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日航、操縦士を自社養成した米の訓練所閉鎖へ 経費節減

2010年10月11日13時7分

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写真:8月に訓練が終了した日本航空ナパ運航乗員訓練所の駐機場には、今も日航の塗装を施した訓練機が並んでいる=9日午前、米カリフォルニア州ナパ8月に訓練が終了した日本航空ナパ運航乗員訓練所の駐機場には、今も日航の塗装を施した訓練機が並んでいる=9日午前、米カリフォルニア州ナパ

写真:森田進治所長=8日午後、米カリフォルニア州ナパ、永田写す森田進治所長=8日午後、米カリフォルニア州ナパ、永田写す

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 【ナパ(米カリフォルニア州)=永田工】経営再建中の日本航空が、パイロットを養成してきた当地のナパ運航乗員訓練所を閉鎖する。経営合理化の一環で、年約25億円の経費節減を見込む。訓練所は同社が1971年に日本の航空会社で初めてパイロットの養成を始めた施設で、約2200人の訓練生が卒業した。

 日航は経営破綻(はたん)後の今春にパイロット候補として入社した訓練生に、地上職への配置転換か早期退職を求めており、訓練所の閉鎖で日航は自社での養成を事実上断念したことになる。

 日航によると、訓練は8月12日に終わり、訓練生や駐在員の大半はすでに帰国した。日航は操縦士の削減にも着手しており、「多額の固定費がかかる訓練所を維持し続けることは経済合理性に乏しいとの結論に至った」と説明している。当面、航空大学校の卒業生を含めてパイロット採用の予定はない。

 ナパは年間を通じて気候が安定し、訓練に適している。訓練所では7月現在で約7万平方メートルの施設と訓練用の小型機33機を所有している。日本の航空会社では、全日空が91年から米国の訓練所で自社養成を開始。日航系のジャルエクスプレスも豪州で養成していたが、現在は中断している。

■開設から39年、2200人が巣立つ

 日航ナパ運航乗員訓練所の森田進治さん(58)は、最後の所長になった。入社から35年間で3度、ここで訓練に携わった。経営破綻した会社の浮沈に複雑な思いを抱えながら、訓練所の閉鎖とともにパイロット人生にも区切りをつけようとしている。

 8日午後、周辺にワイナリーやブドウ畑が広がる米カリフォルニア州北部のナパ郡空港。森田さんとマネジャーの白井一弘さん(50)、渡辺慎太郎さん(49)が淡々と閉鎖の準備を進めていた。

 訓練生はすでに帰国し、職員も去った建物は静まりかえる。開設から39年間。ここを巣立った操縦士は約2200人。一定の操縦資格をもって入社する航空大卒業生と異なり、「自社養成」と呼ばれる一般大卒の訓練生は、ここで初めて飛行機を操る。最初はプロペラ一つの小型機、そしてプロペラが二つある双発機に進み、単独での飛行も経験。地上が見えない高度を飛ぶこともある旅客機を想定して窓を覆い、計器だけを見て飛ぶ訓練も積む。ナパでの訓練生活は16カ月。中には適性がないとみなされ、途中帰国する訓練生もいる。

 最後の訓練は8月12日だった。25年前に日航ジャンボ機が群馬・御巣鷹の尾根に墜落した日に偶然、重なった。米国人も含むスタッフらと全員で黙祷(もくとう)し、安全運航を改めて誓った。

 その翌日。日航のロゴをつけた訓練用の小型機で最後のお披露目飛行に臨んだ。訓練生や米国人教官、スタッフらが見守る中、タッチ・アンド・ゴーや低空飛行など訓練課題を実演した。40分ほどの飛行の最後、滑走路の中心に引かれた白い点線にぴたりと着地すると、訓練生から感嘆の声が漏れた。

 「どうや」。訓練生時代からの口癖を心の中でつぶやいた。誘導路では地元の消防車が放水のアーチを掛けて出迎えた。

 ナパは、航空大を卒業して日航に入社した翌年の76年、初めて訪れた外国だった。英語の訓練に戸惑い、管制官の指示が聞き取れず苦しんだ。2度目は副操縦士になった15年後。相談相手として9人の訓練生と毎日のように訓練日誌を交換して励ました。

 そして昨年2月から所長として3度目の赴任。初めての単独飛行に出る訓練生を送り出すと、無事に戻ってこられるか気をもんだ。パイロットへの道を絶たれた訓練生は、帰国の際に抱きしめて見送った。

 13日にナパを離れ、これまでの訓練記録を携えて帰国する。パイロット養成の前途は不透明だが、「貴重な知的財産」と本社に引き継ぐ。

 今月末、定年まで1年半を残して日航を去る。8月の飛行は、自身にとって日航での最後の飛行にもなった。「ナパで人を育てるすばらしさを知った」と未練はない。会社に残る後輩には「再生をめざして力を合わせて」と期待する。

 71年以来、ナパでの訓練の総時間は62万1093時間52分。この間、人身事故は一件もなかった。

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