森秀光 お金のセオリー

「ラップ口座」二つの問題点

  • 森秀光
  • 2017年2月22日
  •   

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 「ラップ口座」とは、資産運用を金融機関(証券会社や信託銀行)に一任する口座のことです。「ラップ(wrap)」とは「包む」という意味があり、資産運用に関する様々なサービスを包括して提供することからその名が使用されています。ラップサービスを提供する金融機関は、顧客の目標とする利回りやリスク許容度などを聴取した上で、運用のプロが、それに沿った資産配分や商品選択、配分見直しなどを行います。

 通常の証券取引との違いは、商品の売買の都度に手数料がかかるのではなく、資産残高に応じて投資一任報酬が徴収されることです。顧客の資産残高が増加するほど金融機関の収入も増加する仕組みのため、顧客と金融機関が資産を増やすという同じ目標を共有し、利害が一致しやすいことが利点とされています。

 ここ数年でラップ口座の残高・契約件数は急拡大しています。金融機関が熱心になって勧めていることが大きな要因ですが、背景には、投信の乗り換え勧誘営業に対して金融庁の監視の目が厳しくなっていることがあります。

 ラップ口座の本質的な問題点は、手数料が適正な水準か、運用を金融機関に任せていいのか、の二つです。

 まずは手数料の問題。あるファンドラップのケースでは、2%程度の投資一任報酬以外に、1.5%程度の投資信託の投資信託報酬等がかかるため、投資家が支払う手数料は、合計で年間3.5%程度に達します。仮に、バランス型ポートフォリオの期待リターンを5%程度とすると、期待リターンの大半が運用コストで確実に消えてしまうことになります。長期投資により資産形成を目指す場合、年間の支払手数料が運用成果に大きな影響を及ぼします。手数料が、提供されるサービスや運用成果の対価として適正でないケースが多いことが問題点の一つです。

 次に「おまかせ運用」の問題。ラップ口座で運用対象とされる投資信託は、販売会社の系列の投資運用業者が設定する投資信託が平均で5割前後を占めており、中には7割近くに達するものもあります。顧客よりも系列会社の利益を優先している懸念があり、顧客本位の資産運用が行われているとは必ずしも言えない状況です。

 結論としてラップ口座は、「顧客と金融機関の利害が一致する」仕組みは望ましいものの、「手数料が適正でないこと」と「運用が顧客本位でない懸念があること」のデメリットが大きく、お勧めできるサービスとは言えないというのが実情です。

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PROFILE

森秀光(もり・ひでみつ)キャピタル・ソリューション(株)代表取締役

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1990(平成2)年大手証券会社に入社後、個人富裕層向けの資産運用アドバイス、上場法人向けのコンサルティング業務等に従事。2014年より現職。有価証券だけでなく、不動産、自社株、相続・事業承継等、多様な側面から顧客資産の分析を行い、最適な解決策を提供することを目指している。資産運用のプロフェッショナルとして、幅広く講演、研修、セミナー等を行っている。キャピタル・ソリューション(株)公式HP:http://www.c-solution.jp/

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