本音のマイホーム

「持ち家と賃貸、どっちが得か」に正解はない!?

  • 山下伸介
  • 2017年3月15日
  •   

[PR]

 家は買ったほうが得か、それとも賃貸のほうが得か? 長年、住宅情報誌の編集をやってきて、何度この質問を受けたかわからない。情報誌でもこのお題で数えきれないほど記事をつくってきたが、結論は「あなた次第」と読者に委ねるのが常だった。

 検討材料だけ提示して結論を読み手任せにする構成に、「結局どっちが得なんだ!?」と苦言めいた読者コメントをもらうこともあったが、実際にそうとしか言えないのだから仕方ない。では、なぜ損得の結論を断定できないのか。

 ひとつ目の理由は、金銭面の損得比較は持ち家の価格や賃貸の家賃の条件設定次第で結論が変わってしまうからだ。持ち家がトクになる設定にすればそうなるし、逆もまたしかり。そんな恣意(しい)的な設定で結論を断定するほうが読者に対して不誠実というものだろう。

 ならば恣意的でなく「ナチュラルに」設定すればよさそうなものだが、それが極めて難しいというのがふたつ目の理由だ。持ち家と賃貸の比較には二つのアプローチがある。ひとつは家の水準をそろえる方法だ。広さや間取りや立地が同等の物件を選択し、「住み心地」をそろえてコストを比べるのだ。

 もうひとつは、誰でも毎月払える住宅費には上限があるので、月額コストをそろえる方法だ。具体的には持ち家の「ローン返済+管理費等」と賃貸の「家賃+共益費等」を同等にして、それ以外の費用で差がつくシミュレーションになる。

 どちらも簡単そうだが、これが実は難しい。前者の場合、たとえば分譲マンションでは本流の70平方メートル・3LDKという条件でそろえようとすると、賃貸物件の選択肢が極めて少ないという現実にぶつかる。見つかってもいわゆる高級賃貸の部類で家賃水準がかなり高くなり、いかにも不公平な比較に見えてしまう。

 逆に月々の支払いを同等にしようとすると、分譲の70平方メートル・3LDKを買う月額コストでは、賃貸だと40~60平方メートルの2DKや2LDKが選択肢の大半になってしまう。これでは明らかに住み心地が違うので、やはり公平な比較にはならない。

 つまり、現実の住宅市場を見ると持ち家と賃貸を公平に比較することには無理があるのだ。あえて言うなら、「広さは70平方メートル以上、床暖房や食洗器もほしい」などと住宅の質にこだわれば買ったほうが得になる。逆に住宅の質はさておき、とにかく家賃の安い賃貸に住み続ければ賃貸のほうが得になる。

 ただこれは極論で、現実の住まい選びでは、家の質とコストの安さの間でバランスをとろうとする。その場合の損得は、どちら寄りの選択をするか次第であり、厳密に言えば、持ち家と賃貸それぞれに住み続ける期間やローン金利によっても損得の分岐点は変わってくる。

 結局、特定の条件設定をもとにした「持ち家と賃貸の損得比較シミュレーション」だけでは、損得の結論を出す決定打にはならない。いつ、どこで、どんな家に、どれくらいの期間住むつもりなのか、によって「持ち家vs賃貸」の結論は変わるのだ。

 ちなみに筆者は知り合いなどから直接尋ねられたら、個別の条件を聞いてアドバイスしている。そして「買ったほうが得」あるいは「賃貸のほうが得」と、人によって違う結論を伝えることもある。カメレオン的だが、それが最も誠実な答え方だと思っている。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

山下伸介(やました・しんすけ)エディター&ライター

写真

京都大学工学部卒。株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「スーモ新築マンション」の編集長を10年半務める。これまで優に1000名を超える住宅購入者、検討者の実例を見てきた経験から、損得では語れない住まい選びの勘所に詳しい。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。一般財団法人住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー運営委員(2005~2014年)も務めた。ブログはこちら

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!