朝日新聞
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「大学入学共通テスト」の導入で大学受験はどう変わる!? 第1回 記述式問題の導入で課題となるのは何か

「大学入学共通テスト」のモデル問題例では、国語と数学に記述式問題が導入されている点が注目された。思考力・判断力・表現力を問うための画期的な出題である。解答の文字数や時間配分など、問題としての質を代々木ゼミナールの専門家3名が問う。

文/武田 洋子 写真/山本 倫子

思考力に加え判断力や表現力を問う記述式 マークシート式に風穴

代々木ゼミナール専門家プロフィール

左から佐藤雄太郎さん、土生昌彦さん、加藤広行さん
教育総合研究所 所長
佐藤 雄太郎
さとう・ゆうたろう/2008年入職。以降、中学・高校向けの教員研修、大学・専門学校の支援事業、資格・検定講座の提供や生涯学習向け講座の開発など各種事業の業務に従事。
教材研究センター 上席主幹研究員
土生 昌彦
はぶ・まさひこ/1995年入職。代々木ゼミナールのテキスト編集・模試作成・大学入試問題分析、問題集・参考書作成などの業務に従事。現在、国語教育センターで現代文、小論文を担当。
入試情報室 主幹研究員
加藤 広行
かとう・ひろゆき/1987年、入職。以降、長年にわたり大学入試情報の収集・分析と、校舎内外の大学入試研究会やセミナーにおける受験生・保護者・教員への情報発信業務に従事。

加藤今年2017年5月に「大学入学共通テスト」のモデル問題例が公表されましたが、2020年度から国語と数学に記述式問題が導入されるのは画期的です。

佐藤2000年あたりから、PISAの結果を通じて、特に読解力の低下が課題となっていました。学力全体を向上させるには大学受験に落とし込むのが最良であるという判断でしょう。表現力を問うことで、従来のマークシート式に風穴を開けたということだと思います。

土生私大を含め、マークシートの結果のみで入学が決まってしまうことが多い現状では、今後、ますます重要性が高まってくる思考力・判断力・表現力を十分に見ることができないという危機感が背景にあると思います。

加藤授業などの現場で生徒達が読めない・書けないという傾向を感じますか?

土生最近、急に変わったとは感じませんが、ボリュームゾーンより下の学力層の生徒が「書くこと」を面倒に感じる傾向はあるのではないでしょうか。

加藤国語と数学の2教科での記述式問題導入という点はどうでしょうか。

土生記述式の導入そのものには賛成です。全教科一斉に記述式を導入するのは無理ですから、まず2教科で先行的に導入するのは現実的だと思います。とくに国語は,国語以外の科目にも影響を与えますので、記述式導入の意味は大きいと感じます。

佐藤知識の活用力を測るのであれば、理科・社会の方がいいのではと思いますが、運用面で断念したのではないでしょうか。

加藤理科・社会は2024年度からの導入予定ですね。

佐藤共通一次試験もセンター試験も、学習指導要領が大幅に改訂された後に実施されています。記述式導入といった試験の仕様や形式を大幅に変えるタイミングは、本来であれば、2024年度以降が妥当だったのではないかと思います。

記述式問題の文字数 試験時間などが課題に

加藤記述問題は国語・数学とも3問ずつということですが。

土生問題数をこれ以上増やすと、試験時間が長くなりすぎるという問題が出てくると思います。

佐藤試行調査(大学入学共通テストのプレテスト)の実施要領等で示された国語と数学の試験時間を考えると、多いくらいだと思います。

加藤しかし記述式の配点は小さそうです。配点は小さくても、やることに意義があるという考え方なのかもしれません。国語の120字という設定はどうでしょう。

土生120字という字数は一般的な記述問題としては、やや長い。東大前期の現代文のほとんどは60字前後、北大や東北大では30~50字の問題もありますから、字数をもう少し減らすことも可能ではないでしょうか。

佐藤30字というと新聞記事の小見出し(リード文)程度の分量ですね。

土生記述式では字数が短いから簡単な問題とは必ずしもいえません。逆に本文の抜き書きに頼ることができない分、真の要約力が問われる場合もあります。また120字の文章を書きこなすことは、今の受験生にはなかなかむずかしいですね。

佐藤SNSの流行もあって、「ひと言・ふた言」の文章に慣れてしまっている層にとっては、120字は大変でしょう。大問3つと言えども時間内に解答できるかどうかが懸念されます。

加藤時間の話が出ましたが、試験時間は国語が20分程度、数学が10分程度、延長される予定です。そうなると国語は合計で100分ですか。難関国立大は120分くらいの試験時間で実施していますが、一般的にはちょっと長すぎますね。

土生ちょっと長いと思います。100分間の集中を一般的な受験生に強いるのは、ちょっと酷ですね。下手をすると記述問題を捨てて、余った時間をマークシート型の問題に充てる生徒が出て来ないか、心配です。マークシート問題の分量を少し減らして、従来通り80分で実施する方法もあったのではないでしょうか。

佐藤国語は、大学入学共通テストから、現代文に加え古文・漢文も含めた成績提供となるので、大幅に削れないんでしょうね。数学で記述問題があるのは数Iだけなので10分の延長は妥当でしょうか。

加藤2006年度入試で英語にリスニングが導入された際はICプレーヤーの不具合が、また2012年度は地理歴史・公民で問題冊子の配付ミスが問題となりました。

土生私は当初、英語の筆記とリスニングのように、国語の記述式をマークシート式とは別個に実施するのではないかと思っていました。

加藤また、悪天候などで開始が遅れると、さらに試験時間が伸びてしまいますね。

佐藤共通テストの実施に加え、4技能評価の成績処理もありますから、初年度はいろいろと問題が出てくるでしょう。

加藤受験生に混乱を与えないことが最重要課題だと思います。

代々木ゼミナール