今さら聞けない!保険の基本

死亡率が下がると保険料は上がる? 下がる?

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 研究員加藤 梨里

各保険会社の生命保険料が2018年4月から一部改定されました。保険の種類や保険会社、契約する年齢によって異なりますが、おおまかな傾向としては、万が一のときに保険金が支払われる「死亡保険」は値下げ、病気など生きている間のリスクに備える「医療保険」は若干の値上げ傾向にあります。

こうした保険料の改定は、死亡率など社会の状況が変わったことによるものです。

では、死亡率が変わると、保険料はどのように変わるのでしょうか? 今回は、死亡率と保険料の関係を知っておきましょう。

標準生命表ってなに?

生命保険の保険料は、予定死亡率、予定利率、予定事業費率の三つをもとに算定されます。4月に多くの保険会社で保険料が改定されたのは、おもに「予定死亡率」に関わる統計データが更新されたことが理由です。そのデータが「標準生命表」です。

標準生命表は、男女別に全年齢の死亡率をまとめた一覧表です。死亡率の算出根拠として、年度の初めの生存数、年度中の死亡数も併記されています。たとえば、0歳児の生存数が10万人、死亡数が81人のときの死亡率は0.00081、つまり0.081%になります。このように計算された死亡率をもとに、保険会社は契約者からいくら保険料を受け取れば、被保険者が亡くなったときに支払う保険金をまかなえるか? を検討します。

すべての保険会社は、あらゆる保険商品の保険料の設定に、この標準生命表を用いています。ですから、性別、年齢、保険金額、保険期間などの条件が同じならば、基本的には保険料は同じになるはずです。ただし、保険料には原価にあたる純保険料部分のほかに、保険会社の経費やもうけにあたる付加保険料部分があります。標準生命表をもとに設定される予定死亡率は純保険料部分の算定に使われ、付加保険料部分は保険会社によって計算根拠が異なります。同じ人が同じ条件の保険に入ろうとしたとき、保険会社によって保険料が違うのは、付加保険料部分の影響が大きいと考えられます。

死亡率が下がると保険料は上がる? 下がる?

保険会社は、契約者から受け取った保険料の一部を、将来の保険金や給付金の支払いに備えて管理・運用しています。これを「責任準備金」といいます。いざ保険に加入していた人が亡くなって保険金を支払うときに、金額が足りるよう責任準備金を用意するためには、保険に加入している人のうち何人が亡くなるかを、できるだけ正確に見込んでおかねばなりません。そこで、標準生命表の死亡率を用います。標準生命表は、各保険会社の加入者内での死亡率や、厚生労働省が国勢調査などのデータから作成する完全生命表をもとに作られ、約10年ごとに改定されています。医療の進歩による死亡率の低下といった、状況の変化に合わせて改定することで、より適切な保険料を設定できるようになっています。

死亡率が高ければ亡くなる人が多く、その保険金に充てる多くの責任準備金を準備しておかねばなりません。契約している人に払ってもらう保険料も、高く設定することになります。逆に、同じ人数が加入すると仮定したとき、その集団の死亡率が低ければ、保険金を支払う対象者が少ない分、1人当たりが支払う保険料を安く設定できます。

このように、死亡によって保険会社が保険金を支払うタイプの保険料は、死亡率が高ければ高くなり、死亡率が低ければ安くなる傾向にあります。実際に、2018年4月から適用された標準生命表でも、従来に比べて広い年齢層で死亡率が下がったために、多くの保険会社は定期保険や終身保険など死亡に関わる保険の保険料を引き下げました(ただし、年齢や性別、契約内容によって異なります)。

医療保険にも死亡率は影響する?

医療保険や就業不能保険など生きている間のリスクに備える保険でも、多くは標準生命表のデータが用いられます。ただし、病気になったとき、手術を受けたとき、仕事ができなくなったときなど、給付金を受け取る条件がさまざまなため、保険に加入している人のうち何人に、どれくらいのお金を支払うか? の算出方法は、死亡保険とは異なります。このため、標準生命表も死亡保険とは異なる「第3分野用」というデータがもとになります。保険会社が独自のデータを参照することもあります。

今回の標準生命表の改定によって、医療保険の一部でも保険料が改定されました。しかし、値下がりが目立った死亡保険とは異なり、医療保険は保険料がほとんど変わらないか、若干ながら逆に値上がりしたものもあります(年齢や性別、契約内容によって異なります)。その要因のひとつは、死亡保険と医療保険では参照されるデータが違うことが考えられます。

もうひとつ、予定利率が下がったことも、理由に挙げられます。予定利率とは、将来の保険金の支払いまでに、保険会社が資産運用によって得られる利益を見込んだ数字です。その利益の分、契約者から支払ってもらう保険料を割り引くことができます。予定利率は各保険会社が設定するものですが、その水準は金融庁が定める「標準利率」がもとになります。標準利率は2017年4月に引き下げられ、その影響で、医療保険などの中には今回、予定利率が下がったものもあります。その結果、保険料が上がったものがあるようです。

実際の個別商品の保険料は、死亡率や標準利率の影響だけでなく、保険会社のコスト削減などさまざまな調整を経て決まります。また、今回の改定で保険料が変わるのは、4月以降に新たに加入する人が中心です。保険会社によっては、すでに加入している保険を更新する時に、新しい保険料が適用される場合があります。ご自身やご家族の保険に影響があるか、一度確かめてみると安心ですね。

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