独自に製品テストする批評誌「MONOQLO」 検証の舞台裏

  • 2017年3月23日

8周年を迎えた雑誌MONOQLO

 自分たちで商品をテストした結果に基づき批評する雑誌「MONOQLO」(晋遊舎)が、最新2017年5月号で8周年を迎えた。筆者もよく購読している雑誌だが、独自のテストはどのように行っているのか。メーカーからの苦情はないのかなどが気になっていた。そこで、実際に検証している現場や編集部を訪ねて、誌面づくりの舞台裏を取材した。

 3月上旬の平日午後、東京都中央区にある料理教室を訪ねると、ボトル型のブレンダーの検証作業が始まるところだった。

 対象となるのは7種類。採点を担当する専門家は、料理家の風間章子さんとフードコーディネーターの平尾由希さんだ。バナナ、トマト、パプリカと豆乳が準備されていて、すべての製品に同じ分量を入れてスムージーをつくる。風間さんと平尾さんは、スイッチの押しやすさ、動作音、持ち運び、使用後の掃除のしやすさといった項目ごとに採点していく。その横では、MONOQLO編集部の担当編集者の桜井めぐみさんが、できたスムージーをざるでこし、網に残ったかすの重さを計測して記録していた。

ボトル型ブレンダーをテストする料理家の風間章子さん(中央)とフードコーディネーターの平尾由希さん(右)

 2人の専門家は、互いに感想を口にしながら採点を進めていく。「この持ち手は邪魔」「絶対このすき間に汚れがたまる」など、厳しいダメ出しも多い。準備も含めると検証には3時間ほどかかっていた。そして、採点結果は、最新5月号の「日用品の新定番」の中で、「忙しい朝の救世主!1番ラクにつくれたのはアイリスオーヤマ!」という見だしで掲載された。筆者もじっと検証結果を見て自分なりに採点していたが、買うならこれだ、と思った製品は、図らずも専門家と同じだった。

 ブレンダーに続いて、よそったご飯の重さを計測できるしゃもじや、炭水化物量やカロリーを表示してくれるクッキングスケールなど、台所用品の使い勝手を調べる。話題の「健康になれるパスタ」を試食させてもらったが、まずくはないが、おいしくはない、という感想だった。

炭水化物量が一目でわかるスケールも慎重にテスト

 この日のもう一つの主な検証テーマは、「おつまみ缶詰30製品」という企画の缶詰食べ比べ。ひとつ100円程度のよく見かける商品から、300円以上の高級品までが集められた。一つひとつラベルをはがして、見た目では判断がつかないようにする。その上で、風間さんと平尾さんが実際に食べて採点していくのだ。

ラベルをはがされ、試食を待つ大量の缶詰

 実際に見たテスト現場は、専門家の判断を重視しつつも、客観性も確保されるよう工夫しているように見えた。使い勝手や味は、主観に左右される項目ではあるが、採点表にはきちんと理由も書いているので、仮に問い合わせがあっても、ランキングの理由は説明できるだろう。

 とはいえ、自社製品が「ベストバイ」に選ばれなかったメーカーの中には、納得がいかない社もあるに違いない。辛口の採点に対して抗議はないのだろうか。

メーカーからの抗議は「ほぼゼロ」!?

 東京・神保町にあるMONOQLO編集部で、小島健良編集長に質問した。昨年10月に編集長に就任する前から、編集部で数々の企画を担当してきた生え抜きの“テストする”編集者だ。

 メーカーから抗議が殺到して困ることはないのか、という質問の答えは意外だった。

 「たくさんあるだろう、と思われるかもしれませんが、ほぼゼロです。1号あたり1件もないです。あまり面白くなくてすいません」

 8年前の創刊後しばらくは、やはりメーカーから抗議を受けることがあった。今も“ごく一部”のメーカーについては“出入り禁止”状態にある。しかし、数年前からはほとんどなくなったそうだ。

 MONOQLO編集部では、企画で使う商品をメーカーから借り受ける場合もある。その際は、どんなテーマで、何項目のテストを行うかを企画書で提示してメーカーに依頼する。当然、借り受けたからといって結果が甘くなることはなく、原稿のチェックも受けない。それでも、メーカーは協力してくれるそうだ。

 「大企業ほど、『下位にはならない』という自負があるのかすぐ貸してくれる。中小メーカーの場合は『何位になっても宣伝になるから』という理由で協力してくれる社や、逆に自社製品を持ち込んでくる社もある」(小島編集長)

 レビューを書き込めるネット通販や価格比較サイト、そしてSNSの普及で、製品の品質はもちろん、故障時のアフターサービスに至るまで、消費者はメーカーに不満を抱くと、積極的に拡散するようになった。

 それでは、個々の消費者が発信力を持つようになった時代に、MONOQLOのような批評誌はどんな誌面を目指しているのだろうか。小島編集長は「確かに“レビュー文化”は盛んですが、あくまでも一つの商品を使った感想、意見です。一般の人には、書き込まれたレビューが正しいかどうかの判断も難しい。私たちは、消費者はやりたくてもできない、複数の製品のテストを通じて、読者に選択肢を示すことを目指している」と語る。

 MONOQLO編集部へは最近、読者からメールやはがきで「なぜ○○という視点でテストしなかったのか」といった批判も含めた意見がたくさん寄せられているそうだ。そうした意見は、次の企画でできるだけ反映させている。

 独自の検証が売り物の雑誌だけに、目の肥えた読者の信頼を失うわけにはいかない。テストする批評誌も、消費者から日々チェックされているという点では、メーカーと同じ立場と言えそうだ。

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(文・写真 &M編集部 久土地亮)

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