原爆投下など「核」の悲劇をテーマに米国で現代美術を制作している蔦谷 楽(つたや がく)さん(47)の企画展が、埼玉県東松山市下唐子の丸木美術館で23日に開幕する。日米で取材やインタビューを重ね、複眼的な視点で「戦争」を寓話(ぐうわ)的に表現した作品が、日本国内で初めて紹介される。10月2日まで。

 蔦谷さんは東京出身。東京造形大学を卒業後、2006年に渡米。18年にニューヨークの大学でMFA(美術学修士)を取得、ニューヨークを拠点に活動していた。

 東日本大震災の原発事故を機に、放射能被害などへの関心が高まり、原爆を投下した爆撃機を展示する博物館、核兵器の開発に関係した場所などに足を運んだほか、広島や長崎の被爆者や研究者らにもインタビューを重ね、作品を発表するようになった。

 今回の作品展のタイトルは「ワープドライブ」。絵画作品では、原爆の開発や製造、米国の放射能被害などを描いた連作などが並ぶ。人種や国籍にこだわらずに鑑賞してもらうため、登場人物は昆虫や植物、動物として描いた。

 メイン会場には、日系人強制収容所と広島・長崎の「バラック」を模した建物に、スパイ容疑で収容・尋問された日系人1世の物語、核兵器の歴史などを伝える映像作品が投影される。原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」を擬人化し、爆撃機が見た夢をモチーフにした映像も映し出した。

 蔦谷さんは「日本では、原爆の延長に原発があり、つながっていることが見えにくい。いま世界で起きていることを、過去の記憶に基づいて理解する視点を作り出すために、国境を超えて共有できる物語を作りました」と話す。

 開幕日の午後2時から、蔦谷さんと学芸員のトークイベントが開かれる。また、9月27日にも、オンラインのトークイベントがある。月曜休館。問い合わせは丸木美術館(0493・22・3266)へ。(永沼仁)