私の愛用品

渡辺さんに“自立することの大切さ”を教えてくれたバッグとは!?

  • 2017年5月18日

 世の中に存在するけれどあまり気付かれない、でもものすごく楽しいこと。そんなコトやモノを紹介するのが上手な人といえばこの方、編集者・ライター・ラジオパーソナリティの渡辺祐さんではないでしょうか。伝説の「VOW」シリーズを手掛けたり、「タモリ倶楽部」に出演したり、メジャーもマイナーも網羅してノンジャンルに活躍中の渡辺さん。その豊富な知見から選び出された愛用品とは?

  

―ずらりとお持ちいただきありがとうございます! 一番新しいバッグで何代目ですか?

 今のスタメンがこのミリタリー柄のもので、もう4代目です。もうボロボロになっていますが、初代を買ったのは10年近く前。以前の事務所の近くにあったセレクトショップで「テンベア」の受注会をやっていまして、ボディと持ち手の色を自由に組み合わせて注文できたんです。普通は違う色を組み合わせると思うのですが、そのときはあえてオリーブ色×オリーブ色で注文しました。店員さんに、「こういう頼み方されたのは初めて」っていわれましたね。

  

―初代の使い込まれ具合が、もはやミリタリーアイテムのようです(笑)。どんなところがお気に入りなのでしょう。

 使い勝手がすばらしいです。まず職業柄どうしても荷物が多くなるのですが、容量がばっちり。資料やパソコン、CDもボンボン入れられるし、LPも頭がちょっとはみ出すくらいで、余裕で入ります。春先に1枚上着がほしいときも、丸めて入れて。しかも加工された生地なので、小雨でちょっとくらい濡れても平気。そしてですね、これはものすごく大事なことなのですが、自立するのでどこにでも置ける。立てかけるところを探さなくていいのは本当に助かります。取材先では床にドンと置いて資料をサッと取り出せますし、居酒屋や定食屋では荷物を置く場所がないこともありますが、これなら足元に置けて倒れない。置き場所に悩まないのはすごくいい! これは自立することの大切さを教えてくれたバッグです(笑)。電車の網棚にも置けますよ。重いと重心が安定するので、急ブレーキで倒れて中身が! なんてことにならない。

  

―いつもそれが心配で、網棚に荷物を乗せられません! しかもこれ、サイドに取っ手が…。

 そうそう、この取っ手、例えば網棚に置いたときサッと下ろせるように付いています。後はね、出先でお弁当や手土産を買うと水平に持ち歩かないといけないけど、このバッグなら上に乗せれば大丈夫。開封したペットボトルも縦に入るし、重力に対してまっすぐ持てる。

―重力目線って新しい(笑)。でもそれができるのとできないのとでは、全然違いますよね。かなり愛用されているのが見た目からも伝わります。

 キャンバス地なので、ガシガシ使うとどうしても色がくすんできます。で、汚れるとまた新品を買うから、だんだん“格落ち”していく制度(笑)。スニーカーもそうじゃないですか。きれいに履いていても踵がすり減るから、もうひとつ同じものを買って、古い方は遠出しない日にだけ履くとか、それと同じですね。最近はその格落ち制度で数が増えてしまったから、ある日「あ、このバッグに本を入れたりして収納に使えるな」と思ったわけ。そうしたら本用のバッグとかCD用のバッグとか、ちゃんとテンベアのウェブサイトに出ていて。「もうあったわ」ってなりました(笑)。

―このバッグもそうなのですが、共通するもの選びの“基準”はありますか?

 自分の好きなもののイメージは、この歳になればある程度定まってますので、その範囲から逸脱しないことですかね。20代の頃は、「世の中的にこれがカッコいい」とされているものに行きがちじゃないですか。ま、調子に乗っていたのもあったり(笑)。若者ならではの煩悩です。30代くらいになってから、煩悩の余計なところが削ぎ落とされて、自分の好きなもののゾーンができあがったと思います。よく衝動買いっていいますけれど、あれって僕にとっては、自分のゾーンにジャストフィットするものを見つけるということ。新しいものに興味がないというわけではないけど、ゾーンに入ってきたものをキャッチしていれば、間違いないかなと。

どんな定番ものも、ずっとあるとは限らないことを心がけるべし

―今煩悩のお話が出ましたが、煩悩は年齢とともになくなっていくと思いますか?

 なくなるというより、振り回されなくなるということじゃないかな。例えば宝くじで3億円当たったら、人間何するか分からない(笑)。でも「今セレブはみんなこれを使っています」みたいな消費行動を促す仕掛けに、だんだん振り回されなくなるのだと思います。身の丈の問題ですよね。若い頃の好奇心はぶれがちですけど、その経験で学んだ無駄を減らすと自分のゾーンができて、「あの球は捕らなくていいんだ」と分かってくる。でも恐ろしいことに、歳を重ねると、定番だと思っていたものが世の中から消えることもあると気づかされもします(笑)。

―ああ(笑)。いつも買えると思っていたものが、買えなくなっていたと。ブランドごとなくなる事態もありますね。

 ウェブサイトを検索してもない! って。そうやって買えなくなるといやだから、買えるときにもうひとつ買っておく。その考え方の延長線が、例の格落ち制度です。

  

―なるほど。定番の商品がなくなるのは悲しいですよね。

 そもそも定番ものって不変だと思われていますけど、全然そんなことなくて、実は変わっている。一般的な、ごく普通のボタンダウンシャツってあるじゃないですか。あれも最近のものは襟の大きさが小さくて、昔とは全然違う形をしていますし、人から聞いた話では、昔からあるお菓子や調味料なんかも、実は少しずつ味を変えているらしいですね。マイナーチェンジし続けるのは、定番の条件なのでしょうね。ましてや洋服や小物は前と同じものがもうないということはよく起きる。いいと思ったものが、ずっとあると思うなということ。「5年後にあると思うな同じもの」ですよ。

―標語が出ました(笑)! 新しい定番の法則ですね。

 で、愛用品に話を戻しますが、結局直接見て触ってみないと、自分のゾーンの中のものかどうか、最終判断できなかったりします。実際にそうやって買うことを若い頃にたくさんした分、年を重ねて自分のゾーンが分かるようになったのもあるかもしれない。僕が子どもの頃は高度経済成長期で、若者文化がバーンと花開いた時期。音楽も映画も本も、手に入れたいものにあふれていて、好奇心も物欲も全開だったんです。今の若い人はものがない方が楽という考えですよね。確かにそれもいいのですが、「買う」という喜びもあるじゃないですか。

―買うって、とても楽しいことだと思います。

 そう。今はお金がかかることをとにかくやめがちじゃないですか。「世の中にはこんな面白いものがある」と知るのは楽しいはず。以前すごく高いフランス料理を食べに行ったときに、まあワタシも人生で何回かはありますけど(笑)、食事の最後に「チーズいかがですか」って、ガラガラ登場したワゴンに全部チーズが乗ってて。あれだけ食べたのにここでチーズっていう、そのカルチャーはなんなんだ! フランス人おかしいでしょ、チーズに対して思い入れ強すぎるでしょって(笑)。スペインに行けば昼飯に2時間かかるし、しかもその後寝る人もいるし。食後酒っていう習慣もそう。日本にはない文化ですよね。行ってみたり、やってみたり、買ってみたりしないと分からないこと。一種の冒険です。そうしていないと自分がガラパゴス化する。知ってナンボ、そこから「身の丈に合ったこだわり」が始まるのではないかなあ。

  

―今は、お金をかけたいけれどかけられないという人も多いですよね。そういう若者はどうしたらいいのかな、と考えてしまいます。アドバイスするとしたら何を伝えますか?

 例えば飲みに連れて行ってくれる先輩とか、うまいスポンサーをみつけるといいですよね。そういう人と飲むときは、自分で頼めないような高い酒を頼むべき。初めてのものを飲んで感動しているのをみるのは、先輩もうれしい。あとは、一緒に冒険できる友達とか、体験を共有できる人をみつけられるといいと思います。ちょっとした美意識を持っている人がいいですね。美意識っていうと難しく聞こえるけど、自分はこんなシェイプの服が好きだとか、カジュアルな美意識ってあると思うんです。それはファストファッションの服でも発見できること。ちなみに、僕は使い捨てのライターをなるべく使いません。大人として“ちゃんとしてる風”に見えるかなってレベルの美意識ですけど(笑)。

(取材・文 唐澤 理恵、編集・スケロク)

  

紹介者のプロフィール

渡辺祐(エディター/ライター)

1959年神奈川県出身。編集プロダクション、ドゥ・ザ・モンキー代表。80年代に雑誌「宝島」編集部を経て独立。以後、フリーランスの編集者/ライターとして活動。またテレビ「タモリ倶楽部」などにも出演、FM局J-WAVEの土曜午前の番組『Radio DONUTS』ではパーソナリティーも務めている。音楽、カルチャー全般を中心に、落語、食、酒など守備範囲は幅広い。自称「街の陽気な編集者」。

・Radio DONUTS番組HP
http://www.j-wave.co.jp/original/radiodonuts/

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