私の一枚

船乗りを目指していた17歳の頃 北村一輝さん

  • 2017年2月6日

商船高等専門学校時代の北村一輝さん(右)と親友。昔も今も変わらず、二人の時間はとても楽しいという

  • 俳優として確固たる存在感を示し活動している北村一輝さん

  • 北村さんが出演する「相棒-劇場版IV-」の一シーン(c)2017「相棒-劇場版IV-」パートナーズ

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 これは商船高等専門学校に通っていた16か17歳の頃。一番仲がよかった友人と寮で撮った写真です。壁の落書きは先輩たちが書いたもの。僕は群れるタイプではないのですが、彼とはウマが合い、いつも二人で遊んでいました。多感な年代に苦楽を共にした大切な存在で、彼とは今もよく会っています。

 子供の頃から映画が好きで、俳優への憧れがありましたが、同時に見聞を広げたいという強い思いもありました。中学を卒業後、国立の商船高専に進学し、船乗りを目指しました。学校があったのは、愛媛県の信号も何もない田舎の島。正直、なかなかの地獄でした。一番大変だったのが、体育会系の先輩後輩の序列が厳しい男だけの寮生活。何事も連帯責任で過酷なこともありました。

 でも船乗りは、ささいな失敗が命とりになるし、何があっても仲間の手を離さない連帯感が必要です。逃げ場のない学校と寮の厳しい生活を共にした親友や同期とは、かけがえのない深い絆が生まれたものです。

 そんな日々の中、僕のもう一つの夢であった俳優への思いが膨らみ、19歳の時に学校をやめ、俳優を目指して上京しました。何のコネも経験も、お金もなく、俳優として芽が出るまで約10年。よく「つらくなかった?」と聞かれますが、自分としては夢への階段を上っている途中で、つらいとか嫌だと思ったことはありません。正直、高専時代に比べればなんてことはなかったですね(笑)。

 無我夢中で走り続けて40代になり、これまで自分が強い鎧(よろい)を探していたと気付きました。「もっと変わりたい」「成長したい」と、ある意味メーターを振り切り、人の何倍も無理をしてきました。でも鎧の下の変わらない自分の根本や足元こそが大事で、そこを見直すことが大切だとわかりました。自分が向きたい方角を向いているか、時には立ち止まって見つめようと。最近は母親と旅行に出掛けたり、写真の友人をはじめ昔の友だちともよく会ったりと、人として大切な部分を見つめ直すように心がけています。

 昔から、50代で自分の代表作を作りたいと思ってきました。50代を前にした今、足元を固めるのは大きく飛ぶ前の必然かもしれませんし、人としてきちんとしなければ、次のステップに進む資格がないとも思う。でも何より「変わらないもの」を大切にする生活は精神的にとても充実しています。

    ◇

きたむら・かずき 俳優 1969年大阪生まれ。91年に本格映画デビュー。99年に『皆月』『日本黒社会LEY LINES』でキネマ旬報新人男優賞を受賞。主演ドラマ「大江戸事件帖 美味でそうろう2」(BS朝日 2月17日19時~放送)、土曜ドラマ「4号警備」(NHK総合 4月スタート)、映画『無限の住人』(17)、『羊の木』(18)が公開予定。

◆北村さんが出演する映画『相棒―劇場版ⅠⅤ―首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』が2月11日に全国で公開される。今回は、ミステリアスな国際犯罪組織と、特命係の「相棒」が対決。大規模テロ事件の阻止に向け、水谷豊演じる杉下右京の推理が、歴史上の悲しい出来事と事件のつながりに到達する。北村さんは犯罪組織に身を置く謎の男役。身のこなしも含め、とても印象的だ。

「僕が小学生の時から、水谷さんは燦然(さんぜん)と輝くスター。自分を見直しているタイミングで共演できたことは、僕には非常に大きな出来事です。水谷さんが作品に対し真摯(しんし)で、人として俳優として、現場の長として作品を牽引(けんいん)される姿を拝見し、自分の未熟さを痛感しました。今回の役どころは、損得勘定で動く人が多いこのご時世に、人として失ってはいけない部分を大切にし、葛藤する人間。犯した行為は許されませんが、彼の貫く正義には感じるところが多かった。僕と同世代の方は、これまで無理をしたり、我慢したりして走ってきた方が多いと思います。ここで一度立ちどまり、これから自分が誇りに思えるような爪痕を残したい。そんなことを考えるきっかけになったらうれしいです」

(聞き手:田中亜紀子)

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