朝日VRアワード

バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)の発展や普及を目的とした「朝日VRアワード」(朝日新聞メディアラボ主催、VRコンソーシアム後援)が開催されており、2017年12月25日まで作品を応募している。今回が初の開催で、18年1月に入賞発表を予定している。

朝日新聞社は17年、「”見る”報道から、”体験”する報道へ」を掲げ、日本の全国紙に先駆けてVRを使用した報道「NewsVR」を開始。
VR を使った新たな報道に挑戦しており、朝日新聞デジタル内やスマートフォンアプリのNewsVR(iOS/Android)で発信している。
朝日VRアワードはこの動きにあわせ、VRの価値を高めるために開催される。

作品の募集締め切りは17年12月25日。応募部門は、犬や猫など、ペットを被写体とした「ペット」部門、家族や友人など、人を被写体とした「人」部門、自然の風景などを被写体とした「自然」部門の3部門があり、応募は各部門1作品まで最大3作品となる。
賞金は大賞が10万円、各部門賞が5万円。審査は演出家の宮本亜門さんらが行う。

詳細、応募は公式サイトへ。結果は朝日新聞デジタルNewsVR(Web・アプリ)で発表される。

応募要項
募集期間
2017年9月29日(金)~12月25日(月)
賞金
大賞(1本) 10万円、各部門賞(計3本) 5万円
応募部門
ペット部門

犬・猫など、ペットを被写体とした作品

人部門

家族や友人など、人を被写体とした作品

自然部門

自然の風景などを被写体とした作品

※各部門1作品の応募とします

審査発表
2018年1月中旬(予定)

朝日新聞デジタルNewsVR(Web・アプリ)で発表、公開

主催:朝日新聞メディアラボ

協賛:アルファコード

後援:一般社団法人 VRコンソーシアム

本アワード協賛のアルファコード水野社長が語るVRの魅力

VRで体験共有の世界が広がる

今や、バーチャルリアリティー(VR)という言葉は多くのメディアに登場し、多くの人が知る存在となった。VRの持つ可能性とは何か、VRがもっと身近になるにはどうしたらいいのか。VRを使った販売促進や地域振興、またミュージカルとの融合などを手がけ、今回「朝日VRアワード」を協賛する「アルファコード」の代表取締役社長CEO兼CTO、VR/MRコンテンツプロデューサーである水野拓宏氏(44)にVRへの思いを聞いた。

論理的思考を超えて心が反応

その瞬間を、水野氏は今でも忘れられない。

床の上にいるのに、高いところにいるときと同じ恐怖感に襲われた。その感覚を水野氏は「ぞわっとした」と表現する。怖さのあまり心拍数が高まり、足がすくんで動けなくなった。

2014年、水野氏は米国ロサンゼルスにいた。世界最大のゲーム展示会「E3」。「PlayStaion VR」のデモンストレーションを体験していた。

自分がケージに入って、海の中に沈んでいくというVRコンテンツ。ほとんど期待していなかった。サメが襲ってくるのも想定の範囲内だった。「昔の3Dテレビのように、サメが飛び出してくるのかなって。斜に構えてみていました」

そう思う理由があった。VRは決して新しい技術ではない。これまでもブームは何度かあった。でも、期待する度に裏切られた。「またVR?という感じでした。でも、お客さんに説明するためには体験するしかないかなと」

予想は裏切られた。サメに襲われ、四面の柵がなくなったとき、下を見た。深い海が広がっていた。その時、冒頭の恐怖感に襲われた。

「頭の中の論理的な思考では、『これは現実じゃない』というのは分かっているんです。でも、心が現実だととらえていた。『ここにいると危険だ』というシグナルを出していたんです」。

これが水野氏にとっての、VRに取り組む転機になった。「今までと違うメディアだなと思ったんです。これまでって、本なら文字を読んで想像する、テレビなら画像を見て想像する、って思うんですが、VRは体験をそのまま与えるメディアじゃないかと」

帰国後、水野氏はVRコンテンツの開発を進めることになる。

VR=仮想現実ではない

仮想現実と訳されるVR。その和訳から、CGの映像が入っていなければならないのではと誤解する人が多い。

「『仮想現実』という訳があっていない。バーチャル(virtual)は『実質的な』という意味があります。『実質的な現実』と言ってもいいと思うんです。現実的な体験であればVRと言えます」

水野氏が2015年に設立した「アルファコード」が取り組むVRのキーワードは、この「現実的な体験」という部分になるだろう。

移住フェアや高知県のアンテナショップ用につくられたVRは、高知の飲み会やよさこい祭りを撮影し、高知の文化や暮らしが体験できるものだ。

営業用ツールとして、ある会社の地方にあるデータセンターを見学できるVRをつくった。海外で農作物を作っている人たちのVRもつくった。実際には行けない場所のことも体験できる。どんな人が、どんなものをつくっているのかが分かるだけでなく、そこで働く人たちの思いも伝えることができた。

共通しているのは、いずれも現実的な体験であり、ある意味、特別でない、日常の体験であることだ。

「VRは体験を発信するものです。普通、体験を発信すると言うと、エクストリーム(極端、過激)になってしまう。海の中、空中、ジェットコースターとか。でも、それは飽きられてしまう。VRの可能性は普通の体験にこそあると思います」

水野氏もVRに取り組み始めた当初は、現実でない領域にも取り組んだ。ゲームのVRだ。でも、気付いた。「現実でないゲームをVRで体験しても、『現実感』はあるが、やはり現実と地つづきになりにくい。」

もっと一般の人が自分の体験を発信できるメディアに

VRの今後については、水野氏は「可能性が多岐にわたり、正解はまだ分からない」と言う。その一方で、確かな手応えも感じている。

2017年2月、名作「星の王子さま」をモチーフにした音楽座ミュージカルの演目「リトルプリンス」をVRにした。ミュージカルのVRと言えば、観客席の最前列からの360度撮影、とイメージする人が多いと思うが、このリトルプリンスVRは、登場人物である「飛行士」の視点に立ったものである。見ている人が、物語の登場人物になれるというVRなのだ。

VRを見た人たちは一様に考え込んでいたという。「これって今までにないですよね」という感想が返ってきた。

「体験して新しい立場にたって物事を考えるということに新しい可能性がある、VRというメディアに力があるなと実感しました」と水野氏。

そんな可能性も感じる一方で、日本でのVRの裾野の広がりという点では、まだまだだと思っている。それが、今回「朝日VRアワード」を応援しようと思った理由だ。

「体験を発信するのがVR。その体験を発信できるんだというところで言えば、日本ではまだまだ一部の人しかできていない。VRって新しい映像を発信できるとか、技術的に面白いことができるというよりは、一般の人でも体験自体を発信できるメディアなんです」。

そのため、アルファコード社では専門的な知識がなくても簡単にVRを作れるVRider DIRECT(ブイライダーディレクト)を開発し、提供している。

そして、こう続ける。

「WEBができたときは、一般の人でも情報発信できるメディアとして使われた。VRも一緒の使い方をされるといいなと思います。VRの得意な人たちだけがVR技術をつかって、VRのためにコンテンツをつくっても仕方がない。こういう体験をしてもらいたい、こういう体験があったんだということを簡単に伝えられる世の中になったらいいなと思っています。WEBによる情報共有が世界を変えたように、VRによる体験共有というのが別の世界をつくるのではないでしょうか」

自分の心を動かしたVRを

「朝日VRアワード」はペット、人、自然の3部門。水野氏がVRで求めている「日常の体験」、「普段の体験」に合致している。

その上で水野氏は、応募者にこうエールを送る。

「人の心を動かそうとするのではなく、自分の心を動かしたものを切り取ってほしい。それが体験としていいものになるのではないかと思います」

■株式会社アルファコードについて

株式会社アルファコードは新しい技術・新しい考え方をお客様と一緒に、役に立つものにしていく会社です。VR・MR・AR技術を活かしたソリューションビジネスや、ゲーム、スマートフォン向けサービスの開発・提供を事業の柱に活動しています。

■代表取締役社長 CEO 兼 CTO 水野拓宏

2006年、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)により天才プログラマー/スーパークリエータに認定。
2017年 株式会社インプレスR&D発行「インターネット白書2017」にて「拡大するVR」を寄稿。