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08月11日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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企画・制作 朝日新聞社広告局 文部科学省 研究大学強化促進事業 採択記念 × 創立95周年記念 国立大学法人  電気通信大学 Unique & Exciting Research Symposium〜 小さくても光る大学をめざして 〜 ウェブ採録

ご来賓あいさつ

株式会社日立製作所 代表執行役 執行役副社長   文部科学省 研究振興局学術研究助成課長 合田 哲雄氏

 1918年に電気通信大学の前身である無線電信講習所が創立され、その2年後に日立製作所が設立されました。その後、49年に電気通信大学となり、戦後から今日に至る経済的な復興とともに大きくなってきたのだろうと思います。
 電気通信大学と日立製作所は、2003年に連携プログラム実施協定を結びました。そして、04年度から「先端技術開発特論」という講義を受け持っています。今年度からは3社で分担し、教授と准教授を派遣しています。
 シンポジウムのプログラムを見ると、「イノベーション」「無線技術の革新と総合化」「女性研究者の課題」など、企業として大変興味深いテーマが並んでいます。また、「光」については、現在、日立製作所でも進めている研究テーマで、さまざまな技術の開発をしています。今後、「光」が産業界を変えていくと思います。本日は、ぜひ活発なシンポジウムになることを期待しております。

 

 「研究大学強化促進事業」は、2013年度から全国の国公私立大学の中で19大学と、三つの大学共同利用機関を選び、10年間にわたって支援するものです。今後、新しい社会的価値をどのようにして生み出していくのか、そのための環境をどのように作っていくのかについて明確なビジョンと組織力のある大学を支援しています。
 日本のイノベーションのために、今後、各大学の取り組みを越えて、19大学を中心に日本の研究大学がアライアンスを組んでもらいたい。そして日本の研究大学の質・量両面にわたる充実が大事だと考えています。今回は、研究力強化促進事業についてのオールジャパンでの第1回目のシンポジウムとなります。これをキックオフに日本の大学の研究力強化やイノベーションに向けた駆動力の強化に取り組んでいきたいと思っています。

基調講演

 

基調講演

「科学技術駆動型イノベーション創出能力強化と人材育成」 公益社団法人 日本工学会会長 柘植 綾夫氏   「イノベーションと高等教育の役割」 独立行政法人  国立高等専門学校機構理事長 小畑 秀文氏

 1000兆円を超える財政赤字、1995年から2010年まで15年間停滞し続けているGDPなど、現在、日本は非常に脆弱な社会経済体質になりつつあります。そのため、経済産業省を中心に、自動車・エレクトロニクスという「一本足構造」から複数の戦略産業分野による「八ヶ岳構造」へと産業構造の転換が進められています。
 また、教育の面では、枠にはめ、研究に重きを置くあまり、社会的価値・経済的価値を創造するイノベーション創出という視点からの人材育成が、決定的に欠けています。
 20世紀は「キャッチアップ型」といわれたイノベーションでしたが、21世紀は「フロントランナー型イノベーション」の創出へと変わってきました。社会が求める高性能性・高信頼性、さらに人の心、こうしたものを満たさない科学技術イノベーションでは社会から受け入れられず、本当の国力にまで結びつきません。そこで求められるのが「個別先端科学技術創造(知の創造)」と「総合化能力(社会経済価値化)」の二つを実現する人材です。具体的には4タイプの人材を育てる必要があると思います。
 第1は持っていると必ず競争に勝てる技術を生み出す「Type-D型人材」。第2は不可能だったことを可能にする技術をつくる「Type-E型人材」。第3が幅広い基礎技術と基盤技術・技能を持つ「Type-B型人材」。そして、最も重要なのが「Type-Σ型統合能力人材」です。この人材は、自分の専門分野にとどまらず幅広い知識を持ち、社会価値化を実践する能力、知識資源を核として社会的・経済的価値化をマネジメントする能力、そして自国の国民意識を基盤に、グロ―バルな視点で発想し行動できる能力を持った人材のことです。
 科学技術政策の重点化によってType-D、Type-E型の人材育成は進んでいます。しかし、Type-B、Type-Σ型人材の育成が初等・中等教育からできていません。Type-B、Type-Σ型人材を育成する教育改革の強化策が必要です。特にType-Σ型人材の育成には、教育と研究とイノベーションの三位一体を強固にして推進しなければなりません。これは大学だけでできることではありません。今後は、産学官が連携して必要な人材育成をしていかなければならないと思います。

 

 アメリカのコーネル大学や国連などが連携して発表している「Global Innovation Index(GII)」という指標があります。これは、84項目のポイントを平均化して、国ごとのイノベーションの強さを表したものです。日本は、2009年に9位でしたが、13年は22位に下がりました。特に「新しいビジネスを起こすのに必要な時間と経費」がそれぞれ81位と57位で、新規事業創設に関わる経済社会システムの改良の余地が大きいことが分かります。
 一方で、「知的な研究開発を行う人材」で8位に入るなど、研究開発の環境面は上位にランクされています。それにもかかわらずイノベーションに結びつきにくい現状は、人材育成面で大きな課題があることを示しています。
 有名な経済学者のシュンペーターは、「イノベーションは本質的には『新しき結合』である」と言っています。この “新しき結合”は、社会的文化的側面をも考慮した広い視野からの俯瞰力とセンスから生み出されるもので、そのような能力は従来の知識伝達型の大学院教育では育てられません。グループ学習や協調的学習などで具体的課題に取り組み、異なる分野の専門家との連携・融合の中に身を置いて触発され育まれるものと思います。ここに日本の教育の弱点があると思われます。
 学位論文に取り組む中で最先端の知識や情報、視点を学ぶことはもちろん大切です。それと同時に、論文テーマと離れた課題を通して、異分野に触れ、多様な研究開発者と協働する中で触発されセンスを磨く機会を与える教育改革が重要だと思います。大学院は、知識伝授型から脱却し、卒論から博士課程修了まで同じ研究室で過ごすという純粋培養方式を止め、多様な分野に触れその中で自らを磨ける場になるべきです。
 さらに、イノベーション人材育成には大学そのものの多様化も重要です。大学は国籍、人種、年齢、性別、経歴などを超えた人が集う多様性に富む場とならねばなりません。日本はこの点でも大きく遅れています。
 イノベーション人材育成を担う大学は「多様性に富んだ教育・研究環境を整備する」ことが急務です。それにより、十分な専門知識と共に広い視野からの俯瞰力とイノベーターとしてのセンスも身につけた研究開発者を育成できるようになると期待されます。大学の研究力強化に加えて、このような大学院の自己変革が併せて進めば、イノベーション力の大きな飛躍に繋がると期待されます。

つげ・あやお/1967年東京大学工学部卒業。73年に同大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。69年に三菱重工業株式会社入社、2005年内閣府総合科学技術会議常勤議員、07年三菱重工業株式会社特別顧問などを歴任、11年から日本工学会会長を務めている。
 
こばたけ・ひでふみ/1967年、東京大学工学部卒業、72年同大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。同年東京大学宇宙航空研究所助手、86年に東京農工大学工学部教授、副学長、大学院生物システム応用科学研究科長を経て2005年に学長を歴任している。
主催者あいさつ
電気通信大学長 梶谷 誠氏 かじたに・まこと/1964年に電気通信大学通信機械工学科卒業。71年に同大学短期大学部講師、89年に同大学教授などを経て、2000年に同大学長。08年から国立大学法人電気通信大学長を務める。
Unique & Exciting Campus 電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな(Unique)若者が集い、楽しくてわくわくする、魅力あふれる(Exciting)環境で学び、新しい価値を生み出し、世界を驚かすような 輝く個性が育つ学園(Campus)を目指します。

 電気通信大学は、当時急速に必要性が高まっていた無線通信技術者の養成機関として1918年に発足しました。現在、5年後の創立100周年を見据え「UECビジョン2018〜100周年に向けた挑戦〜」を掲げています。ビジョンは、五つの目標で構成しています。そのなかで、「総合コミュニケーション科学」という新しい概念を提唱し、世界的な拠点となると宣言しています。
 スローガンは、UECを頭文字とする「Unique&Exciting Campus」としました。目標を実現するには、さまざまな活動、取り組み、企画、立案などを実行する基本となる戦略が必要だと考え、「知のボーダレス化」「連携と恊働」「開放性と透明性」という三つを柱に据え、様々な活動を展開しています。
 「小さくても光る大学をめざして」というシンポジウムの副題には、小規模大学でもそれを強みに変えて特色を出せば、存在価値のある「光る大学」になれる、という意味を込めています。さらに本学には研究センターを中心に、「光」に関して優れた成果を出している研究者が多くいます。その意味でも「光る大学」と付けました。
 今後は、光のサイエンスとエンジニアリングという本学の強みを国際的な連携に拡大して発展させるとともに、他の分野との融合による新しい展開を推進していきたいと思います。また、本学には優秀な研究者が集まっております。彼らに「知のボーダレス化」を実践してもらえれば、「光」以外の分野も輝くに違いないと確信しています。
 電気通信大学の存在価値を保つには、学外の機関との多様な連携が必須です。今後とも厳しくご指導をいただき、ご支援とご協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。

話題提供

「光科学研究を通して考える電気通信大学の研究大学モデル」電気通信大学レーザー新世代研究センター長・教授 米田 仁紀氏   「無線通信技術の革新と総合化」電気通信大学先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター長・教授 山尾 泰氏   「外部資金により多様に展開した研究と女性研究者としての課題」電気通信大学大学院情報理工学研究科総合情報学専攻准教授 坂本 真樹氏

 魅力的な研究大学というものは、まず大学内で質の高い議論ができるかどうか。自分のアイデアをブラッシュアップしてくれる人が大勢いるということが大切です。さらに、人的や共用施設のサポートがあればなお良いですね。二つ目は、新しい研究を急速に立ち上げたいときに、それを受け入れられる体制が整っていること。そして最後に、さすが研究大学だと誇れる存在であり、国の「経済力」「産業力」を上げることに貢献していること。特に光科学の分野では、この三つの視点を持ちながら研究大学をつくる必要があります。
 今回、文部科学省の研究大学強化促進事業に、電気通信大学が研究大学として選ばれました。それは、小さい大学なので、フットワークが軽い。そして、量より効率で勝負できるだろう、といった意味が込められていると思います。そのことからも、今後、電通大としては、この大学でしかできないユニークな研究推進体制をいかにして作っていくかが重要になってくるのではないでしょうか。

 

 無線通信技術の革新を起こす原動力としての要求には、まずどこでも、いつでも通信できる「カバレッジ(通信エリア)」、次に「ブロードバンド化」と、多数のユーザを収容できる「大容量化」があります。さらに雑音、干渉による品質低下を克服して「安定的な通信品質」を確保すること、「端末・基地局の小型化・省電力化」、という五つが挙げられます。
 いずれの要求も、関連分野が多岐にわたるので、一つの技術を良くするだけでは大きな効果は得られません。革新的な要素技術研究を進めると同時に、要素技術を総合化して効果を最大化するプロジェクト研究が必要です。本学の先端ワイヤレスコミュニケーション研究センターでは、こうした研究に対処できる体制を整えています。重要な点の一つは、学部、大学院と密接に連携をとって、学生のレベルアップに力を注いでいることです。また広く企業・研究所などに在籍する学外の先生にも産学連携での協力をお願いしています。現在、様々な課題をプロジェクト化し、他大学と国際的に連携した研究を進めています。

 

 私が行っている研究のなかで、外部資金によって多様に展開しているのは、オノマトペ(擬音語・擬態語)を使ったシステムです。オノマトペを入れると、それが表す質感・感性的印象を定量化できるというものです。例えば「もふもふ」と入れると、「やわらかく」「あたたかく」「快適」という印象の数値が高く表示されるというようなものです。
 このシステムを使うと商品の名前がどんな印象を与えるかを数値化したり、「つるつるしたものが欲しい」と入力すると商品が検索できたり、そういう製品の開発支援もできます。医療の分野でも、「きりきり」「ずきずき」など痛みの質を定量化するなどの展開をしています。
 既婚の女性研究者は、こうした研究と家庭との両立で、常に時間に追われた日々になります。育児をしながらの他の研究機関との連携や海外出張などはさらに大変です。今後、国際共同研究の推進や組織的な研究構築支援・必要な人材の紹介などのバックアップ体制が整ってくるとありがたいです。

文部科学省 女性研究者研究活動支援事業   創立95周年記念シンポジウム
女性が輝く電気通信大学 〜ライフイベントと両立可能な研究環境の構築を目指して〜
日 時:11月28日(木)13:30〜17:00 場所:電気通信大学 B棟-201教室(東京都 調布市 調布ヶ丘1-5-1)
イベントの詳細は、こちらから
国立大学法人 電気通信大学 〒182-8585東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 TEL.042-443-5014 http://www.uec.ac.jp/