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2013.2.1

途上国へ目を向けることで、
日本社会の閉塞感は解消されるはずです。

石原 ゆり奈 氏
特定非営利活動法人 国際学校建設支援協会(ISSC)代表理事

目標は、途上国の教育支援と日本の若者の夢のサポート。

私はキリスト教精神に基づく教育を行う中高一貫校で学んでいたため、十代の頃からボランティア活動にはよく参加していました。介護施設でお年寄りの話し相手になったり、交通遺児の支援に加わったりすることで、こんな私でも何か役に立つことがあるのだ、と実感した記憶があります。大学で社会学を勉強したいと思ったのは、社会の成り立ちや人と人の関わりに興味を持ったためです。そこで上智大学の社会学科に入学し、核家族化の影響による人間関係の希薄化などを学ぶことで、社会構造の変化を実感しました。

上智ではごく普通の学生生活を送りながら個人的にボランティア活動を続けていましたが、将来の夢を描くことができずにいました。日本社会の成長が望めない雰囲気の中で、社会人としての展望を持つのは難しかったのです。

ある時、広島の長束(ながつか)小学校の同窓生の方からネパールの学校建設について相談を受ける機会がありました。広島では20年以上前から、松田實(みのる)先生を中心にネパールの山村僻地への学校建設支援活動が行われています。この方たちもその活動に参画され、ネパールに学校を建設することはできたのですが、運営していくには教師の育成や物資の提供などさまざまな支援が必要だとわかった、というのです。自分たちはもう高齢で現地へ行くことはできない、誰かサポートしてくれる人はいないだろうか……そう話される皆さんの言葉を聞くうちに「私がやってみたい」と明確に感じました。これが現在の国際学校建設支援協会(ISSC)が始まったきっかけです。

やると決めたものの、私には国際支援ボランティアの経験はほとんどありませんでした。右も左もわからない中、手探りでスタートしてしばらくすると大学生から「支援活動を手伝いたい」という問合せがたくさん来るようになりました。不安に思いながらも彼らと話してみると、ひとり一人がしっかりと意見を持つ個性豊かな若者たちであることがわかり、一緒にやってみようと決意しました。

この時、ISSCの活動の柱は2本になりました。まず、途上国の貧しい子どもたちに教育の機会を平等に与えるために支援を行うこと。そして次に、日本の若者たちの夢の実現を手伝うことです。私は日本国内で大学生たちに支援活動の基本を教え、現地へ派遣し、時には同行してサポートしています。

地域が自立して学校を運営できるまで、長期的な支援が必要。

ISSCは今までにネパールとラオスに2校ずつ、計4校の建設・支援を行ってきました。2国とも貧しさに変わりはありませんが、特に山岳地帯のネパールは物資の輸送や人の往復だけでも困難が伴います。ようやく学校が建っても教材も文具も圧倒的に不足していて、先生たちがどんなに熱心でも限界があるのが現実です。私たちは物資と人材の両面で支援を続けていきますが、最終的な目標は村が自立して学校を運営できるようになること。たとえばネパールのある学校では、ヤギを飼って繁殖させ、売ったお金で学校運営費用に充てるプロジェクトを進めています。

地域の自立には、長い時間がかかります。もともと私たちは、地域の人たちが教育の重要性を理解していることを学校建設地の選択基準としていますが、それでも子どもには家の手伝いを優先させたいから学校には通わせられない、という家庭もあります。そうした家庭の多くは少数民族で、両親は公用語を話すこともできません。貧困から抜け出すためには公用語の習得が必要ですから、まず家庭にその点を理解してもらうように説得しなければならないのです。子どもたちが公用語を学び、教育者となって村に戻ってまた子どもたちに公用語を教える。そうなって初めて自立できたと言えるのです。

想像を超える現地の実態を体験した大学生ボランティアは、日本がいかに恵まれているか実感し、大きく成長して戻ってきます。日本社会には私が学生だった頃と同じように閉塞感が漂っていますが、その一方で彼ら自身は当たり前のように色々なものに囲まれ、好きなことができる環境の中で育ってきたため、自分の力で何かを成し遂げた経験がありません。だから私は最初のうちこそしっかり指導しますが、なるべく彼らの自主性に任せて達成感を味わえるようにしています。若いうちにこうした成功体験があると、その後の人生が大きく変わるはずです。

足立区の助成事業のひとつ「ラオス教室」は、大学生たちが中心になって進めている代表的な活動です。小学生たちにラオスの人々の暮らしや文化を知ってもらい、自分たちに何ができるか一緒に考えてもらいます。文具を買う資金のために使用済み切手をはがして集める、いらなくなったリコーダーや鍵盤ハーモニカを送る、といった支援によってラオスとのつながりを感じた小学生たちは、きっと大きくなってもラオスを身近に思い、支援してくれるでしょう。 大人たちにとっても途上国は遠い存在ですが、やはりその国をまず知ることから始めて、得た知識を発信していただきたいのです。関心を持ち、アンテナを張っていれば、社会人ボランティアの募集なども目に留まるでしょう。日本を見つめ直すためにも、外へ目を向ける機会を持ってほしいと思っています。

石原 ゆり奈(いしはら ゆりな)
特定非営利活動法人 国際学校建設支援協会(ISSC)理事・2007年 文学部社会学科卒業
上智大学在学中に、ネパールのシュリ・クリシュナ小学校建設支援活動に参加。この時のメンバーを中心に2009年から本格的に途上国の学校建設支援活動をスタートし、2011年特定非営利活動法人国際学校建設支援協会設立。代表理事として大学生ボランティアの教育や組織運営にあたる。ネパールやラオスにも自ら赴き、現地の子どもたちや教師の支援を行っている。