お金を呼ぶ教養塾

【第17回】率と絶対値の違いをマスターする

経済評論家加谷 珪一

前回はお金と仲良くなるためには数字に強くなることが重要という話をしました。今回は、数字に強くなるための具体的なコツについて説明します。

数字を見る時にもっとも注意すべきなのは、率と絶対値の違いを区別することです。人は、数字を見る時、率と絶対値を混同してしまいます。これが判断を間違う最大の理由であり、逆にいえば、ここさえマスターできれば、数字を怖がる必要はありません。

ここに、以下の説明があったとしましょう。あなたはどのような印象を持つでしょうか。

「A社の売上高成長率は年々鈍化しており、今年度は2%にとどまりました。5年前と比較すると5分の1です」

もしこの説明文を見て、A社が衰退し、売上高が毎年マイナスになっていると感じるようなら、数字の感覚はまだまだです。この説明文が指摘しているのは成長率であって売上高の絶対値ではありません。

成長率は5年前との比較で5分の1になって2%となったわけですから、5年前には10%の成長率があったということになります。下がったのはあくまで成長率であって、成長は続いているわけですから絶対値は伸びているということに気付かなければなりません。

5年前の成長率が10%で、毎年、一定割合ずつ成長率が下がっていると仮定すれば、5年間で売上高は約1.3倍に増えた計算です。確かに成長率は鈍化していますが、5年で売上高が1.3倍になる会社と聞けば、それなりに成長していると思うのではないでしょうか。

1000万円の資産が毎年10%ずつ増加することと、毎年100万円ずつ増加することの違いにも同じような仕組みが隠されています。

1000万円の10%は100万円ですから、両者にはあまり違いがないように見えますが、前者は次の年には1100万円に10%が適用されることになり、増加のペースが加速していきます。一方、後者はずっと100万円ずつ増えるだけです。前者は7年が経過すると資産が2倍に膨れあがっていますが、後者は7年後に1.7倍にしかなっていません。

このような率と絶対値を使った数字のマジックはあちこちに見られます。お金持ちになるためには、率と絶対値のマジックにだまされないようにしなければいけません。

※写真はイメージです。

例えば年利1%の半年定期預金があるとします。この定期を申し込み、100万円を預けたと仮定しましょう。読者の皆さんの中には、半年後に満期で戻ってくるお金は101万円になると思った人がいるかもしれませんが、実は違います。
この商品の金利は年で1%ですから、半年で1%の金利が付くわけではありません。実際に半年後に戻ってくるお金の額は100万円と5000円です。

この違いが分かった人は、利率についてよく理解しているといってよいでしょう。では、このような人であれば、有利な定期預金を探すことで、お金持ちになれるのでしょうか。残念ながら答えはノーです。

実は数字の感覚というものを持っている人であれば、銀行預金だけに偏ることは、あまり合理的な選択とはいえないということも分かるはずだからです。

銀行の預金が得なのかどうかは資産の額によって大きく変わってきます。

例えば、資産が10億円の人にとっては、金利1%の定期預金を選択するのは非常に合理的なことです。10億円あれば銀行に預けるだけで1000万円の利子がもらえます。ぜいたくをしなければという条件付きですが、1000万円あれば、余裕で暮らしていけるでしょう。

しかも、これくらいの資産額になれば、人にもよりますが、お金を増やすことよりも守ることの方がずっと大事になります。どんなに利子が低く、もうからない商品であっても、安全な銀行預金の魅力は大きいと思われます。

しかし、100万円しか資産のない人にとって銀行預金は必ずしも合理的な選択とはいえません。一生懸命有利な金利を探して定期預金に預けたところで1年で数千円から1万円しかお金は増えないのです。「チリも積もれば山となる」という例えがありますが、それが意味をなすのはチリの絶対量が多い時だけです。

筆者は預金を全否定したいわけではありませんが、お金を増やそうと思っているなら、預金だけでは不十分なことは、数字の感覚があれば明らかでしょう。

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