ダジャレ好きアナウンサー安田真理の「経済talk いっトーク⁉」

【第2回】「市場」には私情も

フリーアナウンサー安田 真理

私もついに40歳。友人のことばを借りれば、アラフォーならぬ「ピタフォー(ぴったりフォーティー・40)」の女性アナウンサーです。最近は「女子アナ30歳定年説」なるものが聞かれなくなってよかった。「女子アナ」が死語になりつつあることに加えて、ジェンダー論が注目されるようになってきたからかなぁ。

そう思いながら、「女子アナ」をキーワードにネット検索。思いのほか「女子アナランキング」や「女子アナニュース」といったサイトがいくつも出てくるではありませんか。絶滅危惧種かと思われた女子アナは、すくなくともネットの世界では生き延びている様子が見てとれます。

とはいえ「ピタフォー」ともなれば、もう女子アナにはカウントされないでしょう⁉つぎに「女子アナかわいいランキング2018」というサイトをチェック。するとどうでしょう!こちらも予想に反して「アラフィフ(アラウンド50)」の有働由美子さん(元NHK)や木下容子さん(テレビ朝日)も20位以内にランクイン。幅広い年齢層の女性アナウンサーが上位に名を連ねていました。

そこで、ここでは私を含むすべての女性アナウンサーを「女子アナ」と呼ぶことにしましょう(女性アナウンサーのタレント化、ならびに「女子アナ」という呼称を批判してきた元TBSの吉川美代子さんを悲しませるでしょうけれども)。

女子アナには放送局に在籍する「局アナ」もいれば、私のようにプロダクション所属のいわゆるフリーアナウンサーもいます。フリーの人たちは主にオーディションを突破しながら、ひとつずつ仕事を獲得していきます。なかなか弱肉強食の世界です。この世界では、商品としての女子アナに適正価格がつけられます。実際に日本の芸能界では、タレントたちは「商品」とも呼ばれています。女子アナも例外ではありません。この点に注目すれば、そこにはたしかに「女子アナ市場」が形成されているといえます。

2018年9月5日放送のSTOCK VOICE TV『ワールドマーケッツ』より

「シジョウ」と「イチバ」

市場という単語には、「シジョウ」と「イチバ」という二つの読み方があります。なぜでしょうか?経済学者の間宮陽介さんは著書『市場社会の思想史』のなかで、「イチバ」は、並べられた商品を売買する人びとのにぎわいを連想させる<具体的な場所>であるのに対し、「シジョウ」は、投資する参加者によって株価が決まっていく株式市場のように<抽象的な場所>である、と述べています。

たしかに「イチバ」と聞くと具体的な場所が思い浮かびます。私のふるさと金沢にも「近江町市場(おうみちょういちば)」があります。10年ほど前に近代的なビルへと建て替えられるまでは平屋建てのアーケード街で、販売者と客の距離が物理的にも心理的にも近く、値段交渉が活発に行われていました。
「あら、もう少しお安くならないの?三つで千円なら買うわよ〜!オホホ」。強引なやりとりを楽しむ母の姿を横目に、穴があったら入りたいと思ったものです。あれから30年。反面教師にしようとした抵抗もむなしく、しっかり母の血を受け継いでいる自分に気づかされます。

一方、「シジョウ」と聞いてパッと思い浮かぶのは、為替市場や株式市場のような「金融市場」ではないでしょうか。そこでは、イチバと違って金融商品を売買している人たちの顔がよく見えません。いまではほとんどの取引情報が電子化され、時間や場所を超えて金融商品が売買されているのでなおさらです。間宮さんの指摘どおり、金融シジョウは<抽象的な場所>のようにみえます。

金沢の台所、近江町市場

築地イチバ⁉

他方で、イチバとシジョウという二つの概念を完全に切り分けるのは難しいとする考えもあります。東京大学教授の安冨歩さんは著書『生きるための経済学』のなかで、シジョウと読まれる築地市場や為替市場、インターネット市場に見いだされる「場所性」や、生身の人間がやりとりする「人間的」な側面に注目し、それらはたんなる「抽象的な需要と供給が出合う場所」とは言いがたいと指摘しています。

人が介在しなくてもさまざまな取引が成立する、便利すぎる社会になりました。しかし、人と人の心が触れ合う温もりのない世界はなんとも味気ないものです。公的空間のようである抽象的なシジョウであっても、そこから「私情」がいっさい消えてなくなることはないのかもしれませんね。

昨年10月、83年間にわたって人びとに愛された築地市場は営業を終了し、その役割を豊洲市場にバトンタッチしました。いくつかの課題を抱えながらも開場した豊洲市場ですが、人の温かさが残るイチバらしさも引き継がれていくことをイチバンに期待しています!

参考文献:間宮陽介(1999)『市場社会の思想史』中公新書、安冨歩(2008)『生きるための経済学』NHKブックス。

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