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03月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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映画『天空の蜂』公開直前 堤幸彦監督×秦 基博さん スペシャル対談

作家・東野圭吾氏が20年前に発表したサスペンス巨編を完全映画化!『天空の蜂』に刺激された表現者たちの熱い挑戦がここに結実
天空の蜂
映画『天空の蜂』トレーラー
STORY
20年前、作家としての飛躍を目指した東野圭吾最大の勝負作『天空の蜂』。史上最悪の原発テロに迫るクライシスサスペンスを堤幸彦監督が完全映画化し、9月12日(土)から公開となる。今回は堤監督と、主題歌を書き下ろしたシンガー・ソングライター秦 基博さんによるスペシャル対談を実現。本作との出合いによってそれぞれどんな刺激を受け、何を表現しようとしたのか、語り合っていただいた。
秦 基博 堤 幸彦監督

原発、テロ、災害に直面する今の日本に必要な作品

秦 基博

秦 基博さん シンガー・ソングライター

1980 年宮崎県生まれ。2014 年映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌として書き下ろした「ひまわりの約束」が大ヒット。15 年6月「水彩の月」は映画『あん』の主題歌に。本作の主題歌「Q&A」は9月9日(水)リリース。

「運命に抗う人の姿に感銘を受け 心に突き刺さるものを音にしました」

 映画『天空の蜂』を観てあまりのスケールの大きさ、スピード感、臨場感に目を奪われました。

 ありがとうございます。原作は20年前、東野圭吾先生が書かれた小説です。映画化にあたり、原作にとことん向き合いました。原発、テロ、災害といった様々な社会的な問題をはらんでいて、かつ親子や人の生き様などヒューマンストーリーとしての要素もある。今の時代に絶対必要な作品だと思いました。とは言え、決してプロパガンダにしてはいけない。息もつかせぬ勢いを心底楽しんでいるうちに、気づいたらいろんなことを意識している、そんな普遍的なエンタメ作品を目指しました。

 僕には主題歌を書くという使命があったので、この映画から何をすくい取るか、自分と共鳴し合う部分は何かをすごく意識しながら観させていただきました。観終わった後に、この作品のテーマにどこか傍観者である自分を省みながら「で、僕はどうするんだ?」という問いかけが残りました。

 時代と共に日本人の価値観が大きく変化する中で、結構大事なことを見逃してきたツケが3・11の時の原発問題です。あの風景を見た日本人は今後、何を選択してどう生きるべきなのか。「沈黙する群衆」にそこを意識してほしい。そんな本作で伝えたかったことを秦さんの作ってくれた主題歌「Q&A」は表現してくれた。見事に射抜かれました。

 『天空の蜂』という映画のメッセージ性、余韻として残ったものなどからインスパイアされ、いつになくアグレッシブな曲に仕上がりました。「この手は人を傷つけるためにあるのか、守るためにあるのか」という歌詞が出てきます。「守るため」と誰しもが思いますよね。でも、実際にはそうなっていない現実もある。分かっているのにそうならないところに人間の矛盾、業みたいなものがあると思うのですが、でも、それを分かった上で何を選択するのか。あなたも僕も手を差し出すことはできるのかという問いを投げかけた曲です。

 秦さんは言葉のセンスが絶妙です。僕は60歳ですが、20代で秦さんの曲に出合いたかった。今以上に人生に大きな影響を与えられたはず。それだけ秦さんの曲には人の心に刺さる何かがあります。

 この曲に関しては、映画の力も実は大きくて、これだけ熱量の高い作品のラストにふさわしい曲として自分に何が言えるのか。どういうリアリティーが込められるのかというプレッシャーがあったからこそ生み出すことができたのだと思っています。

堤 幸彦監督

堤 幸彦監督 映画監督

1955年生まれ、愛知県出身。『20世紀少年』シリーズ、『BECK』『エイトレンジャー』などエンターテインメント作品を数多く手がける一方、『明日の記憶』『MY HOUSE』『くちづけ』『悼む人』など社会派作品も意欲的に発表。

「この作品でようやく映画監督に なれた気がします」

役者の力、音の力を信じ集大成のつもりで製作

 いくつもの社会的な問題を一つの作品で表現していく上で、多くのご苦労があったと思います。

 私は文系なので、理工学的な専門知識を小学生レベルから学ぶ必要がありました。「そもそも原発とは何なのか」「ヘリコプターってなぜ飛ぶのか」と。基本を押さえていないと、作中の彼らがどんな危機に直面しているのかを臨場感をもって描けませんからね。その辺りの膨大な事前調査が一番大変でした。ただ、幸いにもスタッフが優秀で、迅速に動いて情報収集に努めてくれたので助かりました。

 役者の方々の力も大きいですよね。どの人にもそれぞれのオーラがあるというか、登場人物一人ひとりの存在が突き刺さりました。

 何しろ名優ばかりですからね。だから彼らを現場に放り込むだけで自然に演技合戦が始まってくれました。まさに男祭りみたいな感じ。シーンごとの緊張感、緊迫感をそれぞれが醸し出してくれた。本当にいい役者さんに恵まれました。

 運命に翻弄されながらも抗い、それぞれが大切なものをつかもうとする、守ろうとする姿が素直にカッコいいなと思いました。

 僕はこれまで社会性を持った映画を作りたくて、震災ドキュメンタリーやホームレス映画など小さなアプローチはたくさんやってきました。そのこととエンタメ娯楽系の大作は別ものだと捉えていたんですね。でも、本作ではそんなことは言っていられなかった。どちらの要素も重要で、これまで製作してきた四十数本の様々なノウハウや経験を総動員しなければ作ることができなかった。精神的にも技術的にも相当ハードでしたが、私の集大成のような作品になったと感じています。これでようやく映画監督という職業の入り口に立てたような感慨がありました。

 多くの方に映画館で観てほしいですね。そして映画の一部として主題歌も楽しんでもらえたら。

 この作品は、セミの声で始まって秦さんの曲で終わる。実は、音の強さを信じた映画でもあるんです。音楽担当のリチャード・プリンが奏でる音もかなり強力ですし、ヘリの「ビッグB」なんてまるで獣の鳴き声のよう。音響効果部が約半年かけて音を作ってくれたたまものです。最近の映画館は音環境も抜群にいいので、多くの方に『天空の蜂』を映画館で楽しんでもらいたいですね。

映画『天空の蜂』公式サイト