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タイムラインのような現実のコミュニティへ phaさんのニート的生き方。

  • 文・宮田文久 撮影・冨田里美
  • 2017年4月24日

  

 私たちが〝普通〟だと思っている生き方を、ゆるやかに相対化しつづけている人がいる。京都大学を24歳で卒業後、28歳で会社を退職。月収10万円ほどで、ダラダラと好きなことに時間をつかう日々。その一方で、退職後に仲間たちとつくったシェアハウス「ギークハウス」は、広く賛同者を集めたプロジェクトに成長し、各地に同様の場所が生まれた。新たな価値観・社会観を説く著作群も注目を集めつづけるpha(ファ)さんに、〝今の時代の生き方〟を聞いた。

――38歳のphaさんは、言葉の定義上は15〜34歳の若年無業者を指す「ニート」から外れ、「元ニート」になっています。最近はどのような生活を送られているのですか。

 3年勤めた会社を28歳で辞めてから、この10年間基本的には変わっていません。好きなときに起きて、好きなことをする。ダルいなと思ったら一日寝ていることもありますし、ゴロゴロしながら本を読んだり、散歩をしたりしてその日が終わることも多いです。僕はそれで幸せです。ただ最近は、文章を書く仕事なども増えてきて……。ニート的な物言いではなくなってしまいますが、38歳になった今、僕なりの〝働き盛り〟を迎えているかもしれません(笑)。

――2015年末に新たに台東区に設けたシェアハウス「ギークハウスZERO」に住んでいらっしゃいますが、倉庫のような空間で各自がテントを張り、ゆるく集まって過ごしているとのこと。好きなことだけをするというと1人のイメージがありますが、phaさんは誰かと繋がろうとする志向が強いですよね。

 僕は人が集まっている場所がわりと好きなんですよね。だけど、人と話すのは面倒くさい。お互い集まっている場所で、しゃべらなくてもいい、くらいの感じが理想です。1人で過ごすのも好きですが、そればかりなのも孤独でしんどくなる。だからこそ、1人で何かやっていても周りになんとなく人がいるという、シェアハウスという〝場〟がちょうど心地いいですね。

  

――1人でいながらにして誰かと繋がっている、ということですね。大学卒業後の2000年代半ばに就職していたころ、ブログやSNSなどのインターネット文化にハマった影響は大きいですか。

 とても大きいですね。ネット自体が、そういう空間ですから。ツイッターを見ていても、それぞれが好きなことを独り言としてつぶやいているけれど、なんとなくそこには周囲のみんなの気配が感じられる空間になっている。気が向いたらしゃべってもいいし、別にしゃべらなくてもいい。そうしたネット的空間を、リアルでも構築したくてシェアハウスを運営しています。いろんな人が遊びに来たり帰って行ったり、どんどんメンバーが入れ替わっていくのも、ツイッターのタイムラインっぽいところがありますね。

――家族は血縁関係や性的関係があるだけのシェアハウスでないか、と以前発言されていました。和歌山県の熊野では、月に5000円だけ出して友人と家を借り、その経緯を書いた『フルサトをつくる』という共著も出されましたね。故郷も通常は、血縁関係と結びついているものだと思うのですが、家族と故郷で違いはあるのでしょうか。

 良好な家庭だったら何の問題もないと思うのですが、酷い家庭環境の場合に、自分から簡単に関係性を切れない、というのが家族のデメリットだと思います。実際、子どもからしたら家族を選ぶ権利はないですしね。

 「フルサト」についても同じです。与えられた場所ではなく自分で選んだ場所で、みんなが心地よく過ごせる場所だけど、嫌になったら去ってもいい、というフルサトをつくれたらいいなという思いから、熊野にゆるやかなコミュニティをつくっています。もちろん、難しさもありますよ。僕の周りにいるような〝普通〟ではない生き方をしている人は、地方ではどうしても浮きがちで……、東京だと人ごみに紛れることができるのですが。

  

――そうした世の中の空気を変えたいと思って活動しているのですか。

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 いや、特別に意識はしてないですね。僕は自分にとって〝普通〟の生き方をしているだけなんですよね。ただ、自分は別に普通に生きているだけなのに、社会のほうが自分にぶつかってくるんですよね。社会から「そんな生き方はだめだ」とか言われるとか。なので、自分の道の前にある障害物をどけていく、という作業が、僕にとっては文章を書く作業なのだと思います。(次ページへつづく)

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