「学ぶ」から「考える」へ 金融教育の未来に向かって

【第1回】金融はニートを防げるか

START!編集部

日本銀行・金融広報中央委員会が「金融教育元年」と位置づけたのは2005年のことでした。金融機関が破たんしても預金が全額返金されないペイオフが解禁され、自分のお金を自分で守ることが必要になる。そのような背景があったようです。そこから10年以上が経ち、これからの金融教育はどこへ向かっていくのでしょうか。さまざまな事例を通して金融教育の未来を考えていきます。

ニート予防を目指すプログラム「Money Connection®」

若者がニートになる理由の一つに、お金に関する知識や金銭感覚の欠如が挙げられるそうです。新生銀行(http://www.shinseibank.com/)とNPO法人育て上げネット(https://www.sodateage.net/)はここに着目し、高校生向けの金銭基礎教育プログラム「MoneyConnection®」を共同で開発しました。お金の基礎を知ることで自分の進路や将来の生活を考えるきっかけを見つける、そんな内容の授業を全国で展開しています。

2007年から本格的に事業を開始したこのプログラムは、すでに全国で約900校、12万人の生徒が受講しています。内容は大きく2つ。働くこととお金について考える「稼ぐ」編と、モノの価値とお金について考える「使う」編です。

(NPO法人育て上げネット提供)

「5万くらいかな」「10万くらいじゃない?」
生徒たちが話し合って考えているテーマは、「一人暮らしをするのにどれくらいお金がかかるか」です。稼ぐ編の冒頭では、まずこの一人暮らしの生活費予想をします。家賃、光熱費、食費、通信費、税金…。生徒はそれぞれに予想金額を記入していきます。

「合計すると、平均で184,420円くらい1ヶ月にかかります」
「えーーーー」
講師役のファシリテーターが平均額を伝えると、生徒からは驚きの声が上がります。所得税や住民税、国民年金など、高校生が普段あまり意識することのない項目は、想像して記入するのもなかなか難しいようです。

他にも年収や職業、雇用形態などを記したカードを使いゲーム形式で働き方について考えるワークや、「必要なモノ」と「あった方がいいモノ」から自分の価値観を考えるシミュレーションなど、いずれのプログラムも楽しみながら生徒たちの「気づき」を引き出す内容になっています。

ファシリテーターとして登録されている講師は約120人おり、キャリアカウンセラー、FP、元教員、広告会社勤務、主婦など多岐にわたります。新生銀行グループの社員もボランティアで多数参加しているそうです。講師に対しては、事務局が感想を授業後にフィードバックするほか、勉強会や研修を通して対象の高校生をしっかりと理解し、よりよい内容にするためブラッシュアップしています。

定時制高校での授業にも力を入れています。東京都、埼玉県の約7割の定時制高校で本プログラムの実施実績があるそうです。「生きていくためのお金のことをもっと知っていたら、違う選択肢があったのに…」、このプログラムを始めるきっかけとなったそんな声を少しでも減らすために、ニートを防ぐ一つのきっかけとして取り組んでいるそうです。

初回は無料で実施、2回目以降は実施費用を学校側が負担という条件なのですが、約7割の学校が複数回実施しているとのこと。生徒と先生の満足度が極めて高いことがわかります。また、紀陽銀行や福井銀行、岩手銀行など地方銀行と共同での取り組みも始まっています。

同プログラムを進めるNPO法人育て上げネットは、「若者と社会をつなぐ」を理念として、若者の就労支援活動を続けているそうです。若年層(15~39歳)の16人に1人は無業で、ちょっとしたボタンの掛け違いやつまずきから誰でも若年無業つまりニートになる可能性があるとのこと。働きたいけど働けない状態になって社会から孤立している若者をいかに防ぐかに力を入れています。
「MoneyConnection®」もまさに予防的な活動で、投資や経済といった一般的な金融教育とは全く異なるアプローチでの金融基礎教育を進めています。

それでも、まだまだ課題は多いと同NPO理事の深谷友美子さんは話します。
「講師が高校生にとっていい”兄貴分”であるためには、いかにジェネレーションギャップを埋めるかが大事。少しでも講師に若い人が増えることがこれからのわれわれの課題です」。同NPOでは定期的に講師養成講座を開いています。詳細はhttp://moneyconnection.jp/lecturer/を参照ください。

進学や就職など人生の大きな選択肢を迫られる高校時代に、お金に対する新しい「気づき」を与えるプログラム。このような授業がすべての学校で普通に体験できる社会が来ると、日本人のお金に対する考え方は大きく変わるかもしれません。

次回は「被災地と生涯投資家」です。

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