小川フミオのモーターカー

世界の名車<第146回>画期的メカのコンパクト「日産チェリー」

  • 文 小川フミオ
  • 2017年1月16日

ボディーはカプセルシェイプと呼ばれていた

  • X-1の全長は3610ミリ、全幅は1470ミリとコンパクト

  • サイドウィンドーはアイラインウィンドーと呼称された

  • 70年モデルの2ドアのリアビュー

  • 当時のスカイライン1500(S50系)と同等の広さを誇った室内空間

  • 4ドアセダン1200GL

  • A12型と呼ばれた1200ccエンジンは80馬力で前輪を駆動

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 日産自動車が1970年に発売したチェリー(初代)は画期的なコンセプトだった。コンパクトな車体、前輪駆動による効率的なパッケージング、買いやすい価格。ただしそれは今から過去を振り返った場合。大きいことはいいことだと言われた当時、軽自動車の上というポジショニングは一般から高い評価を獲得するのが難しかった。

 チェリーで画期的だったメカニズム。エンジンを横置きしてその下に変速機を置くメカニカルレイアウトという凝った設計だった。メカを最小限のスペースに閉じ込めて、そのぶん乗員のための空間を広くとる。同時にエンジンから後輪へ動力を伝達するプロペラシャフトによる機械的損失を可能なかぎり減らす。前輪駆動のメリットはいまでこそ広く知られているが(フランスでは戦前から一般的だった)、チェリーは日産自動車にとって初の量産型前輪駆動車だった。

 70年夏から「あなたの想像をきっと超えてるチェリー」といったティザー(商品を見せない)3カ月にわたる広告キャンペーンで始まったマーケティング手法も印象的だったチェリー。2ドアと4ドアともにリアクオーターピラーの意匠が大胆で僕は好きだった。

 71年に追加されたハッチバックはさらにリアクォーター部分のボリューム感をうんと強調していて衝撃的だった。当時どことなく米国車と、クルマ好きの憧れだった英国のフォード・コーティナやロータス・ヨーロッパのミックスという雰囲気もあり、スタイリングは印象的で好ましい。

 ボディーは多様性に富んでおり、2ドアと4ドアのセダンは使い勝手を重視したものだ。そこに加わったファストバッククーペのスタイリングはとりわけスポーティーで目を惹(ひ)く魅力を持っていた。トップモデルとしてスポーティーなX-1、そしてのちにそのイメージをより強めたX-1Rも登場。74年にはチェリーF-IIへとモデルチェンジ。ボディーが大型化してより多くのユーザーの獲得をはかったぶん、とんがった個性は失ってしまう。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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