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2012.12.28

「本質的に正しいことを追求する」
研究でも経営でも、成功の秘訣は同じです。

大西 啓介 氏
株式会社ナビタイムジャパン 代表取締役社長・工学博士

偶然であり必然だった、上智での出会い。

私は、試験環境や空調などの設備を開発製造する株式会社大西熱学の創業家に生まれました。事業を興したのは私の祖父です。世界にも類を見ない環境作りに取り組む企業ですから、私も自然とグローバルを意識して育ちました。高校生の頃、出始めたばかりのパソコンを購入してから電子工学を学びたいと考えるようになり、グローバルなイメージのある上智大学を選びました。

もともと修士課程まで進学するつもりでしたが、さらに博士課程まで進んだのは、経路探索の研究が学会で高く評価されたためです。新聞にも紹介記事が掲載されました。恩師である加藤誠巳教授にも研究室に残るように勧められ、父も世界で事業を行う上で博士号は役立つ、と背中を押してくれました。

研究室の4年後輩に、時刻表の経路探索を研究している者がいました。一緒にテニスやスキーに行くなど親しくしていましたが、彼は大手企業に就職。しかし、自分で新しいシステム開発に携わりたいという思いが満たされず「大西さん、一緒にやりませんか」と声をかけてきたのです。彼が現・ナビタイムジャパンの副社長兼CTO、菊池 新です。車の経路探索が専門の私と鉄道の経路探索専門の菊池が出会わなかったら、ナビタイムは生まれなかったでしょう。

菊池と一緒に大西熱学の新規事業として開発をスタートしたのが、インターネット商用化の前年である1995年です。寸暇を惜しんで世界唯一のトータルナビゲーションエンジンの開発に取り組んで4年ほど経ち、ようやくプラットフォームの形が見えた頃、PDA(携帯情報端末)の時代がやってきました。当時PDAに最適なナビゲーション機能を探していた人が、私の研究の新聞記事を覚えていて訪ねてきてくれたのです。こうして私たちのエンジンが採用され、PDAの市場拡大とともにデファクトスタンダードとなりました。さらにノキアやエリクソンなどグローバル企業までが、世界中を探してもモバイルに適したナビゲーションエンジンはここにしかない、と訪れるようになりました。

こうなると情報システムとまったく関係ない大西熱学の中にいるわけにもいかず、分社することになりました。社名を「ナビタイムジャパン」としたのは、世界の誰にでもナビゲーションサービスだとわかってもらうため、そして日本発祥のグローバルサービスであることを伝えるためです。2000年のことでした。それから12年が経ちますが、今でも車から公共交通機関、徒歩まですべての交通手段を組みあわせて経路検索できるエンジンを持つのは我々だけです。

世の中の動きを見極め、本質を見失わない。

ナビタイムの目的は移動の不安をなくすことと、時間のロスをなくすことです。我々の試算では、経路を調べたり移動中に迷ったりすることにより、人生100年とした場合1年もの時間が無駄になっています。ナビタイムを使えば、忙しい毎日の中で有意義な時間が創出できる。これが我々の提供するベネフィットなのです。

成功要因は、常にユーザー発想でいることだと思います。たとえば電車ルートの場合、ナビタイムでは到着駅から目的地まで行くのに最も便利な出口はどこか、その出口に最短で到着するには何両目に乗ればいいか、駅で出口を出たらどちらの方向へ進めばいいか、など詳細にわたって情報を提供します。このきめ細かさ、日本らしい「おもてなしの精神」が我々の強みです。ナビタイムはイギリスでもサービスを展開していますが、時刻表通り列車が動かないことに慣れているイギリスの人たちは、遅延の時に迂回ルートをボタンひとつで表示できることに驚嘆したそうです。そのせいか、広告宣伝なしで既に数十万のユーザーを獲得しています。
最新技術だけではビジネスの成功は望めません。世の中がこれからどう動くかを見極め、動くことが必要です。加藤先生からも技術のための技術、研究のための研究でなく世の中に役立つことを目指せ、と叩き込まれました。先生のように社会人として実務経験があり、学術一辺倒ではないバランス感覚のある指導者が増えれば、日本でももっと若い起業家が増えてくるだろうと思います。

我々の目標は、ナビゲーションエンジンとして世界のデファクトスタンダードになることです。しかし、焦って世界展開するつもりはありません。海外で現地向けのサービスを展開するためには、第3世代通信ネットワークの整備・スマートフォンの普及に加えてリアルタイム交通情報が入手可能、という条件を基準としています。それが質の高いサービスの維持に必要だからです。これも研究室で学んだことですが、いつも「本質的に正しいこと」を追い求めていかなければ、いずれ破たんを招くことになります。目先の利益にとらわれることなく、常に最高と最悪のケースを頭に置きながら最悪のレベルを底上げしていく。そんな堅実さが経営者には求められるのです。

大西 啓介(おおにし けいすけ)
株式会社ナビタイムジャパン 代表取締役社長・工学博士・1993年 上智大学大学院理工学研究科 電気電子工学博士後期課程修了
試験装置メーカーの大西熱学に入社。研究室で環境試験装置の制御プログラムなどの開発を手がける。96年、社内ベンチャーとして経路検索エンジンのライセンスビジネスを立ち上げる。2000年に大西熱学から分社独立し、(株)ナビタイムジャパンを設立。代表取締役社長を務める。