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2012.1.1

日本の復興が世界を勇気づける。
日本への期待に、気づいてください。

山下 真理 氏
国際連合広報センター所長・1988年 上智大学法学部国際関係法学科卒業

世界は、日本の若者を待っている。

昨年初めて、上智の教壇に立たれたそうですね。

12月に、全学共通科目「グローバル化と国際貢献」で講義を行いました。まず、国連事務総長の1年とともに国連の取組みを振り返り、次の授業ではその活動が国連の優先課題に本当に直結しているか、学生の皆さんにディスカッションをしてもらいますが、次回の講義で学生がどのような事に注目するのか、とても楽しみです。

私は大学を卒業後すぐに米国の大学院に入学し、そのままニューヨークの国連本部に入りました。日本へ戻って国連広報センター所長に就任したのは、2010年の7月。22年もの間、海外から日本を見る立場にいましたから、帰国して日本の若者は内向きで海外への関心が低い、というコメントが多いので驚きました。確かに海外留学する学生の数を見ると減っていますが、日本の若者に対する否定的な意見が先行しているように感じますね。国際社会に興味を持つ若者たちは少ないと言われるわりには、みんな目を輝かせて国連の話に耳を傾けてくれます。日本の若者にとって、世界は決して遠い場所ではありません。世界は彼らのような日本人を待っているのです。自信を持って進んでほしいですね。

日本は国際社会の中で、すっかり自信をなくしています。

東日本大震災の直後、日本人の冷静で秩序ある行動に対する賞賛の言葉が世界中から届きました。日本に対する世界の評価は、非常に高いものです。日本ブランドというとテクノロジーやマンガ、食文化などを思い浮かべる方が多いのですが、それだけではありません。第二次世界大戦から急速に復興を遂げ、長期にわたって平和を守り、社会の基盤が安定し、国際社会にも貢献している。世界中から尊敬と期待を集めているのに、日本にいるとそれに気づかないのです。もちろん、世界はものすごいスピードで変化していますから危機感は必要ですが、ここ20年ほどの経済的な停滞のせいで、自分たちで自分たちの限界を作ってしまっているのでしょうか。とても残念なことだと思います。

日本の力が、人類全体の力になる。

2011年の国連デーは東北で行われましたが、そこで何を感じましたか。

震災の経験から得た教訓はもちろん、復興へ向けた取組みも世界中で共有していくことが大切です。貧困にあえぐ国や防災対策が不十分な国は、災害からなかなか立ち直ることができません。復興する前にまた次の災害に見舞われ、元の生活を取り戻せないまま、何年も経過してしまうのです。しかし、日本には立ち直る力が十分にあります。世界も、日本ならすぐに復興を遂げるはずだと信じています。防災のノウハウ、耐震建築の技術、持続可能な社会を支える次世代エネルギーの開発など、東北の復興に関わるすべてを世界と共有すれば、それが人類全体の財産になります。日本が震災前よりさらにすばらしい国に生まれ変わることが、世界に勇気を与えるのです。

世界のためにも、日本は新しい提言をするべきだということですね。

その通りです。被災した方たちの苦しみは想像を絶するもので、心の傷はなかなか癒えないと思いますが、裏を返せばそれは人の痛みがわかるということです。多くの日本人がボランティア活動に携わっている姿を見ると、阪神淡路大震災以来、自発的に助け合う精神が日本にしっかりと根づいたことがわかります。世界の国々とも痛みを分かち合い、力を合わせて未来へ向かうことができるはずです。

実社会への貢献を念頭に、学んでほしい。

国連は近年、さまざまな新しい取り組みを行っていますね。

もはや企業の力なしには、世界が抱える諸問題は解決できません。そこで12年ほど前、国連と企業のパートナーシップ「グローバル・コンパクト」がスタートしました。「企業はひとつの事業として社会貢献に結びつく活動を行うべきだ」という前提のもと、多くの企業が参加しています。日本ではまだCSR(Corporate Social Responsibility)への理解が十分でない面もあるようですが、欧米企業では当然のことなのです。一方、最高学府である大学にも、最先端の研究成果を実社会に反映させ、世界につなげていく役割が期待されています。この点についても、国連と大学が共に持続可能な成長や紛争解決など人類共通の課題に取り組む「アカデミック・インパクト」が、2009年から始まっています。

大学の力という意味では、上智には他と異なる広い視野があるように感じられます。

そうですね、学問に対するアプローチが非常に普遍的です。国内のテーマを学ぶ場合も、必ず世界からの視点がある。教授陣もレベルが高く、例えば私の在学中には緒方貞子さんが教鞭をとられていて、私も教え子のひとりです。若い頃にすばらしい先生方から受けた刺激は何にも変え難いものです。今の若者たちにも、そのような環境に身を置き、日本の新しいアイディアを世界へ発信する力を養ってほしい。20年後、30年後の世界を見据えて考え、行動してほしいですね。

山下 真理 (やました まり)
国際連合広報センター所長・1988年上智大学法学部国際関係法学科卒業
米フレッチャー法律外交大学院修了後、1990年国連競争試験に合格。国連事務局情報収集調査局、選挙支援部、政務局東南アジア・太平洋担当などを経て、2010年7月から現職。