私の一枚

父に大反対された「2世俳優」デビュー 船越英一郎さん

  • 2017年5月8日

船越さんが1982年のデビュー前に撮影した、宣伝用のアーティスト写真。「もっと憂いのある表情で」などいろいろ言われて戸惑ったという

  • 今年になってワイドショーのメイン司会も務めている船越英一郎さん

  • 船越さんが出演する映画「猫忍」。今回のスター猫は「金時くん」

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 これはデビュー前に撮影した僕の初めての宣伝写真です。指示に従って表情を作るのが恥ずかしかったことや緊張したことを覚えています。この写真で人様に興味を持っていただかないとだめなわけで。この先、僕が行く道は「人に選んでもらう」ことが続くのだと実感し、覚悟しました。その背景には、僕が俳優になりたいと言った時の父、船越英二の言葉があります。

 父は大反対でした。自分が苦労した道を行かせたくなかったんでしょう。父は「自分は40年以上俳優として活動してきて、後進を見る目は確かだ。だがお前は親のひいき目に見ても何の才能もないし、人が振り返るほどの容姿もない。だから、お前が役者になることを認めるわけにはいかない」と言いました。そして「俳優はどこまでいっても人様から仕事をいただかないとできないし、万が一、成功を手に入れたと感じてもそれは砂上の楼閣で、あっという間に崩れ落ちることもある。努力が報われるとも限らず、男子一生の仕事としては辛いことがある」など、いろいろ言われましてね。とはいえ、そのとき僕は大学3年生。高ぶった気持ちは揺らぎませんでした。

 実は動機には不純なところがあったんです。子供の頃から映画監督になりたかったのですが、当時日本の映画界は冷え込み、監督になる道があまりなかった。そんな時、世間は佐藤浩市さん、中井貴一さんなどきらめく2世俳優が活躍していた。「そうだ自分も2世だ。ブームに乗って俳優デビューすればあっという間に道が開け、映画を撮るお金がたまる。そうしたら映画監督になればいい」と、あまりにも世間知らずで愚かな夢を持っていたんです。父には「3年後、俳優で食べていけていなかったらすっぱり諦める」と約束させられましたが、すぐに注目されると思っていたので3年あれば十分と思っていました。

 ところが、日曜劇場のドラマで、それなりの役でデビューしたのに、僕のことはあまり話題にならず、自分の甘さを痛感しました。だた、テレビドラマが盛況の時代だったので何とか食べるだけの仕事はいただけて、3年でやめないで済んだ。にもかかわらず、自分が売れない理由を所属事務所のせいにして、他の事務所に自分で移籍の売り込みをしたことがあったんです。本当に愚かでした。

 その時は多くの事務所が「うちだったらすぐに大活躍できる」と甘言をくれました。自分にいちばん厳しいことを言ってくれるのは今の事務所だけでした。そこではたと気が付いたんです。今の環境で自分の足でしっかり立てるようになることが、未来を切り開く糧になるのではないかと。まずは目の前の仕事に地道に取り組もうと決意しました。

 今年は俳優生活35周年です。万感の思いがあると共に、俳優の仕事が天職だと感じています。今年になってNHKの平日のワイドショー「ごごナマ」のメイン司会の話をいただき、4月から放送が始まりました。当初は公私ともに崖っぷちな自分でいいのか(笑)と悩みましたが、そういえば父も50代で「3時にあいましょう」の司会をしていた。そのことに背中を押され、がんばって挑戦中です。

    ◇

ふなこし・えいいちろう 俳優。1960年生まれ。神奈川県湯河原出身。父は船越英二、母は長谷川裕見子。日本大学芸術学部映画学科卒業。82年、TBS東芝日曜劇場「父の恋人」でデビュー。その後、2時間サスペンスドラマに数多く出演し「2時間ドラマの帝王」と呼ばれる。今年4月からはNHKの昼の大型情報番組「ごごナマ」でMCを務めている。11月から放送のBSプレミアム「赤ひげ」も撮影中

◆船越さんが出演する映画「猫忍」が5月20日から全国で公開される。2014年に大ヒットを記録した映画「猫侍」で猫と時代劇という異色のコラボが話題になったが、今回は、イケメン忍者とおやじ猫の股旅コンビが織りなす笑いといやしの時代劇だ。忍び込んだ屋敷で生き別れた父そっくりのデブ猫に遭遇し、なぜかそのネコが「秘伝変化の術」で父(船越英一郎)が化けた姿だと思いこんだ忍者、陽炎太(大野拓郎)が、父を元の姿に戻そうと、抜忍となって秘伝の巻物を探す旅に出るが、忍者の里からの追っ手が迫ってきていた……。出演:大野拓朗、佐藤江梨子、藤本泉、鈴木福、江本明、麿赤兒、船越英一郎ほか

「撮影の中心は父上役を演じた猫、金時くん。とにかく表情が豊かで、すごく自由なのに、本番は絶妙な芝居をしてくれる。僕ら役者も相当がんばりましたが、この父上にはかないませんでしたね(笑)。猫の演技に相当いやされると思います。そのほっこり感と相反するような忍者の戦いの場面は本格的ですし、どこかホロッとさせられる内容など、エンタメ要素がふんだんに詰まった楽しめる作品になりました。僕の役もどんでん返しがあるのでお楽しみに」

(聞き手:田中亜紀子)

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