経済が成熟し飽和状態といわれて久しい現在。一方で若い世代による新しい価値を生み出すベンチャー企業も台頭してきています。このモノやサービスの溢れた現在、彼らはどんなアイディアや発想で時代を切り開いているのでしょうか。
文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(タイプB)」に採択されている東洋大学では、世界を舞台に、新たな価値を創造する「グローバル人財」の育成を加速させるため、2017年に新たな学部・学科の開設を構想しています。そのひとつとなるのが「情報連携学部」です。
毎日のように新しい技術や価値が生まれる現代において、アイディアは、素早く形にして社会にリリースしなければ価値を失います。そこで新たなキーワードとなるのが「連携」。分野やシステムを越えた多分野の連携が最重要となっているのです。
今回、同大学の工学部情報工学科を卒業し、現在は、Webメディアを活用したネット型リユース事業の運営など「2次流通」を中心としてリユースビジネスを展開する株式会社マーケットエンタープライズの代表取締役を務める小林泰士氏に伺いました。
私は、高校時代からインターネットが中心になる社会に興味があったこと、そして家から歩いて5分のところにキャンパスがあったことも手伝い、東洋大学の工学部情報工学科に入学。研究室では、パソコンを自作したり、いろいろなソフトを動かしたりしながらICT※全般を実践的に学び、卒業研究ではホームページのアクセス数を増加させる、今でいうSEOの手法をいくつかのサイトを作って研究しました。そうした知識はWebを活用するいまのビジネスにも役立っています。昨今、起業を目指す若者が増えていますが、私も学生時代から、いつかは起業したいという思いを胸に秘めていました。
2017年に情報連携学部が新設されるそうですが、時代の流れや社会のニーズに即した学部だと直感しました。目指す進路もエンジニア、プログラマーだけでなく、デザイナー、コンサルタント、マーケッターなど幅広いですし、何よりも「連携」というコンセプトが非常にいいですね。連携する力はいま、新たなビジネスの創出や、若い世代が起業する際など、あらゆる場で求められています。技術だけ学んでも、あるいは経営やマーケティングだけ学んでも、ビジネスの現場で実践的に使うことはできません。具体的にビジネスを走らせていくためには、課題を設定し、市場ニーズを引き上げていくといった作業を、関係する全メンバーを巻き込みながらプロジェクトとして進行していくことが必要です。情報連携学部で学ぶ皆さんには、是非、この連携ということの大きな意味を考えながら、幅広く多面的に学んでほしいと思います。
実は、当社の創業メンバーは3人とも東洋大学出身です。キャンパス以外で会ったメンバーもいますが、チームのような連携感があります。起業した当時は、一緒に住んでリビングを事務所がわりに苦楽を共にしました。皆の力が合わさって何かを成し遂げた時に、自分のモチベーションもテンションも上がりますし、喜びも大きいですね。こうした経験によって培われたチームワークはその後の私たちにとって、大きな力になっています。新学部でも、ビジネスコンテストなど、さまざまな実践の学びの場があるようですが、そこでの出会いや経験は、何よりも得難いものになることと思います。
※ICTとは情報通信技術のこと
当社は、使い捨てカメラの乾電池をリサイクル販売することからスタートしました。使い捨てカメラは電池以外の大部分がプラスチックでできており、溶解してリサイクルされています。ところが、電池だけは全部廃棄処分されているという現実を見つけた時に、これは商売になると気づいたんです。
私自身元々リユースが好きだったところも大きかったですね。中学の時から古着のジーンズを探し求めたり、原宿や渋谷の古着屋にも出入りして少ない予算でおしゃれを楽しんだりした経験が原点だったかもしれません。今でも、ビジネスとしてというよりは、売り手と買い手の橋渡しをすることを通じて社会貢献ができるというのが大きなモチベーションになっています。
頑張れば頑張るほど世の中を良くできるかもしれない。そう考えることが組織として成長していくうえで大切だと思っています。今は日本だけでなく、中国をはじめとする海外へも展開し、業績に占める海外のシェアも成長し始めました。
将来は、リユースを中心としたコングロマリットグループを形成していきたいという大きな目標があり、社員教育にも力を入れています。自分が大きな刺激を受けた書籍を紹介したり、さまざまな企業の経営者を招いて講義してもらったりといったことをやっています。
私自身、大学生の時に商品をフリーマーケットやネットオークションで販売するなどのビジネス経験をしましたが、学生時代にこうしたビジネスを体感できる機会を得ることは、大変貴重だと思います。今はチャレンジしたらチャレンジした分だけ、自分に戻ってくる時代です。新学部が掲げる「共通の課題解決を行うためのコミュニケーション能力を身に付ける」という具体的な目標を達成するためにも、後輩の皆さんにはいろんなことに積極的にチャレンジして、行動し、目立ってほしい。そうすることで、社会に出てからもたくさんの壁や課題を突破しながら成長していける土台を作ってほしいと心から思っています。もうひとつ、今後働くうえで一番求められるものは、主体性でしょう。仕事はやらされているうちは楽しくありません。主体的にやるから楽しくなっていくのです。いろいろな経験を通してそこに気づいてもらえたらいいなと思っています。