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07月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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柔軟性と共感する力 頼れる自分をつくる

川名明夫学長

 都会の景色が見渡せるガラス張りのラウンジ。生き生きと会話する学生たちの間に、多種の言語が飛び交う。一昨年にキャンパス再編成が完了し新しくなった文京キャンパスは、インドネシア、ベトナム、サウジアラビアなど16カ国・地域からの留学生を迎えている。八王子国際キャンパスはさらに国際色豊かだ。拓殖大学は、1900年に創立された国際大学のパイオニアであり、交流・提携校は世界中に広がる。日本に居ながら国際感覚が身につけられる環境だ。

 明治・大正期、同大学の卒業生たちは、文字どおり何も地盤のないアジアの地域で一から産業を興し、発展させてきた。100年以上を経てグローバル社会が到来した今、さまざまな民族と言葉の垣根を越えてコミュニケートし、友好関係を築く重要性が注目されている。創立120周年に当たる2020年に向けた拓殖大学の教育改革「教育ルネサンス」は、国際大学としての伝統を踏まえながら、今の時代に即した国際性、専門性、人間性を備えた“拓殖人材”の育成を教育目標として掲げている。

 「予測不能な未来を心配するよりも、変化に耐えられる柔軟性を持って欲しい」と川名明夫学長は言う。「テクノロジーの進化により産業構造が大きく変化し、文系も理工系も、学生が将来就く職業は様変わりするでしょう。しかし時代が変わっても必要とされる能力がある。それは共感する力。他者を理解し、自分の意見をきちんと伝えて協働することです」。いわば時代を生き抜く「タフさ」がものをいう時代ということだ。

 教育ルネサンスは、短期、中期、長期に分けたグランドデザインを構築し、授業内容、国際交流、地域社会との連携、充実した学生生活などに関する目標をクリアしていく。例えば、「国際的視野」を身につけるため、長期留学、短期留学、各学部での研修など、留学生と交流する機会を拡充する。外部の英語検定は受検料補助を受けられるようにし、学生が自身の英語レベルを把握し、向上への原動力にできるよう支援する。

 専門性を身につける方法としては、ゼミ教育の充実が挙げられる。授業にアクティブラーニングを取り入れ、フィールドワークなど社会と連携した活動を大学が支援する。日本を代表するフランチャイズビジネス展開企業11社のトップによる特別講座では、生の企業経営論に触れることもできる。

職員と学生が実践する多彩なプロジェクト

 さらに、積極性や自ら課題を発見する「人間力」を育てるため、学生生活の充実や大学の活性化をはかり、学内外へ発信する「2020 TAKUSHOKU NEW ORANGE PROJECT」がある。これは、職員が主体となってプロジェクトチームを結成し、学生が参加していくもの。プロジェクトのひとつ「グローバルサークル」は、日本人学生と留学生との交流を目的とした「オレンジサロン」を開設し、ワールドカフェなどのイベントを催している。また、スポーツを通じ、タフで元気な拓大をアピールする目的で、さまざまな取り組みも行っている。八王子国際キャンパスでは拓大生と地域の人々が一緒になって楽しむスポーツイベント「スポーツオープンキャンパス」で各種スポーツ体験教室を開いている。

 国際交流や地域貢献、環境福祉、ボランティアなどの分野で、学生が企画した活動に奨励金を給付する「学生チャレンジ企画」も盛んだ。川名学長は「ゼミでも課外活動でも、どんどん社会に出ていくこと」を推奨する。「社会ではいろいろな課題にぶつかる。協働するには人と話し、相手を理解し、自分の意見を表現しなければなりません。大学生のうちに訓練することで、社会に出てからの不適合も防げるでしょう」。そうした環境づくりが実を結び、同大学のゼミチームは、経済産業省共催の「社会人基礎力育成グランプリ」全国決勝大会で大賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

国際協力と地域貢献 二つの強みを融合

本年も開催されるスポーツオープンキャンパス

 八王子国際キャンパスのある多摩地域の企業と28校の大学、自治体でつくる「学術・文化・産業ネットワーク多摩」では、アジアからの留学生に奨学金を支給するコンソーシアムを構築した。優秀な留学生を地元企業の人材として定着させることを狙っている。

 また、今年から総務省の委託事業として、八王子市の災害対策モデルの構築に参加している。これは、市内の河川にIoTセンサーを取り付けて水位情報を収集し、そのビッグデータをAIで解析し、リアルタイムハザードマップを作成するシステムだ。河川の氾濫(はんらん)を予測し、市民の安全な避難経路も検討する。市内の企業と八王子市による組織に、拓殖大学は、無線による通信システムの構築と、AIのロジックを組む部分で技術協力をする。通信事業会社や気象会社、自治体が役割分担する現場で学生の視点と行動力を生かし、貴重な社会経験も期待できる。

 「海外における“地域おこし”について学び、培われた知見は、日本国内の地域貢献にも通じます。海外に目を向けるとともに、地方創生を考え、地元に根づいた活動で地域の人と一緒に行動し、継続的な効果を上げる。それは学部を超えて全学生に共通する、拓殖大学らしい視点だと思います」と川名学長。

 ゼミ活動や学生チャレンジ企画での社会との連携活動は、地域の人から学び、地域の人に貢献する。その姿勢は拓殖大学の校風と言えるだろう。発想力と自主性を磨いた“拓殖人材”は、自分の力で歩く自信を得て世界へと飛び立つ。かつての卒業生が、異なる文化や生活様式の人とともに生きたように、地域に溶け込み、社会の支えとなる喜びを得るだろう。

経済産業大臣賞を受賞
社会人基礎力育成に評価

 経済産業省は2007年から、大学生がゼミや研究室での授業を通じて、どれだけ社会人基礎力が伸びたかを競い合う「社会人基礎力育成グランプリ」を開催している。昨年度は全国70チームがエントリーし、予選を勝ち上がった8チームが発表を行った。社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つの能力から構成され、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義されている。拓殖大学の商学部経営学科潜道ゼミのチームは、瀬戸内海に浮かぶ広島県の三角島にサイクリストと島民の新たな交流拠点の創設を目指す地方創生活動について発表。見事、全国代表の頂点となる大賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

フィールドワーク活動で発見
富士川町まちづくりシンポジウム

 国際学部の徳永ゼミと工学部の永見准教授が指導するデザイン学科3年生チームは、山梨県富士川町で地域創生に関する研究成果を発表した。学生たちは長期休暇や週末を利用して八王子国際キャンパスと富士川町を行き来し、町の課題となっている空き家に滞在し、役場でのインターンシップや祭りに参加し、交流を行った。そこから生まれたアイデアで郷土料理の知名度アップ策、自動車運転免許合宿の若者を対象にしたPR策など六つの企画を発表した。現地に足を踏み入れたことで実体験を通した地方創生企画は町の人の評価も得て、メディアにも紹介された。

第7回学生チャレンジ企画
中学生にSNSへの注意を喚起

 政経学部法律政治学科守山ゼミの3年生チームは、子どもたちがネット利用で犯罪に巻き込まれないようにするため、「SNSに気を付けよう ロールプレイングで学ぶモラル・リテラシー」と題した企画を応募。プレゼンテーション審査を勝ち抜き奨励金を獲得した。東京都や警視庁の協力を得て、大学のある文京区の区立第六中学校で講習を実施。中学1年生を前にロールプレイングやクイズなど工夫した講習会は中学校の先生からも絶賛され、手応えを実感した。口頭での成果報告発表会では学内の評価が高く、グランプリの「拓大つながりプロジェクト」に次ぐ準グランプリを受賞した。