ドローンは社会変革の夢を見るか? 国際展&シンポで示された〝そこにある日常〟

  • 文・宮田文久
  • 2017年5月9日

毎日の生活でドローンを当たり前に見かける日も近い?[Pinkypills/Getty Images Plus]

 昨今、世間をにぎわせているドローン技術。果たして、私たちのビジネスや生活にどのような影響を与えつつあるのだろうか。4月19日から21日にかけて幕張メッセで開催された「第3回 国際ドローン展」および「第3回 国際ドローンシンポジウム」には多くの来場者が詰めかけていたが、それはドローンへの期待値の高さの表れだろう。会場で見えてきたのは、ドローンはもはや夢物語のテクノロジーではなく、私たちの日常と密接に結びつきつつあるというラジカルな変化だった。

 20日に行われたシンポジウムのタイトルは「テクノロジーセッション ~i-Construction&データ加工~」。「i-Construction」とは、国土交通省が2016年度に始めた取り組みで、情報通信技術を建設現場に導入することで生産性向上を目指している。しかし、ドローンの先端事例が紹介されるなかで、土木建築分野に限らない、幅広い応用の可能性が見えてくるセッションとなっていた。

 経済産業省も、ドローンを活用した「空の産業革命」を志向しており、牛嶋裕之氏(製造産業局産業機械課)が基調講演に登壇し、政府の取り組みを紹介した。

 15年12月、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が発足。18年ごろに「無人地帯での目視外飛行(離島や山間部への荷物配送など)」、20年代以降に「有人地帯での目視外飛行(都市を含む地域における荷物配送など)」を目指して、環境整備と技術開発が行われている。

大勢の来場者が詰めかけた国際ドローンシンポジウム

 16年度には福島県南相馬市にて「ロボットテストフィールド」の整備も始まった。合計約50ha(ヘクタール)に及ぶロボット・ドローンの実験場であり、全体の整備完了を待たず、テストフィールドと、13km離れた浪江町に用意された滑走路との間の空域を使った実証実験がスタートしている。そのほか、国家戦略特区として指定された各都市、例えば千葉市ではドローン宅配についての分科会が設置されており、福岡市・北九州市では博多湾や離島での買い物代行サービスの実証実験などが行われている。数年内に、私たちがドローンと暮らす日常がやってくるかもしれないのだ。

 もっとも、こうしたテクノロジーの進展と先導に、日本の社会が鋭敏に反応しきれているわけではない。シンポで、株式会社エンルートラボ代表取締役・伊豆智幸氏は、会場に次のように呼び掛けた。

「機体ばかりに注目が集まりがちだが、データの収集・蓄積・加工、あるいは遠隔制御や監視など、ドローンをとりまくハードとソフトをふくめたエコシステムが重要。ドローン用の軽いカメラなどは、世界中のベンチャーがどんどん開発しているが、日本ではドローンの〝マーケットの大きさ〟が伝わりきっていない。いろんな企業に、どんどん参入してほしい」

 伊豆氏は山間部の要救助者捜索などの実例を示して、隣接するテクノロジーやビジネスと組み合わせることで、ドローン活用が発展する可能性を示した。例えば、人工知能(AI)による捜索コースの地理のディープラーニング(機械学習)とドローンを組み合わせる。すると、捜索中のドローンは、「地理データ上では存在しないもの=人らしきもの」と判断して、状況を撮影して救助隊に連絡できるようになる。全方位の画像・映像をリアルタイムで送信するには、大きなデータ量の通信手段という課題は残るが、AIとの組み合わせによって、活用の可能性が広がる。もはやドローンをめぐるチャンスは、ドローンを専門にする人だけに限られないのだ。

国際ドローン展で飛行が実演されたドローン

 シンポに参加した株式会社パスコも、注目すべき動きを見せている。国土地理院などの官公庁、そして民間からのニーズのもと、航空機による空間測量を中心に発展してきた企業だ。近年は、ドローンによる3次元データ生成に注力するようになってきており、建築現場における土量測定などで活用されている。

 シンポでは触れられなかったが、パスコは「3D City Experience Lab.」という3D都市データのプロジェクトに一部携わっている。このプロジェクトは、アートとテクノロジーの接点で創作活動をしている集団「ライゾマティクス」が、経産省の委託で、今年4月から本格化させているもの。プロジェクトの皮切りとして渋谷の3D都市データが公開されたが、パスコが保有する3D都市モデルが使われているのだ。

 二次元の地図にはない〝高さ〟の情報を含んだ3D都市データは、優れたシミュレーション性から、その利活用に注目が集まりつつある。「3D City Experience Lab.」ローンチを控えた時期に開かれたイベントには、新規事業開発に使えるのではないかと期待しているビジネスマン、また都市のビッグデータをつかってメディアアートを手掛けたいと考える高校生までが参加していた。こうしたポテンシャル豊かな3D都市データの世界において、ドローンに期待される役割は大きいものになっていくはずだ。

国際ドローン展会場

 同時開催されていた「国際ドローン展」に設けられた室内のデモンストレーション会場では、多くの来場者たちが上下左右、自在に空を舞うドローンに目を奪われていた。私たちの日々の光景にドローンがなじむ日は、そう遠くないだろう。

 デモンストレーションを行った株式会社制御システム研究所代表取締役CEO・野波健蔵氏は熱く語った。

 「80年代、コンピューターを使えるのはプロフェッショナルか、マニアックな人に限られていた。いま、ドローンは似たような段階にあるが、あと数年で誰もがつかえる状況まで〝離陸〟する。私たちは、その黎明期(れいめいき)にいる」

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(文・ライター 宮田文久)

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