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レンガ募金による1号館

現在の1号館
ブルーノ・ビッテルSJ

1号館は世界の人びとの善意による寄付金で建てられた

「今もなお、そのそばを通ると私の『煉瓦』もその中にあると思うときがある。」キリシタン研究で著名なドイツ人フーベルト・チースリク神父がこう懐古している。「そのそば」とは、1932年に竣工した1号館のことである。実は1号館は、赤煉瓦校舎のような「レンガ」造りの建物ではない。鉄筋コンクリート5階建て(地上4階、地下1階)の校舎である。では、なぜ私の『煉瓦』が1号館の中にあるのか。

1928年、上智大学は念願叶って大学令による大学昇格した。多数の学生を収容できる校舎が必要となり、その建築資金の調達のために海外で寄付を募ることとなった。この募金活動に東奔西走したのは、ドイツ人ブルーノ・ビッテル神父。募金事務所をドイツのケルンに置き、ドイツ国内だけでなく、オランダ、フランス、アメリカなどのカトリック教会・学校あてに寄付を呼びかける用紙を送付した。

寄付を呼びかける用紙

左の写真がドイツ語版の用紙である。関東大震災によって倒壊する前の赤煉瓦校舎が描かれ、その下に「ご援助いただけませんか?」で始まる文章と、1ライヒスマルクと書かれたレンガが25個、6段に積み重ねられている。用紙の文中には「1つでも2つでもあなたのお名前で埋めてください」と記されていて、各レンガには寄付を寄せてくれた人の署名がある。名もない人の善意に頼る寄付であり、同じ人の名前がいくつも見られたり、子供だとわかる筆跡で署名してあるもの、金額を1ライヒスマルク未満に書き直してあるものもある。この募金用紙は上智大学史資料室で大切に保管されていて、数えてみるとドイツからのレンガが最も多く19,375個、フランスからは400個、アメリカからは75個あった。

ピオ11世
「叙階記念日をお迎えする司祭、教皇ピウス十一世猊下に、5 マルク、敬意と愛をこめて東京のカトリック大学のために捧ぐ、フリードリヒ病院(ヴィリンゲン)のシスター一同、キリスト紀元1929年」と書かれている。

チースリク神父は「私はまだ14・15歳の中学生であったが、ある日私のクラスにもこのような用紙が飛び込んだ。そして私たちも皆わずかな小遣いから、一個のレンガを買った」と雑誌『聖心の使徒』に書いている(「ビッテル神父の思い出」)。ドイツのアデナウアー首相も、理工学部建設募金のためにドイツに赴いたルーメル理事長(当時)に「寄付の用紙を息子がもってきたことを記憶している」と、語ったという。

もう1人、1号館の建設に大きな影響を与えた人がいる。ローマ教皇ピオ11世である。教皇は、「上智大学の学舎建築のために拠金する親愛なる信徒諸氏に大いなる愛と父親としての感謝の念をこめて教皇祝福を与える」と、募金活動を支援した。募金用紙は2種類あって、ひとつは右の写真のものである。もうひとつはレンガ50個積み重ねられたもので、そこには「教皇様が東京にカトリック大学の新校舎を建設されますのでご援助ください。これは教皇様の切なる願いです。教皇様にささげるものは、キリストにささげるものとなります」と書かれている。ちなみに、この教皇あての献金はレンガ3,150個となった。

このように、1号館は全世界の人々に寄付を募り、その一人ひとりの善意による「レンガ募金」で建てられたのである。

1号館の歴史的な変遷

1号館は、1930年に定礎式が厳かに行われ、礎石には定礎証書、教授・学生の名簿、オコンネル枢機卿のメダル、新しい日本硬貨などが入れられた。竣工は1932年6月12日。竣工に先立って図書室へ32,000冊の図書の搬入、4月からは授業も行われていた。設計者はスイス人マックス・ヒンデル、建坪約4580平方メートルであった。落成式は6月12日から19日にかけて盛大に祝われ、記念式典、レコード演奏会、演劇、記念講演会、ゲーテについての講演や映画「ファウスト」の上映、新交響楽団による演奏会、山岳部・自動車部・新聞学科の展示なども行われた。式典ではローマ教皇使節も参加、海外からの招待客を含んだ国際色豊かな落成式であった。

定礎式でラテン語の定礎証書を読むホフマン学長

1号館は、第二次世界大戦中の東京大空襲を免れた本学で最も古い校舎である。竣工当時は、エレベーター付きの最新の設備とドイツ風の重厚な建築を誇っていた。1階には広い玄関や事務室、図書館や閲覧室などがあり、2階から4階には大小さまざまの教室があった。地下には、学生用食堂、浴室、更衣室のほか、作業室、機械室などが設置されていた。また西翼の2階・3階部分には多目的に使われていた講堂があり、戦前には入学式・卒業式などの式典、講演会、学生による演劇活動の場として使用され、戦後は、主に公開講座や一般教養科目の大教室として活用されてきた。1971年に体育館が竣工すると、式典の場は体育館に移行し、1号館講堂は学生の演劇活動の場として使用されるようになった。

1935年頃の1-403教室
多目的に使われた1号館講堂、約310人収容できた
1号館講堂は「上智小劇場」として学生の演劇活動で使用されている

21世紀のレンガ募金が行われている

2013年に創立100周年を迎えた上智大学は、国際的に評価される「世界に並び立つ大学」として、さらなる飛躍を遂げるため、募金活動に取り組んでいる。これを21世紀版の「レンガ募金」として位置づけ、これに応じる卒業生、国内外の善意の人びとも少なくない。