SDGsで未来を拓く

~新しい社会モデルが未来を変える、新しい金融モデルが未来を創る~

西川 浩 氏
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(JRTT)理事

林 宏明 氏
富国生命投資顧問 常務取締役

嶋﨑 良伸 氏
滋賀銀行 総合企画部広報室長
兼 CSR室長

及川 智明 氏
みずほ銀行 ストラクチャリング
第一部長

香月 康伸 氏
[モデレーター]みずほ証券
シニアプライマリーアナリスト

交通ネットワークの整備を通じたSDGsへの貢献

鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)
理事長 北村 隆志 氏

私たちJRTTの取り組みは①鉄道施設の建設②船舶共有建造③旧国鉄の資産処分・年金支払い④地域公共交通への出資⑤鉄道整備支援の五つ。鉄道や船舶は、自動車と比べてはるかに二酸化炭素の排出量が少なく、気候変動とその影響の軽減に貢献します。

皆さんにとって特に身近なのが鉄道ですが、JR発足以降に造られた北陸新幹線・九州新幹線・北海道新幹線などは「整備新幹線」と呼ばれるもので、JRTTが整備し、完成したものをJR各社に貸しています。縁の下の力持ちですね。都市鉄道においては、現在は神奈川東部方面線という、相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線の工事を進めています。これが実現すると都心部へのアクセスが格段にアップします。

新幹線に代表される鉄道インフラで各地の主要都市を結ぶことは、人の流動性を高め、新たな雇用や産業を生み出す〝地域の起爆剤〞になりえます。また、船舶は物流効率化や離島航路の維持発展に貢献します。住み続けられるまちづくり、産業基盤の形成、経済成長など、SDGsの理念に沿った事業活動だといえます。

JRTTは2017年度に独立行政法人初のグリーンボンド(環境改善に貢献する事業の債券)を発行しました。19年1月には国際的な第三者評価機関DNV GLから「サステナビリティファイナンス」の検証を受け、環境改善効果については、低炭素経済に向けた大規模投資を促進する国際NGO「CBI(※)」から国内初の認証を受けました。今後もサステナビリティファイナンスやSDGs関連の取り組みにご注目ください。

※CBI=Climate Bonds Initiative、気候債券イニシアチブ

日本のSDGs実現に向けた金融及びみずほの役割

みずほ証券 専務執行役員 浜西 泰人 氏

みずほ証券のSDGsにおける役割は、企業の財務諸表にあらわれない本質的な企業価値を投資家に伝え、SDGsの目標実現のお手伝いをすることです。これまで企業の環境対策や社会貢献などの取り組みは企業価値と同一視されず、アピールしづらいものでした。しかしSDGsが採択され、共通の枠組みと目標が提起されたことで、これらについて投資家を含むステークホルダー(利害関係者)との対話が深まりました。

利回りやリターンを優先する傾向にあった投資家たちも今は、社会への取り組みを含めたトータルの企業価値を見ています。SDGsにコミットした企業は長期的な成長が見込めると考え、短期的な投資判断から中長期的な投資判断へシフトしつつあります。こういった変化を企業、投資家の双方に伝えるのも、証券会社の大切な役割です。

また、みずほ証券ではグリーンボンド、ソーシャルボンド(社会に貢献する事業の債券)、サステナビリティボンド(環境・社会の持続可能性に貢献する債券)など、資金の用途を環境問題や社会問題の解決に限定して発行する「SDGs債」を扱っています。

SDGs債の発行実績(※)は16年度に約500億円だったものが、18年度には約4641億円になりました。資金の使い道が明確で、企業と投資家が同じ方向を向いて社会貢献できるSDGs債市場の拡大を、単なるブームや表面的な動きで終わらせないことも、私たちの使命だと考えています。

※国内発行体による国内公募SDGs債の発行実績

SDGsで自分を変える、未来が変わる

博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室
CSRグループ推進担当部長 川廷 昌弘 氏

国連のSDGs採択文書のタイトルが「Transforming our world(我々の世界を変革する)」なのはご存じですか。過去に国連本部が「Transforming(変革)」という言葉を使ったのは、第2次世界大戦後や世界恐慌など、世界が大きな危機に直面しているときだけです。それがタイトルに使われていることから、この文書の重要性が伝わってきます。

二宮尊徳の「道徳を忘れた経済は罪悪、経済を忘れた道徳は寝言」の言葉に代表されるように、日本では昔から経営と社会責任の密接な関係が説かれてきました。企業がSDGsのゴールを目標に長期的ビジョンを持ち、その企業を投資家が後押しするという関係性の構築こそ、国連が期待するところであり、今後の経済のあるべき姿といえます。

SDGsの17のゴールは、どれもきれいごとのように見えます。しかし、きれいごとで考え行動する世の中を構築し、質の高いバトンを次世代に渡すことが、私たちが今するべき「Transforming」なのです。

SDGs達成に向けた金融市場のチャレンジ

香月 SDGsの目標を30年までに達成しようとすると、世界で年間5兆〜7兆㌦の資金が必要になるといわれています。政府が拠出できる財源は世界で年間計1兆㌦程度なので、SDGsのゴール達成には民間の資金を調達することがとても重要になってきます。ここではそれぞれの立場から、SDGsに関連する金融業界の最近の流れについて、ご意見をいただきます。

 投資家の立場としては、SDGsの概念がない頃から、社会的な課題に取り組んでいる企業や組織は必然的にサステナブルなポジションを有すると考えていたので、とても好ましい流れだと考えています。ただ、現在の日本にはSDGsに直接リンクする投資案件が非常に少ない。1400年以上の歴史を持つ企業があるなど、サステナブルな社会構造を持っている日本で、今後この流れが拡大してほしいと思います。

西川 2017年度に神奈川東部方面線の建設資金調達のためグリーンボンドを発行した際、多くの投資家から継続発行のご要望をいただきました。JRTTの手掛ける鉄道建設や船舶建造という事業は環境面だけでなく、国民生活に必要不可欠なインフラ整備という点で社会貢献、つまりソーシャル性も兼ね備えており、SDGsとの親和性も高い。投資家の皆様に安心して購入していただくために世界最高水準の第三者認証を受けたサステナビリティボンドを発行すべく検討し、CBIのプログラム認証(一度の認証で継続的な債券発行が可能となる制度)をアジアで初めて受けることができました。グリーン性とソーシャル性を併せ持つサステナビリティボンドの発行を通じて、JRTTが我が国のESG債(※)市場拡大に貢献できればと思っています。

嶋﨑 滋賀県は売り手によし、買い手によし、世間によしの「三方よし」で知られる近江商人発祥の地であり、この精神が根付いています。加えて、近畿で暮らす人々の水源である琵琶湖の守り手であると自負しているため、環境意識がとても高い。このような県民性から、SDGsとの親和性がとても高いと考えています。滋賀県は現在、介護従事者や事業継承者の不足など、地方が抱える問題に直面しています。しかし、SDGsの目標実現に必要な莫大な資金を地方に呼び込み活用すれば、地域経済の創造、地球環境の持続性、人材の確保や育成などの課題が解決できる。新たな課題に対して新たな投資が生まれ、そこに産業が育ち、人が集まるという観点を持ち、地方もしっかり取り組まなければならないと思います。

及川 いま金融業界がやらなければいけないことは、業界全体がSDGsに対して本気で取り組んでいることをアピールすることです。全国銀行協会が18年度の活動方針を「社会的課題の解決に貢献する一年」と打ち出したのは、その象徴ともいえるでしょう。行動憲章においても、社会的課題への対応、人権の尊重、気候変動への対応が明記され、SDGsの理念が盛り込まれました。銀行も企業ではありますが、お金を融資する立場でもあり、融資した資金が社会のために使われているかどうかをチェックすることは、銀行が負う責任でもあります。ですから融資におけるポリシーやお客様への提案がSDGsの理念に合致しているか、行員一人ひとりが判断できるようになるのかが今後の重要な課題だと思います。世のため、人のためになる事業が評価される時代になってきています。いち行員としてその流れに寄り添い、貢献したいと考えています。

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