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09月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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高い倫理観を持つ「治道家(ちどうか)」を育てる

 会計学を基礎とする実学教育の伝統。武士道の精神に基づく人間教育。そして、工学の博士号を持つ学長の存在。一見するとどう関連するのかわからないこうした要素が、ユニークな調和を生み、古い常識にとらわれず、新しい教育を切り拓(ひら)いている千葉商科大学の特長だ。

 「武士道というのは、うそをつかない、約束を守る、卑怯なことをしないといった倫理観のこと。それはさまざまな商行為においても決して忘れてはいけない態度・姿勢です」。原科幸彦学長は、創設者・遠藤隆吉の思いをそう代弁する。

 前身の巣鴨高等商業学校が設立された1928年といえば、世界恐慌の起こる前年。好景気のなかで倫理にもとる商売が横行し、それを憂えた文学博士の遠藤は、商業道徳の教育が必要なことを痛感したという。「明治時代の日本では、訪れた外国人がみな驚くほどの高い倫理観が保たれていました。当時の日本で、何が社会の規範になっていたか。その答えを英文の名著「 Bushido 」を書いた新渡戸稲造は武士道精神に求めました。遠藤博士も同じ考えです」

 そうして、学問においては社会に役立つ実学を、人間形成においては「治道家(大局的見地に立ち、時代の変化を捉え、社会の諸問題を解決する高い倫理観を備えた指導者)」の育成を基本理念とする学校が誕生した。戦後の学制改革で4年制大学となって以降は、商経学部に加え、2000年に政策情報学部、その後、サービス創造学部、人間社会学部、国際教養学部を相次いで開設。社会科学系の総合大学として、来年創立90周年を迎える。その間、信頼される有為の人材を輩出し、現在も1300人以上の社長がいる。

 「情報通信技術が高度に発達した現代では、商行為とは単に店頭でお金と商品を交換することだけでなく、世界中を対象としたさまざまな形態のサービスを指すようになっています。また福祉や地域づくり、エネルギー政策などを考えるうえでも、費用対効果という視点を抜きにはできません。『商』という概念そのものが時代とともに変化するなか、千葉商科大学の学びも大きく広がってきました」

新体制のもと始まるプロジェクトプラン

同大の採用・キャリア教育に積極的な企業群
「CUCアライアンス企業」ネットワーク

 東京工業大学名誉教授でもある原科学長は、以前から技術者倫理の授業で武士道精神について教えていたという。「私の専門であるインパクトアセスメント(開発行為などが及ぼす影響の事前評価)は、会計監査と似たところがあります。データは常にごまかしようのない事実を示すはずですが、実際は専門家がどちらから光を当てるかによって『色』を変えることも可能です。だからこそ、治道家を育てるという本学の理念は、複雑な現代にこそ意義があるといえるでしょう」

 今年3月の就任会見で、原科学長は四つの「学長プロジェクトプラン」を打ち出した。一つ目は「アカウンタブルな経済社会システム構築への貢献」として、アカウンティング(会計)からアカウンタビリティー(説明責任)へ、を合言葉に、情報化社会に対応した透明性の高い会計学の構築をめざす。

 二つ目は「CSR研究と普及啓発」。CSRとは「企業の社会的責任」だが、本来の意味は企業の行動様式を環境や社会への影響を配慮したものに変えていくことで、ビジネス倫理や政策倫理が問われる。ESG投資や融資における環境社会配慮など、広義のアセスメント研究、社会的責任の視点からの新しい大学ランキング指標の開発やエシカルグッズ開発なども行う。

 三つ目の「安全・安心な都市・地域づくり」は、大学の所在地である市川市国府台地区の恵まれた地形を生かした防災への貢献。また近隣の大学や病院を含むコンソーシアムの形成により、医療・介護・福祉等に貢献する。地域資源を生かしたまちづくりや安全な地域交通システムの形成などにも多様な主体と連携しながら支援を行うという。

 四つ目の「環境・エネルギー」は、日本の大学として初となるネット・ゼロ・エネルギー・キャンパスへの取り組みだ。これは、大学の施設でつくられた再生エネルギーと学内で消費するエネルギーを同量にして、電力と熱を自給自足でまかなうというもの。この実現により、大学を拠点として、市川市を地域分散型エネルギー社会のモデルとする。そして、小規模エネルギー事業者の起業支援や持続可能な経営支援にも取り組み、千葉商科大学を地域分散型エネルギー社会形成の核とすることをめざす。学生による再生エネルギー会社の起業も視野に入れ、全学規模で動き出している。

 「本学の良き伝統を発展させながら、持続可能な社会づくりのために、教職員と学生が一丸となってアクティブ・ラーニングを行い取り組んでいきたいと思います」

幅広い知識・教養と正直さを併せ持つ人に

 実学教育の目的は、社会に有用な人材を送り出すこと。千葉商科大学では、国内700社以上の企業とアライアンス(提携・同盟)協定を結び、学生たちの就職を強力にサポートしている。この「CUCアライアンス企業」は、学内における企業との交流イベントやインターンシップ受け入れなどに全面協力し、卒業生の約3人に1人はCUCアライアンス企業からの内定を得ている。

 また起業家マインドを育てるため、学生たちが企業と提携して商品の開発・販売を行う株式会社を学内に設置する計画だ。

 異文化交流や海外体験のプログラムも豊富だ。現在、世界33大学との連携協定を結び、交換留学や海外語学研修を実施。さらに、カフェにいるようなリラックスした雰囲気でネイティブスタッフとの英会話を楽しめる「CUC International Square」や、海外の学生たちを数十人規模で招待する「CUCサマープログラム」など、学内にいながら常に「世界」を意識する環境が用意されている。そして、中国・上海の国立大学とのダブル・ディグリープログラムもある。

 「こうした幅広い体験を通して得られる知識・教養は、将来指導者として正しい判断を下すために不可欠です。しかし私は、それだけでは十分ではないと思っています。明治の初め、日本に進出する足がかりを築こうとしていた諸外国は、日本の役人たちが頑なに賄賂を受け取らないので驚いたといいます。私利私欲よりも自らの倫理に従う正直さ、まっとうさ。それがあって初めて、知識も意味を持ちます。この大学でぜひ、そうした生き方を学んでほしいと思います」

「やってみる、という学び方。」
全学で取り組むアクティブ・ラーニング

 千葉商科大学では、学生の主体的学習によって知的成長を促す「アクティブ・ラーニング」を全学で実践している。こういった教育の質向上の取り組みは、文部科学省の「私立大学等改革総合支援事業(タイプ1)」に2年連続で選定された(2015・16年度)。

 こうした教育の成果は卒業生に占める経営者や起業家の多さとしても現れており、帝国データバンクの全国社長分析(2017年)で、千葉商科大学は日本の全大学中上位6%(※)に入る実績を上げている

※ 帝国データバンク全国社長分析(2017年)社長の出身大学(2016年出身 大学判明)で779校中48位にランクイン。

地域貢献への取り組み
地域と市民に役立つ大学をめざして

 2008年から、地元市川市と地域活性化・人材育成を目的とした包括協定を結び、「地域密着型大学」として地域に根ざした教育・研究・社会貢献に全学的に取り組んでいる。多様な公開講座やセミナーのほか、社会人の学び直しニーズに対応した「履修証明プログラム」の開講、地域志向の研究を支援する助成金制度も設けている。地域の大学としての社会貢献を重視する取り組みは、文部科学省の「私立大学等改革総合支援事業(タイプ2)」として選定されている。

アジアへ、そして世界へ
多彩な国際化の取り組みを強化

 アジアの発展を支える人材を育てるため、上海立信会計金融学院(中国)との間でダブル・ディグリープログラムを締結。両大学の学位を4年間で取得することができる。

 また「CUCサマープログラム」をはじめとする異文化体験プログラムにも毎年多くの学生が参加しており、多彩な取り組みは文部科学省の「私立大学等改革総合支援事業(タイプ4)」に選定されている。

学生と地域の人たちの憩いの場
The University DINING

 学生や教職員はもちろん、地域の人たちのコミュニティスペースとしても活用されている学生食堂「The University DINING」。日本を代表する建築家をはじめ、新進気鋭のクリエイターやカフェブームの仕掛け人たちがつくりあげた空間は、2015年度グッドデザイン賞、第22回(2015年度)千葉県建築文化賞優秀賞(一般建築物の部)、日本不動産学会2016年度(第23回)業績賞を受賞するなど高く評価されている。