モータースポーツ

F1第5戦スペインGP 2強のプライドを賭けた応酬に見応え

  • 2017年5月15日

F1第5戦スペインGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真)。今季3回目のポールポジションから2勝目を飾った(Photo=Mercedes)

  • スタートでトップを奪ったのは予選2番手だったフェラーリのセバスチャン・ベッテル。その後、ハミルトンとの激しい優勝争いが繰り広げられた(Photo=Mercedes)

  • タイヤのパフォーマンスを引き出せないという課題に対応すべく、マシンの減量や空力のリファインなどを大々的に行ってきたメルセデス。大きくえぐられたような特徴的な空力パーツをノーズ下に装着したアップデート版「W08」を駆り、ハミルトン(写真)がポール・トゥ・ウィンを達成した。アップデートの成果は発揮されたが、フェラーリとの力の差はほんのわずか。バルテリ・ボッタスを交えてのチームプレイやピット作戦、そして最後はドライバーの力走と、総力戦で得た勝利だった(Photo=Mercedes)

  • 完成度の高いマシンを送り出すことに成功した今季のフェラーリ。その次なる課題は、激烈な開発競争にも打ち勝つことだ。ベッテル(写真)はハミルトンに100分の5秒遅れて予選2位となったものの、改良したスタートシステムのおかげか、抜群の加速でレースでは早々にトップに立った。しかしメルセデスとは違うタイヤ選択が裏目に出たか、速さには不利なミディアムを履いた最後のスティントでハミルトンに逆転を許し、2位でフィニッシュ。ポイントリーダーの地位は6点差で守った(Photo=Ferrari)

  • シーズン序盤にメルセデス、フェラーリから後れを取ったレッドブル。パワー不足を補うべく、スペインでは空力パッケージを見直してきた。ダニエル・リカルド(写真)は予選6位、レースでは上位の脱落もあり今季初表彰台となる3位でゴール。予選でのタイム差は縮めてきたが、レースでは1分以上も遅れてしまった。まだ2強と肩を並べるまでには至っていない(Photo=Red Bull Racing)

  • 「人的、資金的なリソースは強豪チームの数分の1」といわれているフォースインディアが好調である。今季全戦でダブル入賞を続けており、スペインでも安定した走りでセルジオ・ペレスが4位、エステバン・オコンは5位を獲得した。コンストラクターズチャンピオンシップでは53点で4位。3位のレッドブルとは19点しか離れていない(Photo=Force India)

  • 激しい中団グループの争いの中で、ルノーが少しずつ頭角を現してきている。スペインGPのフリー走行では上位に顔を出し、特に2回目ではニコ・ヒュルケンベルグ(写真)7位、ジョリオン・パーマー8位と健闘を見せた。コンディションが変わった予選ではヒュルケンベルグ13位、パーマー17位と振るわなかったが、レースではヒュルケンベルグが6位入賞を果たした。チームはコンストラクターズランキング7位(14点)につけている(Photo=Renault Sport)

  • GPの合間には、今月末に初出場するインディ500への準備を着々と進めているフェルナンド・アロンソ(写真)。母国スペインでは、初日最初のフリー走行の開始早々からエンジンブロー、コース上にストップという散々なはじまりとなってしまったが、翌日の予選では形勢を逆転させ今季初のQ3進出を決め、さらにメルセデス、フェラーリ、レッドブルに次ぐ7番グリッドを獲得してしまった。レースではスタートでフェリッペ・マッサと当たりコースオフ、11位に落ちてしまい苦しい展開を余儀なくされたが、最後まで走り切り12位完走(Photo=McLaren)

  • ヨーロッパ初戦のスペインGPでは、「ファン・フェスティバル」と銘打って、ドライビングシミュレーターなど観客向けの数々のアトラクションが用意された。予選後の「公開インタビュー」(写真)もそんなファンサービスの試みのひとつ。普段はインタビュールームで行われていたものをメインスタンド前で実施。訪れた人たちはドライバー同士の生のやりとりを楽しんだ。F1新オーナー、リバティ・メディアの「F1を盛り上げていこう」という考えが少しずつ実現されているようだ(Photo=Mercedes)

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 5月14日、スペインのサーキット・デ・バルセロナ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。ポールポジションをメルセデスが奪えば、スタートでフェラーリがトップをかすめ取る――両陣営が総力をあげて繰り広げた激戦は、ルイス・ハミルトンが2勝目をあげるという結果に終わった。

出遅れた強豪の再興

 F1チームが本拠地としているヨーロッパ。かの地での初戦となるのは、今年も第5戦に組み込まれたスペインGPだ。例年、各陣営が大小さまざまなアップデートを施したマシンを持ち込んでくることで知られており、今季4戦して2勝を分け合ったメルセデス(136点でコンストラクターズランキング1位)とフェラーリ(135点で同2位)はもちろん、そのトップ2チームに遅れをとったレッドブル(57点で同3位)も、今季型「RB13」の梃(てこ)入れを図ってきた。

 レッドブルの“スロースタート”は昨季にも見られたことだ。2016年の序盤4戦でレッドブルが獲得したポイントは今季と全く同じ。メルセデス、フェラーリに次ぐという順位も同様だ。昨年はシーズン後半にかけての開発競争でフェラーリをしのぐマシンを送り出すことに成功し、最終的にランキング2位をものにした実績があるのだから、今年もこの元チャンピオンチームの底力を侮ってはいけないだろう。

 しかし、そんなレッドブルにとっても、激しい優勝争いを繰り広げる上位2チームに追いつくのは至難の業と言わざるを得ない。前戦ロシアGPの予選では、フェラーリのセバスチャン・ベッテルが記録したポールタイムから1.7秒も離されて、ダニエル・リカルドは5番グリッドに甘んじた。圧倒的に足りない速さは、タグ・ホイヤーのバッジを付けたルノーのパワーユニット(PU)が原因ということになっているが、ここにきてマシンのダウンフォース不足も指摘されるようになった。

 マシンとPUをともに開発しているメルセデス、フェラーリとは違い、レッドブルは他社であるルノーからPUの供給を受けなければならない。1.6リッターターボ+ハイブリッド規定となって4年目、マシンとPUの統合がますます重要なカギを握るようになっていることからすれば、これは小さくないハンディだ。さらにルノーは昨年からワークスチームを復活させており、着実に“本家”が力をつけてきているのもレッドブルには気がかりな点であろう。

 2010年から4連覇を達成した頃のレッドブルの強さは、当時も劣勢が否めなかったエンジンを補って余りあるほど、空力面で高効率なマシンを作りだせたことだった。スペインGPでは、そのエアロダイナミクスの向上に軸足を置き、サスペンションやバージボードなどを改良してきた。メルセデス2台の同士打ちからマックス・フェルスタッペンが劇的な初優勝を遂げた昨年の記憶も新しいバルセロナから、レッドブルは再興の道を歩み始めようとしていた。

予選でハミルトン1位、ベッテル2位、差はわずか100分の5秒

 高速から低速までのコーナーが組み合わさったバルセロナは、テストでもよく使われているように、マシンの総合力が試されるコースであり、各チームのアップデートの成果が試される絶好の場所だった。

 初日に好発進を決めたのはメルセデスで、金曜日の2回のフリー走行(FP)とも1-2。土曜日の3回目のFPでは、フェラーリの2台がメルセデスのペアを従えて1-2と、予選前から銀と赤のマシンが接戦を繰り広げた。

 そしてトップ10グリッドを決める予選Q3。最初のアタックを終えてのトップはルイス・ハミルトン、2番手にバルテリ・ボッタス、次いでキミ・ライコネン、セバスチャン・ベッテルと、やはり2強の4人ががっぷり四つの展開となった。だが2回目のフライングラップでは最速タイムは更新されず、結局ハミルトンの今季3回目、通算64回目のポールポジションが確定した。

 2度目のアタックで2位に躍進したのはベッテル。ハミルトンとの差はわずかに0.051秒だった。最後のシケインでのミスさえなければ、2戦連続ポールも夢ではなかっただろう。予選3位はボッタス、4位ライコネンと、メルセデスとフェラーリが交互に並んだ。

 3列目にはレッドブルの2台、マックス・フェルスタッペン5位、ダニエル・リカルド6位。トップに遅れること約0.6秒と、アップデートのおかげか、2強との差は縮まった。

 予選7番手は、なんとマクラーレンのフェルナンド・アロンソ。今季まだ一度もチェッカードフラッグを受けておらず、さらにこの週末の初日にエンジンブローを起こし十分に走り込めなかったスペインの英雄が、今年初めてのQ3進出に加え、強豪3チームに次ぐポジションを獲得した。4戦連続でダブル入賞しているフォースインディアのセルジオ・ペレスが8位、エステバン・オコンも10位につけ、ウィリアムズのフェリッペ・マッサが9位に食い込んだ。

ベッテル、見事なスタートでトップへ

 66周レースのスタートでトップを取ったのはベッテル。素晴らしい加速でポールシッターのハミルトンをかわして真っ先にターン1に進入した。ロシアGPで3位ボッタスにロケットスタートを決められたフェラーリは、スタートシステムを改良してスペインでのレースに臨んでいたのだった。

 2位に落ちたハミルトンに続いてボッタス、リカルド、そしてペレス。ライコネンとフェルスタッペンはターンを曲がる際に接触し、両車とも0周リタイアとなってしまった。また7番手スタートのアロンソもフェリッペ・マッサと当たり11位まで後退した。

 1位ベッテルはメルセデス2台を従えて早々に2秒以上のマージンを築いた。10周を過ぎると2位ハミルトンと3位ボッタスの間には10秒ものギャップができ、早い時点で優勝争いは2人に絞られていった。

 バルセロナは前車を抜きにくいサーキットであることから、多くがピットストップでポジションアップを狙う作戦を考えていた。15周目、先に動いたのは1位ベッテルで、ソフトタイヤから新しいソフトに交換した。

 ハミルトンとボッタスはコースにとどまり続け、22周目に首位ハミルトンがピットに飛び込む。こちらはミディアムを選択し、ベッテルの9秒後ろでコースに復帰した。

 その間、暫定首位に立ったボッタスは、ニュータイヤでハミルトンとの差を広げようとしていたベッテルの鼻っ面を抑えながら周回を重ねた。メルセデスの術中にはまりかけていたベッテルは、25周目、グリーンにタイヤを落としながら強引にボッタスをオーバーテイクすることに成功。ハミルトンをサポートする役目を終えたボッタスは程なくしてピットに入った。

 最初のピットストップを終え、1位ベッテルと2位ハミルトンとの間には約5秒。レースはまだ半分以上の周回を残していた。異なるタイヤを履いた2台の優勝争いは、次のタイヤ交換のタイミングにかかってきた。

ハミルトン、ベッテルをストレートでぶち抜き優勝

 34周目にテールエンダーのストフェル・バンドールンとマッサが接触。バンドールンがコースアウトし止まったたことでバーチャルセーフティーカーの指示が出された。

 レース再開となった37周目、今度はメルセデスが先んじて動き、ハミルトンはミディアムからソフトタイヤに交換。その翌周にベッテルもピットに入り、ソフトからミディアムに換装した。コースに戻るフェラーリとメルセデスは横並びでターン1に進入。ホイールを当てての激しいつばぜり合いをなんとか制したのはベッテルだった。

 ちょうどその頃、ボッタスのマシンから煙が上がり、メルセデスは3位表彰台がかかった1台を失うことになる。孤軍奮闘となった2位ハミルトンは優勝を諦めず、ベッテルより速いタイムを刻めるソフトタイヤにむちを打ち、DRSが作動する1秒以内にベッテルを捉え続け、そして44周目のメインストレートでベッテルを抜き去ったのだった。

 2位転落のベッテルも最後まで挑戦し続けたが万事休すとなり、ハミルトンが第2戦中国GPに次ぐ今シーズン2勝目をあげた。

 レース後のハミルトンは、喜びながらも疲労のあとを隠せないでいた。レース中の無線での会話でもめずらしく息を切らせており、今季型のマシンが格段に速くなったこともあろうが、ベッテル&フェラーリとの戦いが相当にタフだったのも理由のひとつだろう。

 これでポイントリーダーのベッテルとランキング2位ハミルトンとの差は13点から6点に縮まった。両陣営が総力をあげて繰り広げた激戦、そして最後にはチャンピオンを経験したドライバーとチームのプライドを賭けた応酬が、近年まれに見るスリリングなチャンピオンシップをかたちづくっている。

 2強に続き今季初表彰台3位を獲得したレッドブルのリカルドは、ハミルトンの75秒遅れでチェッカードフラッグを受けた。銀と赤のマシンは、まだまだ遠い存在のようだ。

 次の第6戦は64回目の開催となるモナコGP。決勝は5月28日に行われる。

(文=bg)

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