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「無印良品の小屋」は、新しいライフスタイルの担い手になれるか?

  • 文・写真 石川歩
  • 2017年5月16日

  

 「無印良品」ブランドを展開する株式会社良品計画は4月20日、「無印良品の小屋」を発表した。最近、自分だけの空間を確保する手段や、不要なものをそぎ落としたミニマムな暮らし方の一つとして、小屋はちょっとしたブーム。そこに参入する良品計画は、どんなライフスタイルを提案するのか。今回は、先日行われた内覧会をリポートする。

 発表された小屋は、9.1平方メートルの部屋に3.1平方メートルの縁側付き。室内へは、縁側から引き戸を開けて入る。

 壁は無塗装のヒノキで、好みで塗装したり壁紙を貼ったりできる。床はモルタル仕上げで、縁側の延長で屋内と外をつなぐ土間のようにも使える。長方形の室内に窓が一つという無印良品らしいシンプルなデザインで、空間を自分好みに、いかようにも使える工夫がされている。

ヒノキの香る小屋の中(モデルルーム)。実際に入るまでは約9.1平米は狭く感じるかと思ったが、ぴったりと体が空間に納まるような感覚で落ち着く。都会から離れてこもる場所としてはぴったりだ

 分電盤の設置、シーリング照明用の電源・スイッチの付与、コンセント設置などの電気関係もオプションで追加ができるが、大きな引き戸と室内の窓を生かして、あえて電気は引かず、夜は月明かりで過ごすと割り切るのも一案だろう。また、所有している土地に小屋を建てることも可能だが、その土地の区域や用途地域、容積率や建ぺい率等の条件によって建てることが難しい場合もあるため、事前に確認が必要だ。

 価格は300万円(税込み)。モデルルームとでも言うべき最初の建設例は、千葉県南房総市白浜町にある「シラハマ校舎」の校庭に建てられ、菜園付き小屋として4期に分けて計21棟販売する。

 シラハマ校舎は廃校になった旧長尾小学校を、合同会社WOULD(千葉県南房総市/代表 多田朋和)がリノベーションした複合施設。校舎内には、シェアオフィス・ゲストルーム・シャワールーム・レストラン等があり、シェアオフィスは既に7割程度が入居している。

 ドイツの「クラインガルテン」やデンマークの「コロニーヘーヴ」など、欧州では、平日は都市のオフィスで働き、休日は郊外の市民農園・庭付き小屋で自然に親しむ暮らしのスタイルに根強い人気がある。今回発表された菜園付きの「無印良品の小屋」は、小屋単体での販売というよりも、同様のライフスタイルの提案という意味合いが強い。

 「都内から自然豊かな白浜町までは2時間程度です。このアクセスの良さは、都内と南房総の二拠点居住に最適だと考えていました。平日は都内で働き、週末は南房総で暮らすというスタイルが実現しやすいと思います」と、合同会社WOULD代表の多田氏。

築65年の旧長尾小学校。既存の建物を生かしたリノベーションで、随所に学校ならではの懐かしい雰囲気が残っている

教室はシェアオフィスとして貸し出されている。室内は自由に改装可能で、原状回復義務はない

 小屋の購入者はシラハマ校舎内にあるシェアキッチンが利用できる。地元の人やシェアオフィス・ゲストルームの利用者が集まるレストランがあり、この場から多様な人が交わるコミュニティーが生まれることも期待しているという。

 南房総市は過疎地域に指定されており、旧長尾小学校は生徒数の減少で閉校した。地元の人々にとって大切な場所を解体せず、多様な人々が集まる場所へ再活用するこの案は、全国にある廃校再活用のモデルケースになるかもしれない。

元プレールームは、シェアキッチンとレストランにリノベーションした。小屋購入者のほか、地元の人やゲストルーム・シェアオフィスの利用者など多様な人が集まりコミュニティーが自然派生する場所になりそうだ

 しかし、約12平方メートルで300万円は強気な価格設定に感じる。良品計画事業開発担当の高橋哲氏に話を聞いた。

 「いま国内で売り出されている小屋の価格は50万円超~数百万円ですが、たいていは価格には施工費が含まれていません。実際に小屋で過ごすのに、総額でいくら必要かわかりにくいのが現状です。そこで私たちは、基礎工事費と施工費を含めた金額を表記することにしました。誰でも、旅行先や前に住んでいた場所など自宅以外に気に入った場所があると思います。お気に入りの土地を楽しむ拠点として小屋を利用してほしいという思いから、すぐに小屋が使える最低限の価格を分かりやすく表記しました。また、長く安心して使っていただけるように、躯体(くたい)に5年間の保証を付けています。」

 ただし、確認申請費用は別途料金がかかるほか、シラハマ校舎では、別に月15,000円の管理費も必要だ。

 シラハマ校舎を最初のパートナーに選んだことに表れているように、無印良品の小屋には地域活性化事業の側面もあるようだ。小屋に使用する木材は全て国産、外壁は広島産の焼き杉を使い、低迷する国産材の消費を意識している。また、空いたスペースに小屋を置く提案で、全国で増える廃校や自治体の有する遊休施設の活用も視野に入れる。

旧長尾小学校の校庭に建つ「無印良品の小屋」。20棟超の販売を予定しており、1区画は70~80平米。専用庭が付く予定

 4月末時点で、無印良品の小屋の第1期見学・説明会の希望者は50組を超えており、多くは都内在住者。年代層は30~60代と幅広く、購入検討者も多いという。シラハマ校舎以外の場所で施工する一般向けの販売は2017年秋を予定している。

 暮らしの多様化に対応してきた近年の住まいは、オーバースペックになりがちだ。多様なメニューから選んだ設備や仕様は、実際に住んでみたら使わないものもあるだろう。小屋は、そんな住まいのオーバースペックに慣れた私たちが、本当に必要なものを見極めてシンプルに暮らすヒントになりそうだ。

 例えば、季節に合わせて過ごす場所を自由に変えて、小屋を置いて暮らすスタイルが出てくるかもしれない。そんな暮らし方には、たくさんの物に囲まれる豊かさではなく、場所に縛られず自分たちに合った場所でのびのびと暮らすという違った豊かさが見えてくるだろう。

(文・写真 石川歩)

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 &Mでは、30歳前後の皆さんの暮らしや仕事のヒントになることを目指したインタビューやコラム、レポートに、「&30」という共通タイトルをつけてお届けしていきます。

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