時計のセカイ

2万円台で買える「アンティーク」 ダン・ヘンリー 1963

  • 広田雅将
  • 2017年3月9日

1963年製クロノグラフを範に取った、ダン・ヘンリー 1963コレクション。左はシルバー、右はブラックの回転ベゼルを持つ。搭載するのはミヨタ製のクオーツクロノグラフムーブメント。サブダイヤルを併用することで、10分の1秒まで計測可能である。SS(直径42.5mm)。50m防水。限定1963本。230ドル

 近頃、2万円から3万円の価格帯で面白い時計が増えている。中身はクオーツ、しかし凝った外装と、交換式のストラップを持つのが特徴だ。こういった時計でもっとも好きなのはKnotである。しかし時計としての完成度を言えば、今回取り上げる、アメリカの「ダン・ヘンリー」も負けてはいない。このコーナーでは原則、国内未入荷の時計は取り上げない。しかし禁を破りたくなるほど、ダン・ヘンリーの時計は魅力的だ。

時計コレクターが作るオリジナルウォッチ

 創業者のダン・ヘンリーはこう述べる。「新しい時計を買うことが難しかったので、私はハンターになり、膨大な古い時計のコレクションを持つに至った。しかし私が持っていない時計を見つけるのは、もはや非常に難しいし、あっても買うお金はない。であれば、私は愛する物を作ろうと考えた。それがヴィンテージウォッチだった」。

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 10歳から時計(ウォッチとクロック)を集めるようになったダン・ヘンリーは、やがて修理も手がけるようになった。時計に入れ込んだ彼が、自分で時計を作ろうと思ったのは当然だろう。友人やコレクター向けに作ったオリジナルウォッチは好評を博し、続いて彼は、魅力的だが、安価なヴィンテージウォッチを作ろうと考えた。幸いにも「コレクターとして40年以上の経験があるため、時計のデザインはまったく難しくなかった」とのこと。「しかし私の考えていることを実現してくれる工房を見つけるのは大変だった」。

 コレクター好みの時計を作る人たちは、ゼンマイで動く機械式のムーブメントを使いたがる。しかし機械式ムーブメントはコストが高くなり、不良品率も高い。そこでダン・ヘンリーは電池で動くクオーツムーブメントを使おうと考えた。クオーツムーブメントならば、値段も下がるし、故障もほぼない。「私は魅力的で、毎日使えるヴィンテージウォッチを作りたかったのだ」と彼は述べた。しかしクオーツを使うと、見た目を昔風にできないという問題がある。とりわけ、ストップウォッチ付きのクロノグラフはなおさらだった。うならされたのは、ダン・ヘンリーのムーブメントの選択だ。ヒット作「1963」で説明したい。(次のページに続く)

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PROFILE

広田雅将(ひろた・まさゆき)時計ジャーナリスト

写真

1974年大阪府生まれ。サラリーマンなどを経て現職。現・時計専門誌クロノス日本版(www.webchronos)編集長。国内外の時計賞で審査員を務める。趣味は旅行、温泉、食べること、時計。監修に『100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』『続・100万円以上の腕時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダー刊)が、共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン』(日刊工業新聞刊)『アイコニックピースの肖像 名機30』がある

BOOK

「ジャパン・メイド トゥールビヨン-超高級機械式腕時計に挑んだ日本のモノづくり-」(B&Tブックス)

独立時計師の浅岡肇さんと由紀精密、工具メーカーであるOSGとの共同企画である「プロジェクトT」をまとめたものです。現役の独立時計師が時計作りについて書いた本は、これを含めても数冊しかないでしょう。その中で広田は日本の時計産業がいかにして興り、衰退したかを書かせていただいています。ベースになったのはクロノスの連載記事ですが、内容は大幅に変えてあります。今の時計作りに興味のある方はぜひぜひ。

「アイコニックピースの肖像 名機30」(東京カレンダーMOOKS)

各メーカーのいわゆる「アイコン」モデルを、第一作と最新作を中心に取りあげたものです。各モデルのファーストモデルをこれだけ撮り下ろした本は、おそらくこれのみでしょう。また、プロジェクトの当事者たちのインタビューや、ムーブメントの詳細解説なども記しています。価格の高い時計が中心になってしまいますが、各モデルの概要をコンパクトに知るには分かりやすい書籍ではないかと思います。

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