マッキー牧元 エロいはうまい

<31>艶やかさに誘われるお値打ち駅弁/てとて

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2017年5月11日

かれい照焼弁当

  • かれい照焼弁当

  • 鮭かま弁当

 東京駅は、日本一の弁当激戦区である。

 コンコース内にある、各県の弁当を取りそろえる駅弁屋「祭」だけで、200種類の駅弁が売られている(といっても基本はJR東日本管轄内駅)。

 その他、「膳まい」や「サウスコート」に「ケイヨウストリート」。「駅弁屋踊」に「匠」、地下の「グランスタ」で数多くの弁当が売られている。一歩改札を出れば「大丸」の食品売り場の弁当が待ち構える。

 これらをすべて合わせれば、400種類に及ぶ弁当が売られている計算となる。

 これでは、なかなか選べない。

 さすがに僕も全種類は食べてはいないが、このうち200数種は制覇した。

 そこで東京駅とその近辺で買える弁当のベストを、お薦めしたい。

 それは地下グランスタで売られている、「てとて」の弁当である。

 肉系はないが、魚系ならここに肩を並べられる弁当は、ない。

 なにしろ魚の質がいい。値が張る「銀ダラ西京焼弁当」(1700円)以外は、千円の弁当が並ぶが、基本の鮭の塩焼きからカレイの照り焼きまで、魚の質が高く、しかも量も多い。

 弁当の半分以上を占めるかれいの照り焼きは、艶々(つやつや)と光り、さあ早く食べろと誘ってくる。

 口にすればしっとりとして、舌に甘く広がり、ほどよい味付けの“照り”の中から優しい甘みがにじみ出る。

 背側のふっくらとした身のおいしさもさることながら、腹側の身もいい。

 脂が乗って、舌を包み込むようにして崩れ、その甘みがご飯を恋しくさせる。

 「つや姫」を使った、弁当の基本であるご飯は、甘くもっちりとしておいしく、煮野菜類の味付けも申し分ない。

 しかも、すべて合成保存料、合成着色料、化学調味料を一切使っていないと言うから、嬉しいじゃありませんか。

 恐らくボクが知る限り、一番お値打ちの弁当である。

 最近の世の中では、料理にやたらコストパフォーマンスという言葉が使われ、あまり感心しないが、こういうものこそ、優れたコストパフォーマンスというのではないだろうか。

 僕はここを知ってから、東京駅でも品川駅でも弁当に悩まなくなった。

 そして新幹線の中で食べ、日本人としての自分に喜びを覚えながら、背筋をシャキッとさせるのだ。

     ◇

「てとて」
http://www.hamato.co.jp/brand/post-160/

九十数年、魚屋を続け、都内の各デパートに店舗を持つ「味の浜藤」が出す弁当屋。老舗魚屋のプライドをかけた、販売価格を無視したかのような厳選した魚が使われている。この他、脂の乗った大きな紅焼の塩焼きがどんと鎮座する、「おいしい海苔弁当」、節の炊き込みご飯と白ご飯の二つが入った「西京焼弁当」他、各種弁当は、どれを食べてもはずれがない。

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

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1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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