森秀光 お金のセオリー

遺産分割がまとまらないとどうなる?

  • 森秀光
  • 2016年12月28日
  •   

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 遺産分割の問題が生じやすいのは、保有する資産のほとんどが自宅など、分割できないものである場合です。遺産分割の争いを避けるために、誰か一人に集中して相続させようとすれば、「遺留分(いりゅうぶん)の侵害」という問題が発生します。遺留分とは相続財産を一定の割合で受け取る権利のことです。しかし、公平さを優先して自宅や不動産を共有すれば、一時的に問題を先送りすることはできますが、相続後に、自由に処分できないやっかいな資産が残ることになります。

 民法では「法定相続分」が定められており、複数の相続人がその割合に応じて資産を承継するものとされています。しかしながら、遺産分割は、相続人による協議によることもできるとされているため、必ずしも法定相続割合によって遺産分割を行う必要がありません。このため、遺産分割をめぐる相続人間の争いが発生するケースが生じるのです。遺産分割がまとまらないと、様々な問題が生じます。

 まず、話し合いがまとまらなければ、原則として金融機関から現金の引き出しができません。相続が発生すると同時に金融機関は被相続人の資産をすべて凍結するのが通例です。また、不動産の名義変更や売却など、資産を自由に処分することもできません。このような場合、被相続人の配偶者に手元現金や自分名義の預金がなければ、生活費が足りなくなるおそれが出てきます。

 相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても相続開始日から10カ月以内にしなければなりません。そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する法定相続分に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。その際、「小規模宅地等の評価減の特例」や「配偶者の税額軽減」などが適用できない申告になりますので注意が必要です。

 その後に、相続財産の分割が行われ、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正または更正をすることができます。なお、この修正または更正において上記の特例を適用することができますが、特例の適用ができるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合に限られます。

 こうした状況にならないように、できるだけ申告期限までに遺産分割をまとめておきたいものです。

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PROFILE

森秀光(もり・ひでみつ)

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1966年生まれ。一橋大学経済学部卒業。1990(平成2)年に野村證券(株)入社後、主に個人富裕層向けの資産運用アドバイス、企業オーナー向けのコンサルティング業務に従事。2011年より森オフィス(株)代表取締役として個人向け資産コンサルティング業務に従事。中立的な立場から、有価証券だけでなく、不動産、自社株、相続・事業承継など、多様な側面から資産の分析を行い、最適な解決策を提供することを目指している。主な著書に「超低金利・大増税時代の資産防衛戦略」

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