モーターサイクル・リポート

新世代のライトウェート・ハーレー「ストリートロッド」に試乗

  • 河野正士
  • 2017年5月23日

ぐっと前がかりなスタイルを採用した「ストリートロッド」。報道機関向け試乗会は欧州地域のメディアはスペインで、アジアパシフィック地域のメディアはシンガポールで試乗会が開催された

 ハーレーダビッドソン(以下HD)は3月9日から新型車「ストリートロッド」の発売を開始した。そして4月下旬にシンガポールとスペインで報道機関向け試乗会を開催。そのシンガポールでの試乗会に参加することができた。

 「ストリートロッド」は、2013年にイタリアのモーターサイクルショーであるEICMAで発表された「ストリート750」の兄弟モデルだ。挟角(きょうかく)60度のV型2気筒で水冷SOHC4バルブ750ccの新世代エンジンを搭載。同じV型2気筒とは言え、挟角45度・空冷OHV2バルブエンジンを持つHDの伝統的なエンジン形式とは異なるエンジンレイアウトを持っていた。そして“レボリューションX”と呼ばれるその新型エンジンに合わせて開発された新型フレームも採用していた。

通勤や通学といった、市街地でのデイリーユースを考慮し、ライディングポジションやエンジンの出力特性、ハンドリングが開発された。その狙い通り軽量コンパクトな車体を小気味よく前に押し出し、シンガポールの混雑した街中でもじつに軽快に走ることができた

 2014年にはアメリカや欧州、そしてアジア地域で、15年には日本で販売がスタートした「ストリート750」は、アメリカのスモール・クルーザー部門(排気量601~1200cc)において、15年および16年に、他社のライバルモデルはもちろん、自社の人気シリーズであるスポーツスターの各モデルを抑えて販売台数1位を記録。またオーストラリアとインドでも同様のクラスでマーケットシェア1位となるなど、発売開始から3年で世界累計販売台数3万5000台を超えるビッグヒット・モデルとなっているのだ。

 「ストリートロッド」は、その「ストリート750」をベースにした初のアレンジモデル。“初”と書いたのには理由がある。HDは4月中旬、17年の第一四半期決算を発表。その際に27年までの中長期戦略もあわせて発表した。そのなかでHDは、アメリカ本国で200万人の新規ユーザーを獲得すること。国際ビジネスを全体の50%に成長させること。新型車を100モデル発表すること、と明言したのだ。この三つについては軽量コンパクトで低価格、それでいて厳しさを増す規制に対し高い環境性能を持つ「ストリート750」のプラットフォームが、東南アジアや南米といった新興国の新市場だけではなく、米国や欧州、日本といったバイク先進国地域においても重要な役割を持つというわけだ。今回の試乗会に同行した、「ストリートロッド」の開発陣に、さらなるバリエーションモデル発売の可能性について質問した際には明確な答えは無かったため想像の域を出ないが、その可能性は大いにあるだろう。

アップライトなHDのイメージとは異なる、前下がりでスポーティーなサイドシルエットを持つ

 さて肝心の「ストリートロッド」に話を戻そう。低いシートに、手前に引かれたハンドルによって、いわゆる“アメリカン・クルーザー”的だった「ストリート750」に比べ、「ストリートロッド」はグッと軽快でスポーティーなシルエットとライディングポジションを採用している。それを実現しているのが前後17インチホイールと倒立フロントフォーク&リザーバータンク付きリアサスペンション、そしてストレートなドラッグバーハンドルだ。燃料タンクこそ「ストリート750」と共通ながら、そのタンクは大幅に搭載位置を変え、前述した前後の足周りパーツは「ストリートロッド」のために専用開発され、他の外装類もそのほとんどを一新している。またフレームは、基本骨格こそ変更されていないが、ステアリングヘッドアングルが5度立てられている。

 キャスター角が立ち、フロントサスペンションやフロント周りのアライメントを変更。くわえて自由長の長いリアサスペンションを使用したことでやや前下がりの車体姿勢となり、それによりスーパースポーツモデル並みとは言わないまでも、フロント荷重が効いたグッとスポーティーなハンドリングになった。Vツインエンジンの鼓動を感じながら、軽量でコンパクトな車体でスポーツライディングするのは、じつに楽しいと実感する。

排気量750ccのエンジンは、細かいアクセル操作を必要とせずとも街中でクルマの流れを十分にリードすることができる。エンジンをしっかりと回しても、高回転域での出力特性は伸びやかで滑らかだ

 そのVツインエンジンも、「ストリート750」から大きく変更している。これまでφ38mmのシングルスロットルボディーを使用していたフューエルインジェクションシステムは、φ42mmのデュアルスロットルボディーに変更。吸気ポートと呼ばれる、スロットルボディーからシリンダー内に混合気を送るシリンダーヘッドの通路は拡大。より多くの混合気をシリンダー内に送り込む。なおかつエンジンを高回転まで回せるようにするため、バルブのリフト量とオーバーラップを増やした新型カムも採用している。さらにはピストンを変更して圧縮比もアップされた、「ハイアウトプット・レボリューションX」と呼ばれる「ストリートロッド」用エンジンは、それらの変更によりエンジンがより高回転型となり、最高出力を約18%、最大トルクを約8%向上させている。

身長170cmの筆者が跨(また)がっても、停車時には両足を地面にベッタリつけることができる。コンパクトな車体は日本人にもなじみやすいだろう

 いわゆるビッグツインやスポーツスターといったHDの他のラインナップが搭載する空冷系エンジンと比べ、「ストリート750」が採用した新型水冷エンジンは、エンジンレイアウトが異なることから、そのフィーリングが違う。“ドコドコ感”などと表現されるHDの空冷系エンジンに対し、“トゥクトゥクトゥクッ”と爆発の粒が小さく、爆発間隔も狭まったことで、爆発感と表現するよりビート感に近い。「ストリートロッド」用のハイアウトプット・レボリューションXエンジンは、さまざまな変更によってビート感が太く、力強くなった。スポーティーになった車体との相性もすこぶる良い。

 これならもう少しリアを上げて、セパレートハンドをつけても楽しそう。またグッと低くして、ストリート・ドラッグレーサースタイルも似合いそう。そんな想像がふくらむくらい「ストリートロッド」は、スタンダードバイクとしてよくできていた。そしてエンジンを高回転まで回していくと、その排気音は小気味よさと力強さを増し、聞き慣れたVツインらしく聞こえてくる。これもまた、HDなのであると実感した。

※写真:ハーレーダビッドソン

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PROFILE

河野正士(こうの・ただし)ライター

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二輪専門誌の編集部員を経てフリーランスのライター&エディターに。現在は雑誌やWEBメディアで活動するほか、二輪および二輪関連メーカーのプロモーションサポートなども行っている。ロードレースからオフロード、ニューモデルからクラシック、カスタムバイクまで好きなモノが多すぎて的が絞れないのが悩みのタネ

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