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09月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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『大学ランキング』杉沢誠記編集長に聞く 大学と「社会的責任」

大学という社会的存在が、広く世界に対して、地域に対して、そして何より学生に対してどんな責任を果たしていこうとしているのかによって、教育やキャリア支援のあり方は変わる。「大学ランキング」杉沢編集長はそう語る。「社会的責任」という視点から、大学の今とこれからを考える。

大学の姿勢を示す「三つのポリシー」

朝日新聞出版「大学ランキング」
杉沢誠記 編集長
すぎさわ・せいき/「AERA English」「アエラ大学ムック」「アエラ企業研究シリーズ」などの編集長も兼務。これまで就職情報誌、女性ビジネス誌、ライフスタイル誌などの編集を手掛け、「人と社会」の関わりを見つめてきた。

 「企業の社会的責任(CSR)」という言葉はずいぶん一般的になりましたが、近ごろは大学も企業と同様の社会的存在として、自らの責任をどう捉え社会の期待に応えていくのか、積極的に発信する例が増えています。

 学校教育法では、短期大学を含むすべての大学に、「三つのポリシー」を策定・公表することを義務づけています。「ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)」は、どんな力を身につけた人に卒業を認定し、学位を授与するか。「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」は、ディプロマ・ポリシーを実践するためにどんな教育を行い、成績をどう評価するか。そして「アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)」は、そうした教育を受けるに足る人をどのように選抜するか。大学のパンフレットやホームページには、必ずこの三つが記載されているはずです。

 大学が自らの社会的責任をどう位置づけているかは、こうした言葉からも読み取ることができます。おそらく受験生でも、この三つのポリシーをしっかり読んだことのある人は、そう多くないでしょう。高校生にとって読みやすい文章でないことはたしかですが、本当に伝えたいことがある大学、充実した教育を行っているという自負がある大学は、その「熱量」が不思議なぐらい言葉の端々から伝わってくるものです。志望の大学に出願する前には、ぜひ一読することをおすすめします。


学部新設に見る社会との関わり

 今春、全国の大学でスタートした新たな学部・学科・大学院研究科(※)は約60に上ります。大学の数自体は762校から5校増えて767校となり、学びの選択肢はますます広がっているといえるでしょう。

 今年の新設学部・学科を特徴づけるキーワードとして、目立ったものは「国際」「看護」「スポーツ」の三つ。いうまでもなく、「国際」はグローバル化の進展に対応するため、「看護」は高齢社会で増大する需要に備えて、そしてスポーツは、2020年を見据えてのことと考えられます。

 調べてみると、大学名に「体育」が入る5校のうち三つは、50年前の東京五輪の前後に設置されています。大学の学びは、社会的課題の解決や人々の求める価値の創出が大きな目的ですので、時代を反映することはある意味で当然なのかもしれません。個人的にはそろそろAI(人工知能)を冠した学部や学科が誕生するのではないかと思っています。

 たとえば「スポーツ」というテーマひとつをとっても、選手として競技技術の向上に努めるだけでなく、栄養学やフィジカル/メンタルトレーニングの面から選手をサポートするための学びもあるでしょう。スポーツマネジメントや、エンターテインメントとしてのスポーツイベントについて学ぶ学科もあります。近年どのような学部・学科を新設しているかに注目することでも、その大学がこれから社会とどう関わっていこうとしているのか、うかがい知ることができます。

 もうひとつ、大学の社会的責任として重要なことが、学生や保護者のためにどんな経済的支援策を用意しているか。給付型や無利子の奨学金、あるいは受験前に申請できる「予約型」の奨学金で、受験生の不安を軽減しようとしている大学もあります。また、入学試験を地方会場で実施する大学も、受験生の移動や宿泊の負担を少しでも減らそうという意図があるのでしょう。

 間もなく6月。受験勉強も徐々に本格化してくるころだと思いますが、みなさんは志望校をどのような基準で選んでいるでしょうか。私自身は、大学選びよりも先に大切なことは学部・学科選びだろうと思っています。明日はその選び方について、私なりの考えをお話しします。

(談)

※大学院研究科の専攻の設置または課程の変更を含む