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SPECIAL INTERVIEW 日本を取り巻く国際社会の動きを捉え、変化する大学を読み解く
東洋大学 学長 竹村 牧男×朝日新聞社 教育コーディネーター 一色 清

東洋大学の歴史は、激動の明治を駆け抜けた哲学者・井上円了が、1887年に「私立哲学館」を創立したことに始まります。建学の精神の一つである「諸学の基礎は哲学にあり」を受け継ぎながら、様々な分野の学部を擁する日本有数の総合大学として日々進化を遂げてきました。

2012年には創立125周年を迎え、「哲学教育」「国際化」「キャリア教育」の3つを、教育の柱として掲げました。現在、時代や環境の変化に流されることなく、地球規模の視点から物事を捉え、自分の未来を切り拓くことのできる「グローバル人財」の育成に、全力を注いでいます。

そして2017年4月、先端的な3つの新学部、5つの新学科が開設されます。「国際学部 グローバル・イノベーション学科/国際地域学科」「国際観光学部 国際観光学科」「情報連携学部 情報連携学科」と、文学部の「国際文化コミュニケーション学科」を加え、13学部46学科へと発展。学びの環境となるキャンパスも、新たに赤羽台キャンパス(東京都北区)が開設され、世界の若者たちが集い、国際化を牽引することが期待されています。

東洋大学が目指す世界標準の大学とは。そして、地球社会の未来を切り拓く「人」を育成することとは──。

報道番組のコメンテーターなどを務め、朝日新聞社の教育コーディネーターとして大学教育とも向き合う一色清氏と、東洋大学の竹村牧男学長が語り合いました。

東洋大学 公式ホームページはこちら
時代を先取りする井上円了の「哲学教育」グローバル社会を生き抜くために必要な能力とは
時代を先取りする井上円了の「哲学教育グローバル社会を生き抜くために必要な能力とは

一色東洋大学の教育方針には、井上円了先生以来の「哲学教育」が大きな柱にあるとお聞きしています。学生にはどのような「哲学教育」をしておられますか。

竹村哲学教育には2種類あると思います。一つは、カントやヘーゲルなどの哲学者らが、どういう見地で思考を深めていったかを習うこと。いわば哲学、あるいは倫理、宗教思想ですね。本学では、基盤教育(一般教養科目)に「哲学・思想」という分野を新設し、この科目群を必修としています。もう一つは、常識や偏見、先入観等を取り去って、物事の本質に深く迫って考えていくことを学ぶこと。そういう考え方を身に付けることは、どの学問分野でもできるわけです。今日ではアクティブ・ラーニングとよく言いますが、授業で学生がディスカッションなどに参加したりすることで、自ら考え、判断し、行動し、未来を拓く人になってほしいと考えています。

一色現代は情報があふれる社会で、変化も激しい。学生には、自分の芯となるような、広い意味での哲学的な思考を持ってもらいたいということですね。

竹村そうですね。大学で学ぶなかで自分の生き方の基軸を作るために、いろいろな問題について深く考える訓練をしていくことが非常に重要です。本学は「諸学の基礎は哲学にあり」のほか、「独立自活」「知徳兼全」を建学の精神として掲げています。「独立自活」は、今日で言うところの自学自修。他に頼らずに、主体的に学びに取り組んで行動する力を育成すること。「知徳兼全」は、学力と人間力を培ってほしいということ。明治の円了先生の時代からの理念ですが、現代を先取りしていると思います。

一色円了先生の言葉が現在もまだ生きていて、しかも今の時代にマッチしているというのが素晴らしいですね。一方で円了先生は、まだ渡航が困難な明治時代に3回も世界視察旅行をされたそうで、非常にグローバルな方だったのですね。

竹村おっしゃるとおり、円了先生は本学を創立した翌年の1888年、さらに1902年に世界を一周する視察旅行に出発しました。世界の教育を見て回り、これからの日本や日本人のあるべき姿を探り、帰国後は、「日本人は海外で働けるようにならなければならない」と言って、英語や中国語の講義を重視されたのです。当時からグローバル教育に取り組んでいたと言えます。

一色これまで国内だけで活動していた企業も、どんどん海外に進出しようとしている時代です。東洋大学が育成しようとしている人材育成像とは、どのような人物なのでしょう。

竹村国際社会の中で活動するには、語学力は必要です。特に英語はユニバーサルな言語なので、英語力を高めることで将来の活躍の幅は広がると思います。しかし、英語が話せれば「グローバル人財」かと言うと、決してそうではありません。重要なのは、自分とは異質なものを忌避せずに、きちんと受け止めて柔軟に対応できることです。そして、良いところを受け入れ新しい価値を生み出す「異文化理解・活用力」が求められますね。さらに重要なのは、自国の伝統文化を深く理解して、他の文化の下で生きてきた人々にその意義を説明できる「自文化理解・発信力」です。そのため、本学の基盤教育にある「国際人の形成」の科目群には、日本文化を学ぶ科目も多く含まれています。

一色なるほど。日本人の学生は、日本についての教養を身に付けるということですね。そういった人材育成像は、円了先生の教えともつながっているのですか。

竹村円了先生は世界を回って、どの国も自国の伝統文化や思想を大事にしていることに深い感銘を受けたそうです。そこで日本も伝統文化や思想を尊重しつつ、普遍的な真理を大切にしていく立場を取られました。その態度の重要性は現代でも同様です。そして、異質なものが混在しているボーダーレスな状況の中、グローバル社会を生き抜く力を学生に身に付けさせていくことが大学の使命です。

一色2014年に文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(グローバル化牽引型)」に採択されたことを受けて進行中の構想「TOYO GLOBAL DIAMONDS」では、“アジアのハブ大学”を目指されているとのことですが。

竹村構想の採択を受け、本学では留学生の派遣・受け入れの促進をはじめ、国際編入制度の確立や単位互換制度などによって、学生が流動的に学ぶハブ大学(中継基地)となることを目指します。特に、これから発展するアジア地域を重視しています。

一色東洋大学がアジア地域を中心に、各国の教育・研究機関をつなぐということですね。

先端的な新学部・新学科を開設 世界の発展に貢献するグローバルリーダーを育成
先端的な新学部・新学科を開設 世界の発展に貢献するグローバルリーダーを育成

一色新しい学部・学科の話になりますが、2017年4月に新設される「国際学部」は、2つの学科になりますね。

竹村一つは、これまで国際地域学部にあった「国際地域学科」です。グローバルな視点で地域の発展に貢献する人財を育てるため、海外研修やインターンシップで現場主義の学びを重視するなど、教育もさらにブラッシュアップしていきます。もう一つの「グローバル・イノベーション学科」は、定員100名のうち約30%を留学生とし、授業は原則英語で行い、日本人学生は1年間の海外留学が必須となります。そこでは、グローバル社会の、経済や金融、産業といったシステムにイノベーションを起こし、地球規模の課題解決に関われるような、世界を舞台に活躍する人物を育成したいと考えています。

一色まさにグローバルリーダーですね。日本人の学生も、かなり意欲的な人が集まりそうですね。教員にはどのような方がおられますか。

竹村有名な方では、小泉内閣で大臣を歴任した竹中平蔵先生が、グローバル・イノベーション学科の教員に就任します。既に2016年4月から、国際地域学部の教授とグローバル・イノベーション学研究センター長を兼任していただいております。

一色一方、訪日外国人旅行客数の目標が2020年までに4千万人という時代。「国際観光学部」も、注目度が高い学部です。

竹村本学は1963年に当時の短期大学に日本初となる観光学科を創設して以来、観光分野の学問で50年以上の歴史を持っています。政府は観光立国をうたっており、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることもあって、観光は日本産業の重要な柱となります。グローバル化が進む観光業界を支える知識や経験を身に付けるために、学部では観光産業と観光政策をあわせて教育・研究していきます。

一色「情報連携学部」は、情報系の学部としては新しい分野になりますね。

竹村ICT(情報通信技術)をベースにして、異分野のものがつながるといいますか、多様な人々やシステムが連携して、問題を解決していく。連携によって、新しい価値やイノベーションを生み出そうというものです。情報連携学部と大学院情報連携学研究科の学生は、東京都北区に新たに開設する赤羽台キャンパスで学びます。学部長には、「ユビキタス」で知られる坂村健先生が、2017年4月から就任します。

一色あのTRONプロジェクトの坂村先生ですか。最先端の教育・研究が期待できそうですね。赤羽台キャンパスにはどのような特徴があるのでしょうか。

竹村赤羽台キャンパスは、クラウドベースの教育システムを取り入れた最先端の「スマートキャンパス」です。教育用クラウドで、講義の受講や資料の入手、演習、レポート作成、プログラム開発などのサポートをします。キャンパスの建築設計は、新国立競技場など数々の有名建築を手がける隈研吾建築都市設計事務所が担当しています。 新しい学科としてもう一つ、文学部に「国際文化コミュニケーション学科」が生まれます。こちらは、異文化理解や国際交流のエキスパートを養成していく学科で、英語能力の向上をベースにしながら、日・独・仏・英の言語や文化への理解を深めていきます。

世界標準の大学運営を実現し、国際的に高く評価される大学を目指して
世界標準の大学運営を実現し、国際的に高く評価される大学を目指して

一色新学部・新学科の設置は、大きな改革と言えますね。竹中先生や坂村先生のような研究者を招へいされていることからも、力を入れていらっしゃる様子がわかります。今の時代の潮流にあって、新しい一歩を大胆かつしっかり踏み出しているという印象を受けました。学部・学科ごとにもアドミッションポリシー(入学者受け入れの方針)を打ち出していますが、大学全体として“このような学生を育てたい”という方針はありますか。

竹村自分たちが生きていく未来の社会、あるいは自分より後輩の、次世代の若者たちのための理想的な社会の構築に貢献し、主体的に行動できる学生を育成するため、2016年に東洋大学「Beyond2020」というビジョンを掲げ、未来を拓く「人」を育てるための大学改革を推進していく予定です。

一色日本という国が徐々に年老いていくというイメージがあるものだから、なかなか現状を決定的に打破できずにいる。そこは本当に、若者に期待するところです。

竹村本学の学生も高い意識を持つようになってきたと感じています。2013年から各キャンパスの図書館に順次、ラーニング・コモンズと呼ばれるスペースを設置しました。グループでディスカッションをしながら自主的に学習できるスペースなのですが、いつも学生で賑わっています。

一色それは素晴らしいことです。お話を伺って、東洋大学が本当の意味でのグローバルスタンダードを目指されていると思いました。グローバル教育というと英語をツールとして身に付けさせることに留まりがちですが、ベースとしてしっかりと「哲学教育」があり、日本の文化もしっかり学ぶ。それらを兼ね備えた世界に通用する人物の育成を目指しているところに、東洋大学の明確なビジョンを感じます。

profile

profile 東洋大学学長 竹村牧男
1948年、東京都生まれ。博士(文学)。東京大学大学院人文科学研究科(印度哲学)修士課程修了。同大文学部助手、三重大学人文学部助教授、筑波大学教授(哲学・思想学系)、東洋大学文学部長などを経て2009年から現職。専門領域は仏教学および宗教哲学。主な著書に『入門 哲学としての仏教』(講談社現代新書)、『日本仏教 思想のあゆみ』(講談社学術文庫)『ブッディスト・エコロジー』(ノンブル社)など。受賞歴に日本宗教学会賞、第17回中村元東方学術賞など。
profile 朝日新聞社教育コーディネーター一色清
1956年、愛媛県松山市生まれ。東京大学法学部卒。1978年朝日新聞社に入社。福島総局、成田支局、経済部記者、週刊誌「AERA」編集部、経済部次長を経て、2000年「AERA」編集長。土曜朝刊別刷り「be」エディター、出版本部長補佐、「WEBRONZA」編集長などを歴任。2008年10月から11年3月までテレビ朝日「報道ステーション」のコメンテーターを務めた。「AERA」副編集長時代には、中吊り広告下のだじゃれコピーを担当。共著に『「知」の挑戦 本と新聞の大学 』(集英社新書)。
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