銀座・由美ママ 男の粋は心意気

素直に頭を下げられるのも“粋”な振る舞い

  • 文 伊藤由美
  • 2017年4月20日

  

  • 銀座「クラブ由美」オーナーママ・伊藤由美

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 先日、このようなお話を聞きました。大事な取引先の偉い方から、自分の会社の若い部下宛てにクレームの電話が入り、叱責されたということです。しかし本人に確認すると、それは不可抗力の避けられないケースで、部下のミスとは言い切れなかった。むしろ先方の対応の遅さが原因だったようです。

 ところが数日後、思わぬ報告が上がってきました。その方が部下を訪ねてきて「先日は申し訳なかった。ウチのほうが至らなかったのに、君を責めるのはお門違いだった。嫌な思いをさせて本当にすまなかった……」と頭を下げて謝罪されたのです。「仕事での立場も年齢もずっと上なのに、自分の非を認めて、しかも直接謝りに来てくれるなんて立派な方ですね。なかなかできることじゃないですよ」と感心する部下の姿を見て、その上司の方も気分がよくなり、今も、取引先とはいい関係が続いているそうです。

 自分の非を認め、それを反省し、素直に謝る。人としての基本だと思いますが、なかなか「ごめんなさい」と言えないときもあります。とくに自分より年下だったり、部下だったり、立場が下だったり、そうした相手に対しては、プライドが邪魔をして謝れないという人が少なくないでしょう。でもその取引先の方は、相手が誰であれ、頭を下げて謝ることができる人だったのですね。

 素直に謝れる人は粋で素敵ですし、自分自身もそうありたいと思っています。「謝ったら自分のメンツが失われる」「頭を下げるのはプライドが許さない」などといった自分本位の考えを改め、非を認めて頭を下げる。それは、相手に許しを請うというだけの行為ではなく、素直に反省することでもあり、また相手との関係を修復して、よりよい方向へと改善するための糸口でもあるのではないでしょうか。

 クレームを謝罪した、取引先の方のケースも同じこと。あのとき「ウチのほうが立場は上」「あんな若造に」と思って放っておいたり、言い訳を並べてごまかしたりしたら、両者の関係性にはしこりが残ったはずです。率直に謝ったからこそいい関係が継続しているのです。しかもその行為が相手の心を動かして「立派な方」という尊敬さえ得ることになったのですから。

 人間は、誰でも間違いや失敗をします。ついカッとなって理不尽なことをしてしまうことだってあるでしょう。大事なのはその後です。自らを省み、非を認め、相手の立場や気持ちを慮(おもんぱか)って行動する。素直に頭を下げられるのも“粋”な振る舞いなのだと思います。

 次回は5月11日の配信を予定しています。

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PROFILE

伊藤由美(いとう・ゆみ)銀座「クラブ由美」オーナーママ

写真

東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京、クラブ「紅い花」に勤務。その後、19歳で「クラブ宮田」のナンバーワンに。さらに22歳で勝新太郎の店「クラブ 修」のママに抜擢される。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店(2013年に30周年を迎えた)。15年11月に「シャンパーニュ騎士団」よりフランスの芸術文化勲章オフィシエ(将校)を女性経営者として初叙任。著書に『スイスイ出世する人、デキるのに不遇な人』『銀座の矜持』(共にワニブックス)、『粋な人、無粋な人』(ぱる出版)、『記憶力を磨いて、認知症を遠ざける方法 銀座のママと脳神経外科医が語る、記憶の不思議とメカニズム』(ワニ・プラス)などがある。また、女優の杉本彩さんが理事長を務める「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva(エヴァ)」の理事も務め、動物愛護活動をライフワークとする。

BOOK

「粋な人、無粋な人 自分では気づかない恥ずかしいこと」(ぱる出版) 銀座「クラブ由美」オーナーママ 伊藤由美 著

 銀座「クラブ由美」オーナーママ 伊藤由美
「みっともないから、おやめなさい!」。粋な人と無粋な人の違いとは? 粋な人はモテる。粋な人は出世をする。やってはいけない恥ずかしいことを心得ている。無粋な人は、自分がなぜモテないのか、出世しないのか、それに気づかない。銀座・高級クラブのオーナーママとして30余年。人間観察のプロが明かす、粋な人はやらない57のこと。

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