・としろう/1997年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年学校法人高宮学園に。米ペンシルベニア大学で大学経営学を学び、教育学博士号を取得。09年から副理事長。現在、SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する株式会社日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。

髙宮 AI(人工知能)が東大に合格することは難しい、なぜならAIは人間のように読んだり意味を理解したりすることができないからだ。それが、新井先生と私たちが取り組んだ「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの現時点での総括です。しかしその過程で、実は多くの子どもたちが教科書を読めていないらしいと気付いたことが、リーディングスキルテスト(RST)開発のきっかけですね。

新井 そうです。国立情報学研究所を中心とする私たちの研究チームでは、文章に書かれた通りにファクト(事実)を読み取る力を読解力と考え、それをはかるためのテストを開発しました。

髙宮 ふたつの文の意味が同じかを判断する「同義文判定」、文字で説明してある通りの図表を選択肢から選ぶ「イメージ同定」、語の定義を踏まえて正しい使用例はどれかを考える「具体例同定」など、問題は全部で6タイプありますね。

新井 そんなものは読解力以前の問題で、普段言葉を使って生活している子どもたちならできて当たり前だ、という批判もずいぶんありましたが、これまでの結果から、6つのタイプのどこかに問題のある生徒はかなり多いことがわかっています。読解力とは、人物の心情に寄り添って小説を味わうといった力だけを指すのではありません。

髙宮 読解力は、国語に限らず総合的な学力にかなり影響しているだろうと予想はできますが、実際はいかがでしたか。

新井 過去2年間・約5万人の受検データを見ると、RSTの6つの能力値と受検者の通う学校の偏差値との間には強い正の相関があります。これまで私たちは、漫画は読むのに教科書は読まないという生徒がいれば、本人の意欲や興味関心の問題だと思ってきました。しかし本当は「読まないのではなく読めない」子どもが相当数いる可能性があるのではないでしょうか。

数学には数学の読解力が不可欠

国立情報学研究所
情報社会相関系 教授

新井 紀子 さん
あらい・のりこ/一橋大学法学部卒業、米イリノイ大学大学院数学科博士課程修了。2011年から「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクター、16年から「リーディングスキルテスト」の開発を手掛ける。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。近著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』はベストセラーに。

髙宮 つまり、正しく読めるということが学習の基盤であって、それがないところにいくら高度なものを積み上げようとしても難しいということですね。

新井 そうです。もうひとつ私が興味深いのは、国語の教科書が読めれば数学でも地理でも同じように読めるとは限らないということです。数学には数学の問題文を読む読解力が、地理なら地形の説明文からその国の暮らしをイメージするといったように、必要な読解力は異なるのです。

髙宮 「東ロボ」プロジェクトやRSTなどから得られた近年の知見をまとめた先生の著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、多くの教育関係者にも衝撃を与えたようです。学校現場からはどのような反応がありましたか。

新井 長年漠然と思っていたこと、何か変だと感じていたことを言語化してくれた、という感想が多いですね。話し方がぶっきらぼうで成績も芳しくない生徒は、単に無礼なわけでもやる気がないのでもなく、話したいことがうまく表現できないのかもしれない。そしてそのことが、成績と関連しているのではないかという声もありました。

髙宮 なるほど。勉強が嫌いなわけではないのにできない理由が何かあるなら、それは取り除いてあげたいですよね。

生涯学び続ける原動力は読解力

新井 子どもたちの多くは自分では教科書を読めているつもりですが、言葉の意味は知っていても、しっかりと「腑に落ちて」はいません。たとえば私が大学受験をした時は、自分でイメージできるよう世界史の人の動きや物の流れを図に描いて視覚的に理解しました。「腑に落ち」させるのに適した方法は人それぞれですので、自分に合わせて見つけていくといいと思います。

髙宮 本当の意味で「理解する」という感覚そのものが理解できていない生徒もいるでしょうから、大人としては早い段階で一度その体験をさせてあげることが大切ですね。

新井 読解力の低さとその対策については、政治家や産業界も高い関心を持っています。少子化と人口減の時代に、希少価値の子どもたちをどう育てるかは、この国を将来どう維持していくかとイコールです。AIなどの機械と人間の協働が不可欠なこれからの社会では、機械に代替できる仕事はどんどん任せて、人間は人間にしかできないことをすればいい。機械に代替させてはいけない仕事の筆頭が、子どもを育てることだと私は思います。

髙宮 今後もテクノロジーの進歩が止まることはないので、最新の知識は常に陳腐化していく宿命を負っています。一生のうちに何度か転職することもますます一般的になっていくでしょうから、私たちはそのたびに新しい知識を身につけ、技術を覚え、概念をアップデートしていかなくてはなりません。つまり、本当の意味での生涯学習の時代だということです。その際に必要になる力とは、要するに読解力なのだと、お話を聞いてあらためて思いました。今後もさまざまなかたちで新井先生のプロジェクトにご協力できたらと思います。本日はありがとうございました。

早めの対策が鍵を握る
大学入学共通テスト

代々木ゼミナール
教育総合研究所
佐藤 雄太郎 所長

形式に慣れることが不可欠の記述式問題

2020年度から実施予定の「大学入学共通テスト(以下、新テスト)」では、国語と数学の一部に記述式問題が導入されることになっています。昨年11月に全国の高校生約18万人を対象に行った試行調査の結果が3月に公表されましたが、80~120字で記述する国語の問題は正答率が0・7%。数学の記述式問題3問はいずれも正答率10%未満、50%前後は無解答という結果でした。

国語では、出題の条件によって求められる力が違ってきます。「25字以内」で書く場合は要点を短くまとめるセンスが問われます。一方、「120字以内」であれば、条件に従い、資料から必要な情報を抽出し、具体例を示しながら述べるといった構成力も求められます。数学は与えられた文章から条件を読み解き、「これはどの数学分野の問題か」に気付く力が求められる問題もありました。特に実施初年度は対策が難しいところですが、記述式問題が課される模試などを通じて、形式に慣れることが大切と言えます。

また、新テストの記述式は、明確な条件が示された上での問題となるため、文を正しく「読めているか」の読解力は、解答のみならず、自己採点をする上でも必要となります。記述式と聞くと、アウトプットの技術ばかりに目が行きますが、読解力を高めることも、これからの対策の一つであると考えます。

英語4技能試験は夏前に一度目の受験を

新テストの英語は「聞く・話す・読む・書く」という4技能をはかるため、民間の資格検定試験(以下、外部試験)を活用することが決まっています。高校3年の4~12月の期間で最大2回までの成績を大学受験に利用できます。ギリギリまで勉強時間が欲しいのは誰しも同じでしょうから、12月近くまで勉強をしたいところですが、希望者が殺到したり、テストが絞られたりするなど、受けたくても受けられないという事態が起こる可能性も想定しておいたほうがよいでしょう。そのため、初年度はできれば夏前には1回目の試験を受けることを目標に、早め早めに学習を進めていきましょう。

大学入試の英語は、外部試験のほか、新テストの2技能試験に加え、国公立2次や私大と、最大で5種類の試験があります。その点も踏まえ、学習を進めていくことをお勧めします。

新テストでは、読解問題が中心に課される予定となっています。それでも、読めるようになるには、語彙や文法の習得といった地道な基礎学習が今後も欠かせません。また、外部試験で課される「話す」技能はコミュニケーションであるため、独力での対策には限界があります。学校の授業等をうまく活用しながら、英語を実際に使う機会を見つける工夫も必要でしょう。

今後重要性を増すデータを活用する力

24年度(25年1月)から、「情報I」という新科目が新テストに加わるという話が出ています。AIやIoTを活用し「ソサエティ5・0」という新たな社会を実現しようとしているこれからの日本で、データを正しく読み解き活用できる人材の需要はますます高まっていきます。

データを読むうえでも必要なのは読解力や論理的思考力ですので、文系志望の人にとっても無縁の話ではありません。大学によっては、24年度を待たずに2次試験で統計学的な思考を問う問題を出す可能性もあります。受験生はそうした社会の変化に対してもアンテナを高くしておく必要がありそうですね。 (談)

※ 英検®は公益財団法人日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。

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