2012.11.1
ゾマホン D.C.ルフィン 氏
ベナン共和国駐日特命全権大使

昨年12月にベナン大統領から駐日特命全権大使に任命されました。私のことを”Japanese made ambassador(日本人が作った大使)”と呼ぶ人が多いのですが、本当にその通りです。留学生として来日してから約20年、今の自分があるのは応援してくださった日本の皆さんのおかげです。心からお礼を申し上げたいと思います。
特に感謝しているのは、日本留学の際に保証人になってくれた高橋政昭さん、芸能界でお世話になってベナンへの支援にも協力してくれている北野武さん、そして上智大学における恩師、総合人間科学部社会学科の岡本英雄先生です。岡本先生はまだ日本語が下手だった私の話に丁寧に耳を傾け、上智への入学の道を拓いてくださいました。この3人の方たちは私の神様です。 私の母国ベナンでは、誰もが教育を受ける機会を与えられているわけではありません。貧しさのために学校に通えない子どもが多い中、私はベナン国立大学を出た後に中国の大学に国費留学し、さらに日本で学びました。日本には自費留学で来たため、毎日3つのアルバイトを掛け持ちし、夜通し明け方まで働いて、ようやく上智大学に入学することができました。 上智大学は、厳しく真面目な大学として世界中で有名です。そして「勉強したことを広く社会に役立てなければ意味がない」というのが、ソフィアの精神。私がテレビ出演や講演、本の執筆などで稼いだお金のほとんどをベナンの学校作りなどに費やしているのは、このソフィアの精神に大きな影響を受けたからです。
もともと私が日本に関心を持ったのは、日本の教育制度がきっかけでした。日本には地下資源がほとんどなく天災も多いのに、ここまで豊かな国になった。一方でアフリカには地下資源は豊富にあるのに、貧しいまま。この差は教育にあります。国づくりは人づくりなのです。上智で岡本先生の指導のもと、教育の重要性について学び、ベナンの初等教育に関する論文にまとめました。今までベナンに小学校を7校、大人も学べる日本語学校を1校作りましたが、これらの学校に自分の名前を付けることはせず、日本語の名前をつけています。学生たちに、なぜ自分の学校の名前に日本語が使われているか考えてもらいたいからです。
ベナンの国民は私の活動を見て「政治家の言葉は信じられないけど、ゾマホンの言葉は信頼できる」と言ってくれるようになりました。これこそが私の財産だと思います。

私が心から尊敬するのは、日本人の「自分のことよりもまず相手のことを考える」という姿勢。これこそ日本の志というものだと思います。高橋さんも北野さんも岡本先生も、すべてこの志をもって私に接してくださいました。
日本の皆さんに感謝すると同時に、日本とアフリカの関係について4つのお願いがあります。まず、アフリカの歴史や文化をもっと知ってほしい。日本の教科書は、欧米諸国やアジアパシフィックの歴史・文化には多くのページを割いていますが、アフリカについてはほんのわずか。日本の子どもたちに、もっとアフリカについて知る機会を与えてほしいのです。
次に、アフリカからもっと多くの留学生を迎え入れてほしい。日本で学んだアフリカの人たちは母国に帰れば必ず日本の大使として活躍してくれます。これは日本にとってもひじょうにプラスになるはずです。
また、もっとアフリカに投資してほしい。アフリカは伝染病が多くて政治も不安定だから、などとマイナス面を挙げて敬遠していると、日本は中国に大きく遅れをとってしまいます。既にアフリカの一般の人びとの間では、アジアの国というとまず中国。中国は貧しい国に対しても積極的に投資していますし、アフリカにおける大使館の数でも、日本は中国より少ないのです。 そして最後に、日本からアフリカ諸国への直行便を増やしてほしい。もっと安く速くアフリカへ来られるようになれば、距離感も縮まるはずです。
自然と人間が調和する国、平和を愛する国である日本に、もっと世界で大きな役割を果たしてほしい。それが私の願いです。私自身、外交の場でも日本のすばらしさを広く伝えることにより、日本の皆さんに恩返しをしたいと考えています。
いまの日本人が日本本来の志を忘れてしまっているように見えるのは、残念です。真の国際人とは、自国の文化や歴史を身につけながらも他国のことを深く理解しようという気持ちを持つ人のことを指すのです。それは心の問題で、語学力の問題ではありません。
