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スペシャルインタビュー 備えて安心地震の話 震災はもう“非日常”じゃない。誰もが自分事として、地震リスクに備えるべき時代です。避難時の備え。経済的な備え。 ファイナンシャルプランナー 清水 香さん

2011年の東日本大震災からわずか5年。今年4月に起こった熊本地震は九州だけではなく、日本全国に大きな衝撃を与えました。さらにここ数カ月、関東で小規模な地震が群発するなど、日本は今もなお揺れ続けています。そうした中、着実に高まっているのが災害対策への意識です。地震発生後の暮らしを支える「地震保険」への加入も、万が一の備えとして押さえておくべきポイントでしょう。今回は『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)などの著書を持つファイナンシャルプランナー清水香さんに、地震保険の役割や仕組み、重要性を伺います。

地震保険は、生活再建の支え

株式会社生活設計塾クルー 取締役
ファイナンシャルプランナー
清水 香
しみず・かおり/ 1968年東京生まれ。学生時代より生損保代理店業務に携わるかたわら、FP業務を開始。2001年、独立系ファイナンシャルプランナーとしてフリーランスに転身、のち生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。相談業務、執筆・講演なども幅広く展開、TV出演も多数。財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」および「地震保険制度に関するプロジェクトチームフォローアップ会合」委員。twitter @fpkaori メディア掲載、セミナー開催など随時アップしています

――本日はよろしくお願いします。はじめに清水さんが考える地震保険に対するスタンスをお聞かせください。

 清水さん 私の仕事はファイナンシャルプランナーとして、生活者が自分らしく暮らしていくために「お金」をどのようにしておけばいいかをアドバイスすることです。特定の金融機関に属さず、金融商品や保険等の販売も行いません。ただ、地震保険についてアドバイスを求められるときには、「必要なので必ず入っておいてね」とお話しています。

――清水さんが“地震保険は必須”と考えるようになったのは、なぜでしょう?

 清水さん 財務省が主催する“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”に、私も委員として参加しています。そのチームにはさまざまな専門分野の方が在籍しているのですが、地震学の先生も「東日本大震災は、想定外のものだった」と語っています。その上、先の熊本地震が起こった。1995年の阪神・淡路大震災以降、日本は揺れ続けています。この状況では震度7レベルの地震は、日本のどこで起こってもおかしくないという専門家もいます。ということは、誰にとっても他人事ではない「リスク」なんですね。

――日本中、誰もが被災者になる可能性があると。

 清水さん そういうことです。地震は止めることも、回避することもできません。もし被災したら、住宅や家財はもちろん、仕事も、コミュニティも、自分たちの生活基盤というものを一切合切奪われかねないんです。さらにその先に待ち構えているのは、「生活の再建」というものすごく高いハードルです。ここで問題になってくるのが、お金です。わが国では、被災後の生活再建は、生活者一人ひとりの自助努力が基本になっているからです。

――政府や自治体の支援があると思うのですが。

 清水さん 住宅が全壊または大規模半壊となった世帯に対する支援として「被災者生活再建支援法」がありますが、支援金は最大でも300万円です。

――国からの支援は、あくまで最低限ということですね。

 清水さん さらに住宅ローンの返済期間中の方の場合は、被災して住まいが無くなってもローンは残ります。それでも、住まいがなくては生活再建は始められません。となると、残ったローンを返しながら、新生活のための住居費が必要となる「住居費の二重負担問題」が発生します。

一方で、住宅ローンを払い終え、年金暮らしが始まり、「もう古い家だし」と、火災保険も地震保険も更新しなくてよいと考える方を見かけることがあります。しかしこうした状況でひとたび被災すれば、新たな住居費という大変な負担を強いられる可能性があります。

――正直、想像もつかない事態です……。

 清水さん 仕事やボランティアで足を運んだ被災地でお会いした方の中には、“新居の引渡しから1週間で全壊”という最悪な状況に陥った方もいましたが、その方は地震保険に加入していて、「建物だけでも、地震保険に加入していて本当に助かった」と話してくれました。最悪の状況だからこそ、手元にある程度まとまったお金があるとないとでは、気持ちも全然違うんですよね。