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08月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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独自の教育フレームで専門性と協働力が向上

 新緑がきらめく欅(けやき)並木の先にある、赤レンガを基調にした校舎。絵画のような風景のなかを、学生たちが談笑しながら歩いていく。緑豊かな東京・武蔵野にキャンパスを持つ成蹊大学は4学部10学科編成で、およそ8000人が学んでいる。

 成蹊大学の特徴は、1912(明治45)年の「成蹊実務学校」創立時から掲げられている「個性の尊重」「品性の陶冶(とうや)」「勤労の実践」を軸に据えた、豊かな人間教育と専門性の高い学術教育にある。100年以上前から個性を重視するための少人数教育を貫いており、伝統的に教員と学生の距離が近い。在学生、教職員、卒業生が“成蹊らしさ”を語るときには必ずと言っていいほど「アットホームな雰囲気」という声が上がる。これには全学生が4年間同じキャンパスで過ごすことも、大きく影響しているだろう。北川浩学長はこの利点を生かし、学部を超えた融合教育の拡大と深化を目指しているという。

 「本学は伝統的な少人数教育と掘り下げ型のカリキュラム構成によって、秀でたディシプリン(専門分野)を持つ人材を育成してきました。今、社会が直面する課題は一つのディシプリンだけでは立ち向かえない複雑なものばかりです。多様な価値観に触れるための学び、そして異なる専門性を持った個人がアイデアを出し合って課題解決にあたるための実学プログラムを用意しています」

社会と世界を見据える実学プログラムが多数

かつてはキャリア支援センター所長を務めた北川浩学長
ゼミ・研究室では発表や議論を通して相互に学び合い専門知識を修得する

 学部融合型教育の代表格が、5年前に北川学長自らが立ち上げた「丸の内ビジネス研修」、通称MBTだ。40人ほどの学生が参加するプログラムで、6・7人を1グループとして学部横断のチームを編成し、企業が提示した課題に解決策を提案する。課題提示から成果発表会まで、約8カ月かけて議論や検証を重ねていくため、学生は大いに成長するのだという。これまでに取り組んだ課題は「ロボット普及時代の働き方の提案」「丸の内のエリアマネジメント」「グローバル視点での紙素材活用に関する見通しの策定」など、ジャンルは様々だ。

 チーム編成後すぐに始動する学内準備研修では、ビジネスマナーや自己PR演習をはじめ、ビジネス討論の基礎となる論理的思考や作図型思考、事業活動の管理手法であるPDCAサイクルなどを学ぶ。複数の研修講座を担当し、学生たちのプレゼンテーションを現場で見守っている北川学長は、プログラムへの手応えを年々強めている。

 「企業担当者からの健闘をたたえる声に加え、協力企業の数を増やしていることや課題の難度が上がっていることが大きいですね。人口減や技術革新などをにらんだ企業の存続に関わるリアルで複合的な問いかけが増えてきました。産学連携プロジェクトとしても、より大きな意義を果たすものになればと思います」

 MBTは上級年次に挑戦できる大学の看板を背負ったプログラムであることから、学生の注目度も高い。選考はエントリーシート、面談、ディスカッションと実際の就職活動に近いプロセスで進められる。こうした仕組みを取り入れることで、選ばれた学生はもちろん、選考外となった学生にも大きな刺激をもたらすという。

 「就職活動の下地となりますし、主体的な活動の舞台を求めてまったく別のインターンシップに参加する学生もいます。これは創立者・中村春二の教えである〈自奮自発の精神〉そのものです。一人ひとりに気づきをもたらすこと、学びにつながる自発的な活動をきちんと後押しすること、そういった仕掛けを学内の様々な分野で取り入れることが大切なのです」

 全学部対象の仕掛けも多数ある。1年次におよそ100人が参加する海外短期留学の「サマースクール」、2年次の成績優秀者80人を選抜する「成蹊国際コース」、ボランティア活動を立案した学生の取り組みを助成する「成蹊大学社会活動支援奨学金」などだ。人数制限による競争原理の導入、一人ひとりへのサポート。この両軸で学生のモチベーションを高め、「社会づくり」に寄与する人材の成長を促す。

段階型キャリア教育と個別対応での就職支援

マンツーマンのキャリア支援は同じ職員が継続して担当する

 成蹊大学はキャリア支援にも注力している。基盤になるのは体系化された1年次からの「キャリア教育科目」だ。段階型演習が特徴で、グループワークなどを取り入れた「キャリアプランニング」、自身の持ち味を生かした働き方を考える「キャリアセミナー」、各業界のリーディングカンパニーから講師を迎えて多角的に分析する「日本企業の現状と展望」と、理解を深めるための体制を整えている。

 1年次から利用できる個別相談システムも大きな特徴だ。学部別に担当職員を配し、資格取得、インターンシップ、求人企業の紹介、面接対策など、学生の悩みや要望に合わせてアドバイスする。激動する社会への船出は、安定や静けさとは縁遠いものになるだろう。だからこそ大学で学ぶ意味があるのだ、と北川学長は語る。

 「本学の教育は不確実な社会に本気で立ち向かうためのものです。意欲に満ちた受験生の皆さん、自分と社会、二つの未来について成蹊大学でともに考えてみませんか」

自分らしさを発揮しながら、社会で活躍するためにー。成蹊大学は、未来の担い手に確かな学びをもたらしてくれる。

丸の内ビジネス研修(MBT)
産学連携の人材育成プログラム
毎年11月下旬に東京・丸の内で開かれる「成果発表会」

 学部横断で編成されたチームが「企業が提示した課題への解決策の提案」「インターンシップ」などに取り組むプログラム。約8カ月かけ、歴史的に成蹊学園とのつながりが深い三菱系企業をはじめとする多くの企業の協力で実施される。学生は積極的な発言で主体的に携わることはもちろん、他者と協働して課題を解決することの大切さを学ぶ。協賛企業は約20社。

成蹊国際コース
理解力・発信力・提案力を磨く
グローバル社会に必要な語学力と思考力を少人数授業で高める

 学部横断型の特別コースとして開設。全学部からおよそ80人を選抜し、2年次以降各学部の科目と並行して英語を基本とした特別プログラムを受講。コアとなるのは課題発見やリサーチ、発表を段階的に取り入れるゼミ形式の授業「Independent Study」。このほか思考法やプレゼンテーションなどスキルに焦点をあてた授業も多数。

情報図書館
多様な学修スタイルに対応
成蹊高等学校卒業生の建築家坂茂氏が設計

 ガラス張りの吹き抜けで採光性に優れた開放的な空間が広がる図書館は、学生に人気の高い施設の一つだ。南北の開架書架を取り囲むように閲覧個室「クリスタルキャレル」が設置され、静かで快適な自学自習の環境が整えられている。一方、アトリウム中空に浮かぶグループ閲覧室「プラネット」は、通常の音量での会話が認められており、授業のほか学生の自主的なゼミ学習にも利用されている。