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駅は無人、でもきっぷは手売り 委託店、ぬくもり半世紀

2011年1月30日0時49分

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写真:切符を販売する江原米穀店の江原公子さん。食品などの商品と一緒に売っている=山陽小野田市拡大切符を販売する江原米穀店の江原公子さん。食品などの商品と一緒に売っている=山陽小野田市

 JRの無人駅近くで切符の販売を請け負っている店が、県内に14カ所ある。ほとんどが旧国鉄時代から営業してきたところで、売り手の高齢化が進むが、人と人とのつながりを支えに営業を続けている。

 宇部市のJR宇部線・草江駅前にある駄菓子屋「西村商店」は、切符の販売を始めて50年以上になる。初乗りの140円から、西は博多(2360円)、東は広島(2520円)まで、約30種類を扱っている。

 「新山口まで? 400円だね。常盤は140円、丸尾は190円よ」。店主の西村キミさん(91)は、草江駅発のすべての運賃が頭の中に入っている。

 委託販売を引き受けたのは、切符のついでにお菓子も買ってもらえる、と期待したから。現在、切符を買うのは1日30〜40人ほど。手数料は売り上げの5分で、もうけはほとんどないが、続けているのは、人のぬくもりを感じることが出来るからだ。

 山口宇部空港に近く、空港からの旅行客も多い。昨年12月、若い女性が来店した。一人旅で、山口市の湯田温泉に行くという。「この時期は日が落ちるのが早いから、行きたいところを絞って観光した方が安全よ」。切符を渡す時、一言付け加えた。

 2日後の夜、その女性が再びやって来た。「東京に帰るんだけど、その前にお礼を伝えたくて」。短いやり取りだったが胸が温かくなった。「切符を通した触れ合いがええ。元気な限り続けたい」

 JR小野田線・南中川駅(山陽小野田市)近くにある江原米穀店の江原公子さん(87)も同じ思いだ。「人とのやり取りが楽しいから続けている」と切符を扱って30年以上になる。

 切符を買い求める人は1日10〜15人。熱心な鉄道ファンは、東京など遠方から来ては何種類も買っていく。「この場所に来ることに意味がある」と力説する人もいる。熱意に打たれて、鉄道カレンダーをあげると、目を輝かせて喜んだ姿は今も目に焼き付いている。宇部出身のタレント西村知美さん(40)がテレビの撮影で訪れ、かつて切符を買いに来ていたと知らされ、驚いたこともある。

 「体力が続く限りは売っていきたいと思っているんだけど。もう、この年齢だからね……」。後継者はいない。

 JR西日本広島支社によると、委託販売は無人駅から乗る客の運賃をきちんと回収できるようにと、旧国鉄時代に導入した。小売店側はJRから切符を買い、JR側は売れた分の一部を手数料として支払う。

 広島支社のまとめでは、在来線の無人駅は県内に107カ所(2010年12月末時点)あり、このうち14カ所で民間の小売店に、34カ所で自治体に販売を委託している。14カ所の小売店のうち、12カ所は1987年の国鉄民営化以前から委託していて、担当者は「委託先から『高齢で後継ぎがいない』という声をよく聞く。(委託の)担い手が減っていくことは否めない」と話している。(大井穣)

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