柴山さん、お金のキーワード、分かりやすく教えてください!

いくらから資産運用を始めればいいですか?(前編)

ウェルスナビ 代表取締役CEO柴山 和久

財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年に全自動の資産運用サービス「WealthNavi」を提供するスタートアップ、ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。本連載では、"お金のプロ"である柴山さんに、お金や資産運用にまつわるトピックをわかりやすく教えてもらいます。


私が代表を務めるウェルスナビでは、これまでに資産運用セミナーを70回以上開催してきました。セミナーのQ&Aのコーナーでよく挙がるのが、「いくらから始めればいいですか?」という質問です。今回は、「長期・積立・分散」の資産運用をいくらから始めるべきかについてお伝えします。

アメリカ人はなぜ資産のほとんどを資産運用にまわすのか

私が理想だと考えるのは、月収の3~4カ月を手元に残しておき、残りの余裕資金(当面使わないお金)をすべて「長期・積立・分散」の資産運用にまわすという方法です。つまり、預金として置いておくお金は資産のごく一部になります。

これは、資産運用がさかんなアメリカではよくあるパターンです。

イメージしやすいよう、あえてシンプルにお伝えすると、アメリカでは給料が入ってくると、住宅ローンと生活費、教育費を支払って残ったお金をすべて資産運用にまわします。ただし、給料の3~4カ月分は、急に必要になったときに備えて、手元に置いておきます。アメリカに住んでいる私の義理の両親も若いときからずっとそうしてきました。

国や企業のサポートはいつまで続く?

こうしたパターンが多いのは、アメリカでは「老後の生活は、国や会社に頼り切らず、自分自身で設計しよう」と考える人が多いからです。

日本はこれまで、国や企業が、年金や退職金で老後をサポートしてくれました。しかし、厚生労働省によれば、大企業の退職金は年に約2.5%ずつ減っています。

このペースが続くといま40歳前後の方が定年を迎えるころには、大企業でさえ退職金が平均1000万円を切ってしまいます。最近では退職金制度がない会社も増えており、年金の受給額も減る可能性があります。

現預金の比率がずば抜けて高い日本

日本ではまだ資産運用をしていない人が多く、個人の金融資産が、現金や銀行預金に偏っています。反対に、アメリカでは現預金の比率が低く、資産の多くが老後に備えて運用されています。さらに、社会保障制度が充実しているフランスやドイツでも、現預金の比率は日本より低くなっています。

資産運用に対して保守的だったドイツですが、ここ最近、現預金の比率が4割弱まで下がってきました。少子高齢化から社会保障への不安が広がり、資産運用で将来に備えるという流れができてきたのでしょう。

同じく少子高齢化が進む日本でも、今後、フランスやドイツのようにバランスの取れた資産構成になっていくでしょう。

あきらめずに続けられる金額はいくら?

資産運用をするときに押さえるべきは、「長期・積立・分散」が基本であるということです。「長期・積立・分散」の資産運用では、リスクを抑えながら資産を育てます。それに慣れてきたら、よりリスクの高いテーマ投資や個別の株式などへ広げていくのもいいでしょう。

「長期・積立・分散」の資産運用はいくらから始めればよいのでしょうか。この問いの答えは、以下の3点を考えれば、自然と導かれます(答えは一つではありません)。

  • (1)いつまでに、どのくらいの資産を築きたいか(目標)
  • (2)いくらで資産運用を始めるか
  • (3)毎月、どのくらい資産運用に回せるか(積立)

(1)目標を実現するために、(2)と(3)をどのように組み合わせるかについては、何パターンも答えがあります。どのパターンでいちばんよいリターンが得られるかは事前にはわかりません。運用資金を最初から一括で入金すると、スタート時の株価や金利、為替の影響を受けやすくなります。その点、積立を中心にすると一括で入金するよりリスクを抑えることができます。

一方で、積立を中心にすると、目標金額に達するまでに時間がかかるかもしれません。もし1万円で資産運用をスタートし、月に1万円ずつ積み立てていくと、元本が100万円を超えるまでに8年以上かかってしまいます。長く続けたとしても、「将来に備える」という目標を達成できない可能性もあります。

つまり、「これが正解だ」と断言できるような答えはないのです。そして、本当に大切な問いは、(1)~(3)のどれでもありません。「いくらからスタートして、いくら積立をするのであれば、資産運用を途中であきらめずに続けられそうか」。これがいちばん大切な問いです。

大切なのは「続ける」こと

「長期・積立・分散」の資産運用は、「続ける」ことが肝心です。資産運用を始めたばかりのときは、リターンがプラスとマイナスを行き来することが多いので、一喜一憂しがちです。もし無理をして、許容範囲を超えた金額で始めると、相場のいい・悪いに一喜一憂し、資産運用をやめてしまうかもしれません。

アメリカ人が資産のほとんどを資産運用にまわしているといっても、それは彼らが置かれた環境で、彼らなりに工夫してきた結果です。あくまで有益な参考情報であるというだけで、そのままご自身に当てはめる必要もありません。

「いくらからスタートして、いくら積立をするのであれば、資産運用を途中であきらめずに続けられそうか」。この問いの答えを、ぜひご自身で見つけ出してください。

ご参考までに、ロボアドバイザー(※1)「WealthNavi(ウェルスナビ)」のユーザー約6万人の平均を取ると、「最初に52.7万円を入金し、月々3.3万円ずつ自動積立をする」という方法が見えてきます(※2)。ウェルスナビの90%以上のユーザーは、20~50代の働く世代です。

ご自身に近いモデルケースからイメージしていただけるよう、次回のコラムでは、いくつかの事例をもとに、具体的なアドバイスをお伝えします。

※1ロボアドバイザーは、全自動で「長期・積立・分散」の資産運用を行うサービス。日本では2017年が「ロボアドバイザー元年」とされており、18年末時点で、大手4社の預かり資産が1000億円を超えた。
※2 初回入金額とは、新規に資産運用を開始した時点での総入金額。2017年11月1日~2018年2月28日に資産運用を開始した「WealthNavi」のユーザーを対象に算出。千円未満は切り捨て。

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