
デジタル世代の若者の一部に見られる「SNS疲れ」
総合マーケティング支援の(株)ネオマーケティングによる「若者の消費トレンドに関する調査」(※)結果が公表されました。「若者の○○離れ」という言葉が飛び交う昨今、実際に若者はどのようなことに興味を持ち、お金を使っているのでしょうか。
まずは、多くの若者の生活に密接している、SNSについての調査結果を見てみましょう。1日のうちSNSを利用している時間については、最も多かったのが「1日に1時間未満」で31.7%。一方で「1日に10時間以上」という回答も全体の2.0%を占めました。約2割を占めた「ほとんど利用していない」との回答者以外の人にSNSへの投稿内容を聞いてみたところ、最も多い回答は「自分の好きな体験」でした。
SNSをほとんど利用していないと回答した人(n=768)は、SNSについて「友人・知人の顔色をうかがっている気持ちがする」「『いいね!』の数が気になる」「SNSの世界だけでのやりとりは窮屈(きゅうくつ)さを感じる」「『いいね!』をもらったり、お返ししたりしなければならない気持ちになり面倒」などの項目について「そう思う」と答えた人が、すべて40%を超えていました。スマホなどのデジタルツールが普及している一方、SNSは「面倒」「窮屈」と感じている人も多いようです。
SNSをしている人(n=768)に対して、SNSに限らず(誰かの反応を気にせずに)自分の好きなことやよい経験となる体験をしたいと思うかを質問したところ、全体の75.8%が「そう思う」と回答しました。「誰かの反応を気にしなければならない環境」に息苦しさを感じている若者が多いようです。
※【調査概要】[1.調査の方法]株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したウェブアンケート方式で実施。[2.調査の対象]アイリサーチ登録モニターのうち、全国の18〜29歳の男女を対象に実施。[3.有効回答数]1,000人(男女各500人)[4.調査実施日]2017年6月30日〜7月3日
結果よりプロセスを求めたアナログ回帰も
では、SNS投稿者はどのようなものを好むのでしょうか。アナログ的な要素のある商品・サービスについて聞いてみたところ、「使ってみたい」と回答したのは全体の64.0%でした。物心がついたときからデジタル機器が身の回りにあふれていた世代も、アナログの要素を持つ商品やサービスに魅力を感じているようです。SNS利用別で比較すると、SNS投稿者のうち75.3%がアナログ要素のある商品・サービスを使ってみたいと回答し、一方でSNS非利用者は44.4%にとどまりました。
アナログ的な要素のある商品・サービスについて「使用・利用したい」と答えた人(n=640)に、具体的にどんなものを使ってみたいか聞いてみたところ、1位が「アナログ手帳」、2位が「手書きの手紙」で、書くという行為に興味が集まりました。ほかにも「本屋巡り」「銭湯」「インスタントカメラ」などが今の若者の興味をひいているようです。
なぜ、これらを使ってみたいのか聞いてみたところ、「プロセスが楽しいから」「手間を掛けることによって、味が出るから」「温かみがあるから」など、「らしさ」を色濃く反映した理由が多く挙げられました。

形に残るものよりも、心に残るものを欲する傾向に
独特な味わいを持った、温かみのある商品・サービスを求めている若者たち。彼らはどんなことに、積極的にお金を使いたいと思っているのでしょう。
この質問に対する回答で、最も多かったのは「思い出に残る体験(ライブイベントや旅行など)」。次いで「感動的な体験(ライブイベントや旅行など)」でした。SNS投稿者は、エモーショナルな経験にお金をかけたいと思う傾向にあるようです。日常の意識については「コミュニケーションは便利になったが、表層的な感じがすることがある」「人と人とのふれあいが少なくなっていると感じることがある」「寂しさを感じることがある」という回答が上位を占めています。日常で寂しさや無機質さを感じ、温かみのあるもの、感動や思い出が残る体験にひかれている人が多いようです。
アナログは新しい感動を呼ぶ「エモ体験」のトリガー
SNSの普及に伴い、多くの若者は「インスタ映え」を意識して消費する生活をベースにしている傾向にあります。しかし、一方で、そんな生活に疲れ、人の目を気にすることなく、のびのびと「心からよいと思えるもの」を消費したい、という願望を蓄積しているようです。その結果として、「年賀状」「手書きの手紙」などの非効率さに温かみを感じたり、アナログなものにストーリーを感じたり、面倒さのなかに達成感を見いだしたりしているのかもしれません。
近年、使い捨てカメラやカセットテープ、レコードなどが流行したのは、記憶に新しいところです。これらの商品の本質的な機能はすべて、手のひらのなかにあるスマートフォンの操作一つでまかなえるはずなのに、若者はアナログなものに興味を示し、実際に消費もしています。フィルムを巻く、テープの頭出しをする、盤面に針を落とす。親世代には身近だったこれらの行為が、子ども世代にはまったく新たな輝きを伴って映るのでしょう。
「アナログ」と「エモーショナル」。いま、この二つのキーワードが若者世代を突き動かしているのです。