女子アスリート応援団

集中力を高め、理想の撃ち方を追求 ライフル射撃・清水綾乃さん

  • 2017年5月9日

ライフル射撃日本代表の清水綾乃さん

  • 目を閉じて、呼吸に意識を集中する

  • 頬(ほほ)をぎゅっと押しつけてエアライフルを固定。撃つときは息も止める

  • ライフルを構えている時のクールな表情から一転、明るい笑顔ではきはきと話す清水さん

[PR]

 中学生のときに出合った本「メンタル・マネージメント~勝つことの秘訣(ひけつ)~」は、ライフル射撃日本代表の清水綾乃さんにとって、まさに運命を変えた一冊だった。著者のラニー・バッシャムは米国代表として出場した1976年のモントリオール・オリンピック「50mライフル三姿勢」で、金メダルに輝いた選手。何をやってもうまくいかなかった少年がメダルを手にするまでのサクセスストーリーは、「自分も何か一つ、自信を持てるものが欲しい」と切望していた人見知りな女の子のハートを撃ち抜いた。

清水綾乃さんの写真特集

わき目もふらず射撃一筋12年

 「単純なんですけどすっかり影響を受けてしまって、それ以来ずっと射撃でオリンピックの金メダルをとることが目標なんです」。中3から射撃教室に通い始め、そこで出会った人の勧めで地元・岐阜のライフル射撃の強豪済美高へ。上達したい一心で毎日5時間射撃場にこもっては、「もう家に帰って」と先生にあきれられるほどエアライフルを撃ちまくった。

 高2、高3と続けて「10mライフル」で国体優勝を果たすと、女子日本一の記録を持つあこがれの先輩が在籍していた中央大学に進学。火薬を使うスモールボアライフル(SB)は、この頃に始めた。相変わらずの練習熱心さで、大学2年で念願のナショナルチームの一員に。3、4年時にはSBを使う「50mライフル三姿勢」でインカレ2連覇、卒業後は「日本で一番射撃に集中できる環境が整っているから」と自衛官の道を選んだ。現在は自衛隊体育学校の射撃班に所属し、「射撃の練習をすることが仕事という恵まれた環境」で腕を磨いている。

狙うは五輪の金メダル

 「10mライフル」は、エアライフルで10m先にある的を狙う。中心に近いほど得点は高く、中心点はわずか直径0.5mm。競技に勝つための満点を出すには、さらにその中心の0.05mmに当てなければならない。50分以内に40発撃ち、合計点で順位がつく。一方、SBを使う「50mライフル三姿勢」で狙うのは、50m先の的の中心、直径10.4mm。片ひざ立ちの膝射(しっしゃ)、うつぶせ状態の伏射(ふくしゃ)、立射(りっしゃ)で20発ずつ撃ち、1時間45分以内に競技を終える。

 今や「ライフル射撃には絶対の自信がある」という彼女にとって、競技の魅力は「真ん中を狙って撃てばいいという単純さと、優劣が点数でつくわかりやすさ」。「筆箱の中の文房具の位置や向きがそろってないとイヤという几帳面(きちょうめん)さも、案外、弾をこめる、構える、狙う、撃つという同じ動作を正確に繰り返す射撃向きの性格だったのかもしれません」

 第一人者でありながらも、オリンピックはロンドン、リオと2度にわたって出場を逃してきた。2020年の東京オリンピックは3度目の挑戦。照準はもちろん金メダル。「射撃で金を取った日本人女子選手はまだいないので、第一号を狙ってます。そのためには全部ど真ん中に当てられるくらいじゃないと……!」。競技時間内に最大限のパフォーマンスを引き出せるようにメンタル面を強化するため、今は練習の量よりも質にこだわる。1発を撃つのにかける時間は、エアライフルでもSBでも約45秒。練習の際は本番さながらに、呼吸の数や撃つまでの一連の動作にかける時間が一定になるよう心がける。「ライフル射撃は9割がメンタルによると言っても過言ではない競技。理想の撃ち方である『気づいたら引き金を引いていた』状態に常に持っていけるように、集中力の高め方を追求しています」

(文・渡部麻衣子、写真・黒澤義教)

    ◇

清水綾乃(しみず・あやの) ライフル射撃日本代表。1990年11月生まれ。岐阜県出身。自衛隊体育学校所属。3等陸尉。現在、女子オリンピック種目である「10mライフル」と「50mライフル三姿勢」の2種目で国内ランキング1位。自己ベストは「10mライフル」が418.9点(満点は436点)、「50mライフル三姿勢」は586点(満点は600点)。

 とにかく撃ちまくっていた学生時代は、「常にやる気スイッチがオンの状態でした」と振り返る。「体育学校に入って海外遠征が多くなってからは海外のトップ選手と話す機会も増えたんですが、みんな一様に『オンとオフの切り替えが大事。オフは思い切り遊ぶ』って言うんです。それからはオフも大切にするようになりました」

>清水綾乃さんの写真特集

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!