ハッピースカイ with ANAラーニング
2010年11月5日11時2分
「ねえねえ、うちで取れた枝豆、スチュワーデスさんも食べなさいよ」とおいしそうに茹でた枝豆をビニール袋に入れて手渡してくださるお客様・・・・・東京から地方に向かう小型機内(160人乗り位の飛行機)でのアットホームな出来事です。
団体旅行の方でほとんどの座席が占められています。私の親と同年代と思われる方が多いのですが、皆さんパワフルです。元気におしゃべりし、笑い、女性の方はみかんやお菓子などを子供の遠足のようにお持ち込みになり、男性陣はビールで乾杯。とてもにぎやかで楽しい空間です。
『きっと、このお母さんはお子様方も独立して、ご自身のための時間を楽しんでいらっしゃるのね』『この方は、今まで家族のために一生懸命働いてきて最近定年退職されたのかしら。お疲れ様です』『この旅行のために貯金をして、 この日をとても楽しみにされていたのですね・・・・』
にぎやかなお客様の様子を見て、いろいろなことに想像をめぐらせます。
本当に勝手な想像で申し訳ないのですが、そのように思うと自分の親や家族のように感じ、ますます何かして差し上げたい、機内での時間を楽しんでいただきたいという気持ちが増してきます。
お飲み物をお持ちしながら楽しそうな会話に加わらせていただくと、「やっと子育ても終わってこれからは、いろいろなところに出かけたいと思っているの」「若いうちは、一生懸命働きなさい。そうすると年をとってから、楽しめるからね」などと、私の勝手な想像通りのことをおっしゃる方もいらっしゃって、内心『私のお客様を見る目もまんざらではない』などと思ったりもします。
さらに会話は進み、私から「子育てでは何が一番大切ですか」と質問していろいろなアドバイスを頂いたりもします。「去年は鹿児島の指宿に行ってきたの。砂風呂がとてもよかったよ」「でも、○○にある(お客様の地元の町名)××ランドにも砂風呂があるじゃない。あそこも結構良いわよ」「あの辺に(私たちが宿泊するホテルの近く)△△っていうお店があるんだけど、そこの□□饅頭はとってもおいしいのよ。日持ちもするし」
お客様にとっては機内でCAを相手にする、時間つぶしのたわいもない会話かもしれません。しかし私にとってはいろいろと教えて頂ける、なによりも元気をわけて頂ける、とても楽しい時間なのです。
先日、九州へ向かう便でのことです。お客様のテーブルにある空のコップをお下げしながら通路を歩いていると、ニコニコと私を見ている年配の男性が目に入りました。
何かご要望がおありなのかなと思い、その方のところへ伺うと、ぼそっと「・・・結婚50周年・・・」とおっしゃったのです。目を移すとお隣にはよそ行きのお召し物姿で控えめにお座りになっている奥様が恥ずかしそうに私を見てほほ笑んでいます。よくよく伺うと結婚50周年の記念で、初めてお2人でご旅行なさるとのこと。
男性の方がこのようなお話を自らCAにされるのは、さぞかしうれしいことだからなのでしょう。目を細めながら温かな笑顔でうれしそうにお話しになる旦那様の様子からもそのうれしさが伝わってきます。さっそく私は絵はがきに「祝50周年!これからもお二人仲良く、お幸せに・・・・」とメッセージを書いて、自前のハートのシールを張り、蛍光ペンで色づけをした、少し不器用なお祝いカードをお渡ししました。旦那様は少し照れながら「ありがとう」と受け取ってくださいました。
『とてもほほ笑ましく、こちらこそ温かい気持ちになりました。ありがとうございます』
機内では、私どもが一方的にお客様へおもてなしのサービスをしているのではなく、お客様からもいろいろな形でおもてなしの心をいただいています。普段は忙しいビジネスマンから「手が空いてからでいいのでキャンディーください」など気遣いの言葉をかけてくださることも少なくありません。
飛行時間が短い便もありますが、CAは出来る限り多くのお客様とお話をし、心の通いあう時間を作っていきたいと思っています。ぜひ皆様も飛行機にお乗りになったときは、気軽にCAにお声をかけてくださいね。

1986年、ANA(全日本空輸株式会社)に入社。客室乗務員として国内線に勤務。客室乗務員新入社員研修の人事インストラクターとして新入社員の教育に携わったほか、皇室、首相チャーターフライトの国内線チーフパーサーを担当。フライト品質の社内評価者としての品質点検並びに品質向上の推進役として活動。現在は乗務すると共に、ANAラーニング株式会社に在籍、接遇マナー研修の企画と講師を担当。
安いけど一体どうなってるの?格安を実現している裏の裏に迫り、LCCに関する数々の疑問に答えていく一冊