人が吸うたばこの煙によって健康を害される恐れがある受動喫煙。対策を強化する健康増進法改正案の今国会への提出が検討されてきたが、次の国会に先送りされることになった。争点となったのは飲食店での喫煙。屋内を原則、禁煙とする厳しい規制を盛り込んだ厚生労働省案と、一定面積以下ならば表示すれば喫煙可とした自民党案の溝は大きく、合意できなかった。

 たばこを吸わない人の健康と、吸う人の権利について、町の人はどう考えているのか。記者が5月末、東京都港区の飲食店や喫煙所を訪ねた。

 JR新橋駅から徒歩5分。囲炉裏で焼く魚介類や豊富な日本酒が売りの居酒屋「方舟(はこぶね)」は今年1月、店舗内を禁煙にした。客層は30~40代のサラリーマンが中心で、半数以上は喫煙者。店長の藤田尚嗣さんは「お客さんが減るかも、という心配はもちろんあった」と明かす。

店内禁煙の居酒屋「方舟(はこぶね)」。客席の目の前で調理される魚の囲炉裏焼きは店の看板メニューだ=東京都港区

 最初の2カ月は、入店時に「禁煙」と知り、他の店に行ってしまう客も6、7組ほどいた。その後はそうしたことはなくなり、喫煙できた昨年の同時期と比べて売り上げは、ほぼ同じ。居酒屋の運営会社は、他の系列店での禁煙化も検討しているという。

 たばこを吸わない会社員の男性客(47)は「出張先の欧米の飲食店では吸えない。日本も世界標準に近づけるべきだ」。

 一方、喫煙できるほかの店がいっぱいだったから来店したという喫煙者の会社員男性(36)は不満げだ。「たばことお酒の組み合わせは最高。喫煙者だけで飲みに行くなら、禁煙の店は選ばない」。飲食店の受動喫煙対策について尋ねると、「国がたとえ禁煙にしても、こっそり吸わせる店が出ると思う。ある程度は吸える環境を残したほうが、みんながルールを守るはず」。